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会場にて③

みんなの視線を避けるように私達は部屋の隅へ避難した。

視線が気になっているのは私だけでクリス様は全く気にしていないようだけどね。


「ねえ、リリーナ。もし良かったら外の空気を吸いに中庭に行かない?」


クリス様の提案に私は頷いた。

とりあえず目立たなければ良いと思って。



さすが西の国の王城の中庭、とても綺麗だ。

特にクリス様に案内されてたどり着いた、目の前の噴水は月明かりの中キラキラ光って神秘的な美しさだった。


「リリーナ……君はまた違う国に旅立つのかい?」


「そうですね……お祖父様達と共にいろいろ見て回りたいと思っています。」


「そうか……。」


クリス様はそう言うと黙ってしまった。

たぶん時間にすればほんの少しなんだろうけど、その沈黙はやたらと長く感じられた。

そしてクリス様は少し寂しそうな顔で私に語りかけてきた。


「私は本当はリリーナと一緒に旅に行きたいが王族の務めを投げ出すわけにもいかない。それにリリーナの気持ちを無視して縛りつけることも出来ないからね……もしもそんなことをしたら2度と君に向き合ってもらえないと思うし。……どうすることが正解なのかわからないけど、私のリリーナに対する気持ちだけは変わらないよ。たとえ君が遠くにいてもね。」


……クリス様はこんなにも私のことを想っていてくれている。

でも、ただ流されてクリス様の気持ちを受け入れてもきっとお互いに幸せになれないと私は思う。

私の中のクリス様に対する小さな好意が育つことがあれば…………

いや、でもそれをクリス様に伝えるのは卑怯な気がする。


「クリス様……お気持ちありがとうございます。」


私はそう言うのが精一杯だった。


「いや、私の方こそありがとう。」


クリス様は笑顔で答えられた。


「……ああ、もうそろそろリリーナを独占するのも限界かな。本当にリリーナは大事にされているね。君の心を手に入れるには壁を何個破れば良いのかな?」




何やら声が聞こえる。

どうやら私達のことを誰かが探しているようだ。


『リリーナさまーー!』『リリーナお姉さまーー!』


うん?この声は……

たぶん双子が探してくれているらしい。


「特にあの双子さん達はリリーナにとても懐いているようだし、それにまだライバルが増えそうな予感もするんだ。嫌な予感だよね。」


クリス様は困った顔でそんなことを言っている。

そうこうしているうちに2人がここまでやって来た。


「「リリーナ様!!」」


「まあ、2人ともそんなに慌ててどうしたの?」


2人は軽く額に汗をかいている。

そんなに必死で私のことを探していたの?

2人は私の姿を見つけるとホッとした表情を見せた。

そんな2人にクリス様が話しかけた。


「君達はよっぽど私にリリーナを取られたくないんだね。…………今は良いけど、今後リリーナの心に誰かが住み着いた時に君達は一体どうするんだろう?素直に祝福することは果たして出来るのかな。」


クリス様の言葉に2人は沈黙している。


「まあ、よく考えてみたらいいよ。さあ、リリーナ。もうそろそろ会場に戻ろう。この2人が探しに来たということは剣神殿やサナも探しているかもしれないからね。」


そう言うとクリス様は私の手を引いて会場の方へと進んだ。

黙ったままの双子も私達の後をついて来ている。

その顔は曇ったままだけど。



会場に戻るとお祖父様が手招きしている。

私が近づいて行くとそろそろ帰ろうと言ってきた。

そうだね、もう役目は果たしたよね?

お祖父様が王様に宿に帰ることを伝えたら何やらまたもめている。


「もう帰ってしまうのか?それに今日は城に泊まれば良いではないか。いや、是非そうしてくれ。」


「いや、帰る。」


「も、もう少し考えてくれても良いではないか!な、リリーナ嬢もそう思うだろう?」


ありゃ、また矛先がこっちに来たよ。

でもな〜、王様にはちょっと嘘つかれちゃっているしな〜。

私が困っていると今まで口を開いていなかったお祖母様が王様に答えた。


「ふふ、これ以上リリーナを困らせればどうなるかご存知ですよね?私も久しぶりに頑張っちゃおうかしら?貴方が王太子の時代はよく……」


「ひい〜〜、いや、すまない!さあ、帰りの馬車を準備しよう!だから、怒りを鎮めてくれ。」


…………お祖母様。

一体昔何があったんだろう。

怖くて聞けないよ。


私達は王様が準備してくれた馬車に乗って宿へと戻った。

王様は今日何回涙目になっていたのかしら。

やっぱりお祖父様とお祖母様には逆らってはいけないと改めて学んだような気がする。


宿に戻った私達はそれぞれ部屋で寛ぐことにした。

いろいろあったし、今後のことはまた明日ということになったのだ。

私が1人部屋にいるとアンジュさんがやって来た。


「リリーナお姉様……あの、わ、私とアレンのしていることって、リリーナお姉様のご、ご迷惑だったんでしょうか?」


アンジュさんが目に涙を浮かべている。

アンジュさんとアレン君のしていることって…………ああ、もしかしてクリス様に言われたことを気にしているのかな?


「クリス様に言われたことを気にしていたのかしら?」


アンジュさんは無言で頷いた。

ふむ、なるほど。


「でしたら気にしなくても大丈夫よ。私はアンジュさんとアレンにいつも助けられているもの。そうね〜、まあ、たまには過保護かな?と思うことはあるけどね。」


私は出来るだけ優しくアンジュさんに答えた。

私の言葉を聞きアンジュさんは私に飛びついてきた。

そして私に抱きついたまま


「リリーナお姉様、大好きです!」


と言って離してくれなかった。

うん、出来れば少し力を緩めてね。

アンジュさんは普通の方よりは力つよいからね!

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