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5050(フィフティフィフティ)  作者: あけお あこ
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1話 橋の向こう側

 夜の風が抜け、バイクを走らせる。

大通りなのに人がいない。

ノエルはこの時間が気に入っていた。


動物保護施設での勤務帰り。

今日は大型個体の処置が多く、少しだけ疲れている。

橋を渡りきった先、屋台の灯りがいくつか並んでいた。

人の声、油の音。


「たこ丸、ひとつ」


待っているノエルの視界の端で、空間が揺れた。

黒い影。

反射的に、空間へ意識を伸ばす。

音も気配も薄い。

けれど、確かに“そこになにかいる”。

屋台の裏、橋脚の影。

丸い背中、短い脚、夕焼けのように燃える色。


「……ピグゥ?」


伝説種。

この世界では珍しい動物。

 

視線を逸らし、気づいていないふりをしてから、静かに後を追った。


橋の下。

湿った空気。

空間に触れた瞬間、状況が一気に“見えた”。

檻。

成獣のピグゥ。

複数の人間。

武器、違法改造。

密売。


ノエルは息を殺す。


さっきの子ピグゥの母親だ。

胸の奥が、冷えた。


そのとき。

小さな影が、足元で震えた。

子ピグゥが、ノエルを見上げる。


大きな目。


「……しっ」


遅かった。

小さく弱々しい鳴き声が、確かに静寂の闇を裂いた。


「誰だ!」


空間が一気に荒れる。

ノエルは即座にバッグを放り、

腰のホルダーから警戒棒を引き抜いた。


伸びろ。

金属音。

棒が一気に伸長する。


一人目。

重心を崩させ、空間の“縁”に叩きつける。

二人目、三人目。

足場を奪い、投げる。

続け様に倒していき、五人目が倒れたとき、

空間の奥で“違和感”が走った。

来る。


六人目。

距離、五。

銃。


銃口がこちらを向いた瞬間、ノエルは「無理だ」と判断した。


距離は、五メートル。

遮蔽物なし。

これじゃ、間に合わない。

ノエルはそっと武器を下ろす。


引き金を引かれる…。

避けなきゃ…。

ノエルは銃口から目を離さない。


乾いた音が鳴る前に、

横からの衝撃が男を吹き飛ばした。

銃が宙を舞い、コンクリートに転がる。


「……っ?」


ノエルは反射的に身構えたまま、視線を動かす。

闇の奥から、三人。

一人は無駄のない動きで周囲を確認している男。

もう一人は、静かに位置を調整する女。


そして中央、

やたらと前に出る男。


「密売人、まだ生きてるか?」


無関心に近い声だった。


ノエルは警戒棒を見ずに拾う。


「……誰」


「それ、こっちの台詞だ」


前に出ている男が言う。

態度がでかい。

あんまり好きではないタイプ。


「ガキが首突っ込む場所じゃない」


「見た限り、あなたたちも同い年だと思うけど?」


即答。

空気が一瞬、硬直する。

横の女が、ノエルを値踏みするように見る。


「一人で五人倒した?その棒で?」


「なにか」


「ふーん」


あからさまな警戒。

ノエルは内心、舌打ちした。

感じ悪い。

三人で会議中。

身なりや仕草を注意深く見るノエル。


リハという男、が周囲を見ながら言う。


「残党、いない。でも長居はできない」


前の男が頷く。


「だな」


男は倒れている輩の懐から何かを取る。

それから、ようやくノエルを見る。


「動物保護施設の人間か?」


「……なんでそれを」


「制服の匂いが残ってるし、その棒…」


ノエルの眉が動く。

観察力、厄介。


檻の中で、ピグゥの母親が低く唸る。

子どもがノエルの足元にしがみついた。

女、フーキーが目を細める。


「……伝説種まで手出してるのね。連中、もう隠す気ない」


「だから潰す」


前の男、アズが言う。

即断。

迷いがない。


「ねぇ」


ノエルが言う。


「あなたたち、この子たちをどうするつもり?」


アズは一瞬考えてから答えた。


「しらん」


「は?」


「巻き込まれたのは事実のようだが、これ以上首突っ込むな」


ノエルは鼻で笑った。


「そう…。簡単に渡すほど性善説を信じてないの」


 一瞬、アズの口角が上がる。


「いい性格だな」


「そっちも」


「あいにくそいつらには興味がない」


フーキーが間に入る。


「感想言い合ってる場合じゃない。檻、どうする?」


ノエルは何かを決心した後、即答した。


「私が壊す、連れて帰るのも」


「こんな硬そうなの無理でしょ」


「…」


警戒棒を短く構えなおし、

重心を落とす。

力任せ。

技巧じゃない。

一撃で留め金が歪み、

二撃目で檻が開いた。

母親のピグゥが、子どもを抱くように覆う。

その様子を見て、

アズが、少しだけ目を細めた。


「……」


「なに」


リハが小さく笑う。

遠くで、サイレン。

フーミーが舌打ちする。


「ねぇ報告も面倒だよ、早くいこう〜」


アズがノエルを見る。


「おい」


「なに?」


「とりあえずついてこい。ここにいたら面倒だぞ」


勘は良い方。

悪い人ではなさそう。

でも、警察の方がいいか。

いや、この国は信用できない。


ノエルは子ピグゥを抱き上げ、母親を促した。

そして、そのまま背を向ける。


あの三人。

感じ悪い。

でも。

助けられたのも事実だった。

初投稿*・゜゜・*:.。..。.:*・'(*゜▽゜*)'・*:.。. .。.:*・゜゜・*


ずっとアクションストーリーが好きでした。

なので、肉弾戦を書きたいです。

よろしければ、またお立ち寄りください。

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