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第19話 墓前の涙
薄暗い夕暮れ。
リオンは静かな丘の上に立っていた。
目の前には、ただの土の塊のように横たわるクラリスの墓。
リオンはゆっくりと歩み寄り、膝をついて手を合わせる。
「クラリス……すまない」
声は風に消される。
拳を握りしめ、目の前の墓石を見つめながら、心の奥から溢れる感情を抑えられなかった。
「仇が討てなかった……俺は、何もしてやれなかった」
涙が頬を伝い、地面に落ちる。
長く険しい戦場で幾度も血を見てきたリオンだったが、今、ここで流れる涙は戦のそれとは全く異なる。胸の奥から締め付ける、どうしようもない悔しさと悲しみの涙だった。
墓石に額を押し付け、リオンは小さく呟く。
「……ごめんな、クラリス。俺は……必ず、必ず強くなって、もう誰も失わない」
夕陽が墓石を赤く染める中、リオンの肩が震え、静かな風だけがその声に応えた。




