神様との決別?
ハネオは王宮ヘお使いに出し、私はバードに付き添いを頼み、二人で天界の神との対話に臨んだ。
「神、気が進まないが話がある」
『新婚旅行中によく働いてくれたお礼に、聞きたいことに答えてあげますよ』
嫌みなんだか褒めてるんだか。
「じゃあ一つ目。ケインに啓示で何を命じた」
『ラフク湖の底から聖剣を取って来い、でしたかねぇ』
「天使の力も無く人間の体では不可能だろうが」
『まぁ、罪人ですし。罪を償う機会を与えたまでですよ』
こいつ、ケインが力尽きて死ぬような命令を神の強制力で無理強いしたんだな。わざと。
「あの魔剣は、ナルシスト天使が持ち出していた」
『そのようですね。魔物の封印が解けたら勇者でも仕立てて与える予定だったのですが』
神に仕立てられる勇者か。また気分の悪い存在だ。
『結果オーライですね。こちらで持て余していた出来損ないを消滅させてもらえました』
「自分で創り出したなら、ああなる前に自分で消せばよかっただろう」
『消滅は魔王にしかできないのですよ。こちらは創るのが仕事ですから。ところで、』
神の声音が嫌らしく搦め捕る響きを含む。
『そちらに送った天使を、そろそろ返してくれませんか?』
「断る。あれはもうウチの子だ。勝手に攫うことは許さない」
『おやおや。リュカの庇護下に入るとは。まだこちらで使い道があるのに惜しいことをしました。まぁ、他の神に真名まで授けられたら此方の自由にも出来ませんね』
ハネオがやたら自分の名を連呼していたのは、これが理由か。この神に創られた時に真名を握られ、絶対服従で使役されていたんだな。
可愛らしい名前を付けておいてよかった。
「お前と話すことは、もう無い。お前の遣り口が見えて来たら、お前の命令になど従えない」
『おや、反抗期ですか。貴女の成長を喜ばしく思いますよ。たくさん成長して、もっともっと神格を上げてください。何でも受け入れられるくらい』
「お前の命令を受け入れる気は無い」
『貴女が受け入れることになるのは、命令でしょうかねぇ』
忍び笑う神の声に、気味の悪い薄ら寒さを感じた。
「お前とは、これ切りだ。二度と話すことは無い」
『そうですか。それはとても残念です。リュカ』
神の声色が狂気を帯び始める。
『ふふっ。逃しませんよ。リュカ』
私が盛大に顔を顰めバードが殺気立った瞬間、天界の神の気配が完璧に消えた。
「バード。あの神は何を企んでいると思う?」
「ろくでもないことだと思う」
うん。他に言い様は無いと思う。
顔を顰めたまま溜め息を吐く私の頭をポンポンと撫でて、バードは優しい口調で言った。
「大丈夫。こちらには神と神とハネオがいるから」
私とバードとハネオ。結構無敵な気がして来る。何かやれそう。
「ところでリュカ、旅行中ずっと訊きたかったんだけど」
「何?」
「僕たちの色情霊は、お洋服を着ているのかな?」
この見た目理想の王子様は!!
エロいことなんて一度も考えたことの無さそうな顔してるくせに!!
「魔王が神ならバードにだって見えてるくせに」
「魔王だから、可愛い奥さんの口から聞きたいんだよ」
このエロ魔王め。くそぅ。言うまで絶対諦めない笑顔で圧をかけやがって!
「リュカ?」
こうなったバードはしつこいので、私は早々に降参した。
「お洋服は着ていません」
だから、いたたまれなくて旅行中あまり色情霊に意識を向けなかったんだよ!
うぅぅ、と呻く私を満足そうに抱き寄せて、バードは甘く囁く。
「僕が拗らせて来た妄想は、こんなものじゃないから。覚悟してね? リュカ」
せめてもの安眠を求めてハネオに羽毛布団を貰おうかな。
乾いた笑いを漏らして遠くを見る私に、バードは長いことキスをしていた。
近日中に、「魔王の教育的指導」の続編を書き始めます。
リュカとバードのお話は、それでお終いになります。




