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2話 第一異世界人

 所謂十字路であるが、どの方向の先に目を凝らして見ても、街や村は見えなかった。


 小太郎が人の匂いがする方向とか解らないかな?

 期待した目で小太郎を見ると、


「ワンっ!」


 ひと鳴きすると、右に向かって走り出した。


「待てって、小太郎!」


 5分程走ると、その先に微かに黒い点が見えてきた。もしやと思い、走っていくと10分程でその正体が見えてきた。


 どうやら、馬車の様で4人程で野営の準備をしている様だった。


 近づいていくと、向こうにもこちらの事が解ったようで、1人は馬車に入り3人はこちらを警戒している様だった。


「こんにちは。」


 俺が声をかけると、3人の中でも最も大柄な30代前半の男が声を返した。


「おぅ、こんな時間に1人で出歩くとか、危ないぞ?もうじき、真っ暗になるが大丈夫なのか?」


 ひとまず、異世界でも話が通じる事がわかって一安心した俺だったが、考えていた自分の設定を説明した。


「はい、実はかなり遠くの田舎から出てきたのですが、数日前に馬車が魔物に襲われてしまい、馬が殺られて馬車も破壊されてしまいました。魔物は返り討ちにする事が出来たのですが、壊れた馬車は置き去りにして、4日程歩いてなんとかここまで来る事が出来ました。もしよろしかったら近くの街までご一緒させて貰えませんか?出来れば、少しお水を分けて頂けると助かるのですが。」


 すると、大柄な男が馬車に声をかける。


「旦那ー。聞きましたかい?どうしやすか?」


 しばらくして、1人の細身の男が馬車から降りてきて、俺を観察する。


「とりあえず、服装はここらじゃ見ない格好ですが、怪しい人ではなさそうですね。少し、お水を分けてあげてください。魔物を返り討ちにしたとの事であれば、お若いのにお強いのでしょう。あと野営は人が多い方が安全なので、ご一緒しましょう。」


「ゴクッゴクッゴクッ、プハー!」


「助かりました、朝から何も飲めなかったので。」


 全員で自己紹介をしたところ、細身の10代後半男が商人で『リグルド』、その他3人は護衛役の冒険者パーティーとの事だった。

 大柄な30代男は、冒険者のリーダーで『ガロン』、経験十分な戦士との事だ。

 標準的な20代男は、『キルス』、ベテラン斥候。

 紅一点、細身の20代前半女性は、『アルト』、ようやく一人前になった魔法使い。


「ん?ユーキ?ユキ?」


「優希です。ゆうき!」


 どうやら、こちらでは、ゆうきと呼びづらいらしい。

 まぁ、いいか。


「ユーキです!」


 名字は貴族とかしか持ってない事が多いから、名前だけでいいだろう。


 3人は、護衛をしながら街を移動しているらしい。


 ある程度雑談をしながら、野営の準備を手伝っていると、リグルドが俺に話しかけてきた。


「大したものはありませんが、宜しければ食事をご一緒しませんか?」


 その流れは、予想してなかった俺は、


「よ、宜しいのですか?」


「それくらい大丈夫ですよ。あと2日後の夕方には近場の村に到着しますし、って、ユーキさん、その角っぽいのは何ですか?」


「あぁ、これはさっきホーンラビットを倒した時に折れたから武器として使っているんですよ。」


「ホーンラビットならお肉が食べられますよ?お肉は持ってこなかったのですか?」


「そうでした!あります!」


 早速、アイテムボックスからホーンラビットを取り出すと、4人は目を見開いて言葉を失っていた。


 俺がキョロキョロしていると、ようやく言葉を思い出したアルトが、


「ユーキさん!アイテムボックス持ちですか!?」


 えっ?アイテムボックスってあんまり持ってないのかな?


「あっ、はい、アイテムボックスって皆さんお持ちじゃないのですか?」


 そこに、興奮気味のリグルドが、


「アイテムボックスの大きさにもよりますが、商人や冒険者等の仕事で役に立つ大きさである倉庫程度の大きさなら10000人に1人って所でしょうか。大きめのバッグ位ならその10倍位いますね。まぁ、異世界の勇者様なんかは容量無限みたいですがね。商人にとっては憧れのスキルですね!」


 なるほど、これはあんまり見せない方がいいな…。


「私のアイテムボックスは、小さな倉庫位で、ホーンラビットが数体入る位ですね。それより、ホーンラビットはどうすれば食べられますか?」


 早く話題を変えたいので、無理やりホーンラビットに目線を移す。


「それなら、ガロンの兄貴が専門ですよ。」


 キルスがそう言うと、ガロンは自信満々にこう言った。


「まずは解体だな。それから料理だが、生憎塩を持ってないので、焼くだけだな。」


 キルスがやれやれと言った感じで、


「その解体と料理が難しいんですよ。」


 料理は出来そうだが、解体がなぁと考えていると、


「解体は得意だから、今からやってやろうか?」


「本当ですか?」


「あぁ、ただ、このホーンラビットは毛皮がボロボロだから毛皮を買取りできる状態にはできねぇぞ。」


 なるほど、ホーンラビットは毛皮も売れるんだな。

 でも今はそれどころじゃない。


「勿論、構いません。ぜひお願いします。」


「よしきた!任せとけ!」


 そう言うとガロンは、腰から良く手入れされた解体用のナイフを取り出すと、破れた毛皮からナイフを入れ器用に毛皮を剥いでいった。


 その後、内臓を取り出し、頭を落とすと、両腕、両足を体から落とし体も4つに切り分けた。


 最終的にホーンラビットの肉として、10kg程度となった。


 そのうちの腕を1本使ってもらって丸焼きとし、リグルドが準備した、硬い黒パンと野菜スープで食事となった。


「いやー、ユーキさんのお陰で豪勢な食事になりましたな。」


 リグルドがそう言うと、ガロンが


「違いねぇ、普通は野営だと荷物の関係もあってスープと干し肉かパンだからな。」


 正直な話、あまり美味しい食事ではなかったが、ほぼ1日ぶりの食事であったため、非常においしく感じた。


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