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お仕置きです

本日二話目

「.....あぁ?」


底冷えするような声を出し感情を映さない無機質な瞳でアリスを見つめる。

しかしアリスも一歩も引かずに気丈に睨みつける。


「ちっ、面倒な.....じゃあこのバカを衛兵に突き出す、それでいいか?」


「タ、タケルさん!? なんで.....」


「しゃーねぇだろうが.....これだけ目撃者がいたら誤魔化しはできない、ここはこれが一番丸く収まるからな」


「でも!」


「うるせぇ! 黙って俺に従ってればいいんだよ!」


あの中だとタケルってやつが一番偉いらしいな。

というかいやに素直だな。

なにか企んでるんじゃないかと疑いたくなる。


『メア』


『.....なに?』


『この後あいつらのついて行ってくれ』


『.....分かった』


そばに来ていたメアに念話で頼むと了承してくれた。

妖精との契約は契約者が力を貸してもらい、妖精はそれに協力してくれているのだ。

だから妖精に命令はできない。

できるのはお願いなのだ。

この子達は俺に懐いてくれたからある程度の命令は聞いてくれているけど。

嫌われないようにしないとな。


そんな事を思いながら隣のオーエンさんにバレないように頭を撫でる。

するとメアは嬉しそうに顔を崩してもっと撫でてと言うように頭を軽く押し付けてくる。

うん、やっぱり嫌われたくない。

可愛すぎるだろ。


そんな事をしてる間に自体は進展していた。

ちょうどタケルという男が剣を抜いた男を外に連れ出すところだった。

外には衛兵が既に来ていた。

おそらく誰かが通報したのだろう。

とりあえずこの場は解決かな。

()()()()()()()()

これで終わればよし。

終わらないようなら後々対処法を考えなきゃな。


『メア、とりあえず今回は監視だけだから、それ以上はやらなくて大丈夫』


『.....うん、頑張る』


『よろしく』


メアはそう言うと男達について行く。

最近はメアにばかり無茶させてる気がするなぁ。

そういえば妖精って食事出来んのかな?

できるならなにか簡単なものを作ってあげるのもいいかも知れない。

これでも前世では両親が共働きだったから料理はそれなりにできるのだ。

この世界の食材は日本にもあった食材に似たものが多い。

それどころか食材の美味さに関しては普通に地球を超えている。

問題なく料理できるだろう。


まぁそれはさておき.....


「アリス!」


「あ! リョーマ! あいつらって.....」


「ライオスの時と同じヤツらだな、タケルってやつは初めて見たが.....それよりもお前はまた無茶しやがって」


「だってさぁ.....」


「だってさぁじゃない! 剣を持ってるやつ相手にのんびり出て行くやつがあるか!」


「うっ、だって眠かったのにうるさいから出てきただけだもん、まさか剣を抜いてるなんて思わなかったし…...」


「冒険者目指すなら相手の装備くらい確認しておけよ.....」


「ねぇ」


「ほんとに危なっかしいやつだよお前は.....」


「いざとなったらリョーマが助けてくれるんでしょ?」


「助けられるようにしてたけど俺を頼りにする前提で動かない!」


「ねぇってば」


「大丈夫よ、あんなやつらリョーマなら楽勝でしょ?」


「そういう事を言ってるんじゃないんだよ、それにタケルってやつは結構強いぞ」


「あ〜あいつね.....確かに魔力もかなり多かったよね」


「ちょっと! 聞きなさいよ!」


「「ん?」」


背後から少し涙声の叫び声が聞こえた。

振り返るとローブの少女がいた。


「全く! 人を無視するなんて失礼しちゃうわ!」


「無視?」


「そんな事してないけど…...」


「してたの! もう! なんなのこいつら.....」


「え〜と.....よく分からないけどごめん」


「ごめんなさい」


「.....別にいいわよ、それよりもあなた!」


ビシッと効果音がつきそうな勢いでアリスを指差す。


「私?」


「そうあなたよ、あなたよくも邪魔をしてくれたわね」


腕を組みながらそんな事を言い出した。

いやいや、アリスが止めなかったら戦闘になってただろうに。

そりゃあ止めるに決まってる。


「邪魔? 私が?」


「えぇそうよ」


「なんで?」


「あのまま戦闘になったらそのまま逃げるつもりだったのよ、ついでに水晶鳥(クリスタルバード)の卵の殻を奪ってね」


「奪えるの?」


「できるよ、全く.....せっかく臨時収入が手に入る所だったのに.....」


いや無理だっただろうな。

あの男達だけだったらいけたかもしれない。

でもタケルの事を考えたら無理だ。

この少女では確実に奪う前に負けていただろう。

少女はそれが理解出来てない。

アリスもそれに気づいてるようだがなんと言ったらいいか分からないらしい。

いや、はっきり言うべきか分からないと言うべきだろ。

まぁそれは俺の役目かな。


「いや無理だろ」


「.....なんですって?」


ピクリと身体を揺らし怒気をにじませながら俺を睨む。


「まずタケルってやつから逃げるのは不可能だったし、当然勝つこともできなかったと思うよ」


「.....私があんなやつらに負けるですって! そんな訳ないでしょう!」


「無理だよ」


端的(たんてき)に事実だけを伝える。

自分の実力を理解できないといつか痛い目を見る。

この世界でそれは死に直結する。

だから俺は超会話の思考誘導で望んだ展開に話を持っていく。


「! いいわ! そこまで言うなら私の強さを教えてあげる!」


そう言って突然殴りかかってくる。

しかし中々のパンチだが魔物の速度に慣れている俺からすればかなり遅い。

外側に回り込み横から腕を掴む。


少女は避けられたことに驚いたのか目を丸くする。

そして驚きで硬直している間に首筋に手刀を軽く添える。


「.....これでよく勝てるとか言ったね」


こんな言い方はあまりしたくはないのだが今回は仕方が無い。

ここで一度その高い鼻を折っておかないとのちのちこの少女が危険な目にあいかねない。

余計なお世話かもしれないけど一度助けた少女がその後死んだとかになったら嫌だからね。

この子のためでもあるし、俺達の安心のためでもある。


「ッ! まだよ!」


少女は俺の手を振り払い距離をとる。

えぇ〜まだやらなきゃダメかね.....

意外とこれ心が痛くなるんだよねぇ.....


「”我らは森の民、誇り高き森の民なり、母なる森よ我が願いを聞き届けたまえ!”『ブラスト』!」


魔法!? 建物の中で!? バカかこいつ!

これ俺も怒られるやつじゃん!

めんどくせぇ〜


やっぱり関わらずにいればよかったかと少し後悔する。

とはいえもう遅い。

俺に出来るのはこの宿になるべく被害が出ないようにする事だ。


「”荒れ(くる)う狂乱の暴風、星を横断する自然の意思よ! かき回せ!”『エアロミキサー』!」


『ブラスト』は一点に集めた風を対象に向けて放つ風の初級魔法。

込める魔力によっては人を簡単に殺せる。

今回はそこまでの威力は無かったが。


対して俺の『エアロミキサー』は四方八方からとんでもない風が殺到して、対象を気流の渦で攻撃する中級魔法だ。

今回はその対象を少女が生み出した魔法にさせてもらった。

その結果少女の『ブラスト』は俺の『エアロミキサー』にかき消された。

その結果に満足して少女を見ると口を開けて呆然としていた。


「ちゅ、中級魔法? 私でも使えないのに…...」


イラッとした。

今気にするのはそこじゃない。


アリスがカツカツと少女に近寄り頭のてっぺんにゲンコツを叩き込む。


「痛ったぁぁぁぁぁぁぁ〜!」


.....あれ痛いんだよなぁ。

ゼルがよくイタズラした時に最後にあのゲンコツが決まりになっていた。


俺も一度修行中に大怪我をしてそれがアリスに見つかってゲンコツを落とされた。

あれは本当に痛い。

本人曰くそんな怪我をするくらい無茶をしないでということらしいが言葉で伝えて欲しかった。

それなら超会話で交渉の余地もあったというのに.....


「何するのよ!」


「何するのよじゃないわよ! 周りを見なさい!」


「周り?.....あ」


そこでようやく自分がこれだけ人のいる場所で、しかも私情で攻撃魔法を発動させてしまったことに気がついたらしい。


「リョーマが上手く抑えてくれたから被害者は出なかったけどこんな場所で攻撃魔法を使うなんてあなたこそ何をしてるのよ!」


「.....坊主」


背後から声がかけられる。

その声には多分の呆れが含まれていた。


「あ〜オーエンさん、どうも」


「全く.....大方そこのお嬢ちゃんに身の程を教えてやろうとしたんだろうが…...これはダメだろ」


「申し訳ないです…...弁償代は自分が」


人には被害は無かったが床や机にはかなりの傷がついていた。


「ふぅ.....あとは任せた」


「了解です」


そう言ってオーエンさんは宿屋の人に何かを手渡して部屋に戻って行った。

おそらく金だろう。

弁償代は払うって言ってるのに…...

普通これだけ騒ぎを起こしたら宿を追い出される。

その証拠にオーエンさんが金を手渡すまで険しい顔をしていた宿の主人が近ずいてきていた。

まぁ金を渡した途端に目を見開いて笑顔になったのだが。

それなりの金は出したのだろう。


まぁ任されたし、この状況をなんとかするか。


「あ〜皆さん! お騒がせしてすみません!」


そう言ってペコリと頭を下げると自分から転がった家具類を片付け始める。

それを合図にぞろぞろと居た野次馬達が部屋に戻り始める。


こんだけ早く対応すればまだ衛兵に通報されてないだろう。


数分ほどで片付け終わり、アリスの方を見るとまだ説教しているアリスと泣き崩れている少女の姿が見えた。


「分かった!?」


「.....ひっく.....ごめんなさい」


「本当よ全く!」


「アリス、片付け終わったよ」


「お疲れ様、それでこの子どうするの?」


その言葉に少女は怯えるように身体を跳ねさせる。


「とりあえずここから離れようか、ここじゃあ邪魔だし」


「そうね、じゃあ私の部屋に行きましょうか」


アリスはそう言って少女を部屋へと引っ張っていく。

少女はアリスよりも少し身長が高い。

それをそれをずりずりと引きずっているのは見ていてかなりシュールだ。


感想下さいな~

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