対談(高坂side)
とても、…お久しぶりです。
ちょっとだけ進展です。pv20万超えとかもう目が飛び出しそうでした…。みなさんこんなに見てくださってるんですねすごい…。
「わざわざ助太刀までさせてしまって済まないな。だがもう結構だ。後は我々に任せてもらおう」
唐突に表れたソイツは、初っ端からこちらの面々を煽るようなことをぶちかましてきやがった。
無能がトチった所為でこっちにまで火の粉が飛んじまったっていうのに、この態度。
アイツらに流された書類の所為で仕事終わらねぇって、ゆまが泣きついてきたこともあるんだ。正直、奴らへの信頼は限りなく低い。勿論、矜持が高い分礼節にもうるさい御上土もブチキレ寸前だ。舐めきった態度に、眦を釣り上げた御上土の肩に、不意に手が乗せられた。
「みなさん大分落ち着きを取り戻されたようですし、これにてこちらの生徒会は戻らせていただきましょう。
いつものように備品等についての申請書類はお任せ下さって結構ですから、そちらの生徒会の方々には一刻も早くこのような事態に陥ってしまった原因を究明して頂きたく存じます。後日、書類の受け渡しの際にでも詳細を含めた報告を頂ければ幸いです」
ゆまはそう言って、威圧するように美しく微笑んだ。相対している男は案の定、顔を青くしている。
当然か。なんでもない顔して、コイツ、今魔法科の生徒会脅しやがったんだからな。
「いつものように」備品等についての申請書類を任せてもいいとの発言で今代の魔法科生徒会は職務を怠慢していることを仄めかし、それを前提にした上で時間があるならとっとと原因吐かせてきやがれとせっつき、できあがった書類が惜しくば誤魔化さずに細部まで報告しろと来た。
しかも直接。
それにおそらく、管轄的には他所の騒動であるにも関わらず火消しに駆り出されたことや、そちらからの要請に応えてやり実際に騒乱を鎮めるべく力を貸してやったにも関わらず不遜な態度をとったこと、そんな無礼な態度をとられていながら魔法科生徒会に華を持たせてやれるように撤収の意を示したことなんかも込みでの脅しだ。
直訳すれば、『おまえらこっちに借りいくら作ってると思ってんの?ん?』とでも言ったところか。ほんっとおまえ、こーゆーとこだけガキじゃねぇのな。末恐ろしいわ。
「了解した。確かに、承った」
「勝手をするな!」
「どっちが勝手だ。アンタが勝手に格下を連れ込むから弱みを作ることになったんだろう。黙認していた俺も悪いが、…今となっては、無理矢理叩きだしておいた方が無難だったな」
吐き捨てるように告げて、ソイツは喚くクソを押しのけて前に出た。
シルバーフレームの眼鏡の奥で、理知的で鋭い眼差しがこちらに向けられている。
「魔法科生徒会、副会長だ。三家の内では一番格下だが、降の名において謝罪申し上げる。今まで済まないことをした」
幾分か和らげられた視線に、ゆまも幾らか威圧を緩めた。コイツには交渉の余地が残ってるとでも思ったのかもしれねぇ。
「…おい」
「此度は許してさしあげましょう。それに、―確かに流れてきた書類に貴方名義のものはありませんでしたから」
「っち」
「お心遣い痛み入る」
「っ早真!!」
クソはまだ喚いてやがる。
普段はどうだか知らねぇが、クソはこの場においちゃぁ爪先ほども役に立ってねぇクソだ。それに、キレてる場合じゃねぇだろ。
ゆまは許したっつったが、「此度は」っつってるところからお察しだ。二度はねぇし、副会長でいて末席とはいえ三家である降が謝ったからこそ、その顔に免じて引いたんだ。諸悪の根源っぽいクソを許す気なんざねぇし、勿論御上土が許すように便宜を図ってやるつもりもねぇぞありゃ。
いくら血筋自体は古いっつっても、ワケがあんのか知んねぇがクソの家の祈部はクソの親までは巧闇が預かる土地にいた輩共だ。いくら今現在逆らえる相手が少ねぇからってあんまりやらかせば最悪家自体大幅に格下げされちまうだろうに。
「な、によなによなによなによっ!!なんでアンタそんなに偉そうなの?!応江たちはねぇ、三家なのよ?!」
唐突にぎゃんぎゃん騒ぎ出したヤツはそう喚いてゆまたちを指差して糾弾した。
さっきゆまをこれでもかというほど睨んでいた輩だ。きもち、ゆまとの距離を詰めておいた。アレは、何をしでかすモンだかわかったもんじゃねぇ。
「…それがどうしたんだよ」
女の糾弾に、ぼそりと惣火が呟く。
生徒会副会長としての対応は間違ってなんてねぇし、そもそも教会に属していないゆまには三家の威光もあまり関係ない。それ以前に、ある程度上の身分の奴らは、あの惣火の猛将の孫娘っつーことで大抵のヤツはビビッて手なんざ出してこないんだが。
だが、すぐさま謝罪しなかったのがソイツにとって意外だったのか、ソイツはあろうことか指差したまま感情のままに呪文を唱えてしまった。
「死んじゃえ!大炎上!!」
瞬間的に呼び出された特大の炎は、ごうごうと唸りを上げてゆまの方へと突っ込んでいこうとしていた。咄嗟に庇おうと、身体が狼へと変化しかかった。
―が。
―ばちん。
指を鳴らすと共に、炎は夢のように掻き消えた。
「―くだらない。きっと、貴方のような方が魔法科の格を落としているのですね」
わざとらしく大きく溜息を吐くと、ゆまは踵を返した。
一通りの用事は済んだのだ。いつまでも敵地にいるわけにもいかない。御上土や惣火と共に高台から降りる支度を済ませるが、ふと異様な雰囲気を感じ取り、ちらりと群衆を盗み見た。
そこにあったのは。
まるで汚物を見るような目で、喚いていた女を突き刺す数多の視線だった。




