第十二話:昨日の今日で敵は友
昔、コロコロコミックを購読していた時は本当に何でもかんでも流行っていましたねぇ~。
ミニ四駆、ビーダマン、ベイブレード、ハイパーヨーヨー、釣り。(釣りは『グランダー武蔵』から)
ちなみに私が小学生の頃、図工の授業だったかでケンダマを作ったことで休み時間に大ブレイクしていたんですよね。
そんな感じのお話♪
今日も今日とて研究にいそしむ絶世の美少女ロゼ。
彼女の研究対象は、ありとあらゆる物に向けられ、毎日が科学の日々。
そんな彼女は昨日、自分に惚れているアクスをボディビル大会に参加させて楽しんだ訳だが、今回のお話はその翌日から始まる。
これこそが毎日更新らしいネタとも言えるだろう。
「ねぇ、チャックル。
今日も年に一度の大会が行われるみたいよ」
「昨日の今日でですか?
確かに昨日のボディビル大会は規模が小さかったですが、その翌日にまたもお祭り騒ぎ。
この国はずいぶんと平和なのですね」
「そりゃ、余所者である私達が突然やってきて王城を乗っ取っているのに、なんの問題が起きていないことからも分かるでしょ?」
特に気にした風でもないロゼは、読み終えた新聞を畳む。
さて、ここまで読んでくれた方で、ロゼの王城乗っ取り事件に疑問に思った人がいるとは思えないが、
彼女が言うように、ロゼ達一行が王城を乗っ取ってからも特に問題らしい問題は起こっていない。
勿論、噂としてなら「レプリード王国に凄い美少女がやってきて王様を締め上げた」程度には知れ渡っているが、そもそも王家は弱腰日和見平和主義で汚職も戦争も、騒動一つ起こすのも怖がる集団だ。
この国に暮らしていても王様の名前も知らない国民は多く、『王』国であることすら知らない者までいる始末。
と言う訳で、ロゼはこっちに来てからずっと、王家から貰って来た危険物やら希少品やらの研究に勤しんでいる訳だ。
「それで、今日の大会にもアクスを参加させるのが決定したところで本日の予定を話しましょう。
今日、開かれるのは『大ケンダマ大会』。
新聞ではこの大会でも毎年優勝をかっさらっているケンダマ使いが優勝するとか書かれているけど、これはやっぱり、……むふ♪」
「全てはロゼ様のお心のままに。
我々は従いますし、アクスもきっとロゼ様の望みを果たしてくれるでしょう」
反対意見は無し!
これにより、ロゼはこの大ケンダマ大会に参加を決定した。
それもそうだろう、今のロゼは最高に美しいハナマル笑顔なのだから。
「ふふっ♪ アクスったら私の期待に応えようと毎日色々と勉強しているみたいだし、ケンダマも鍛えていればいいんだけどね♪」
研究室から直通エレベーターに乗ってアクスの部屋へと向かうロゼ。
彼女のお気に入りになったアクスは、研究所内に部屋まで用意されているのだった。毎日が日曜日状態。
ちなみに騎士としての給料も一応の雇い主である貴族ラガラルからもらい続けているのでそのお金をせっせとロゼの興味を引きそうなプレゼントに費やすのだった。
◆ ◆ ◆
「……なぁ、アクス。
俺、ケンダマとかやったことないんだけど?」
「何言ってんだよセム。お前にとっても唯一のご主人さまの命令だろ?
数時間もあれば愛の力でケンダマ・マスターになれるってもんだZE」
ここは大ケンダマ大会会場。
すっかり「いつもの二人」と言われるようになったアクスとセムは、大ケンダマ大会への参加手続きを終えたところだった。
「大体、このケンダマ小さ過ぎるって!
俺の手の大きさを分かり易くいえば、電信柱が鉛筆サイズのビッグハンドなんだぞ?」
「ならロゼさんが作ってくれた特製ケンダマ使えばよかったJAN?」
「それはそれで重すぎる。
ロゼ様のいたずら心だろうけど、俺の体重の10倍はあったぞ、あのケンダマ」
「それこそ愛だろ、愛♪
俺のロゼさんへの愛は自分の体重の十倍じゃ語り足りねぇZE♪」
そんな、ゆるふわな二人のやりとりを眺める一つの怪しき影。電柱の陰にあり。
「ぬぬぬ、俺様の弟をぶっ飛ばしてボディビル大会に優勝した騎士アクス。
許さんぞ! 騎士の屑め!!」
我々はこの男を知っている。
否! 正確にはこの男の弟を知っている。
彼の名はライトニング! 昨日のボディビル大会でアクスに負けたリストンの兄だ。
「だが今に見ていろ。
俺様は弟と違って、実際にケンダマを何年も鍛えてきて最強のケンダマ使いだ!
酸素の薄い高山や、地下深くの溶岩の中でさえ正確無比なケンダマ技を発揮してきた本当の強者だ!」
彼は『ライトニング』の名が示すとおり、“拘束”の異名を持つ闇のケンダマ使い。
裏ケンダマ界では、その名を知らぬ者はモグリとされるほどの冷酷無比な殺戮ケンダマの使い手。
一瞬でケンダマ紐で拘束し、貫き砕き、八つ裂きにする残忍な犯行は、どんな悪魔でも裸で逃げ惑うというものだ。
そんな彼に命を狙われたアクスに勝ち目はあるのか!?
そして一緒に参加するセムの運命や如何に!?
◆ ◆ ◆
「ケンダマ奥儀『蜘蛛の赤ちゃん』ッ!!」
「の、ダブル!! 『ツイン蜘蛛の赤ちゃん』ッ!!!」
大ケンダマ大会決勝戦。
アクスとセムのコンビは、ケンダマ流剣術の開祖、ミャーモト・ボクデソが晩年に生みだした最終奥儀を繰り出した。
このコンビ技のためにセムは自身の手では使いにくい小さなケンダマを使っていたのだ!
満場一致で優勝したアクスとセム。
その優勝にケチを付ける者は一人も居ない……と思われたのだが、
「そんな技、インチキだ!
ミャーモト・ボクデンの技は失伝しているからノーカンだ ノーカン!」
騒ぎ立てるアホが居た。
やれやれ、これほどの実力の差を目の当たりにしながら自分の未熟さを悟れないとはなんたる未熟!
“拘束”の異名が泣いているぞライトニング!!
「それは俺のロゼさんへの愛を侮辱しているのか?」
「それは許せんな。
アクスが侮辱されたのなら、それは俺のロゼ様への忠誠心を侮辱するに等しい!」
鼻息荒く二人の優勝にケチをつけたライトニングだが、いかに歴戦の猛者であってもこの二人に睨まれればただでは済まない。
今も大ケンダマ大会の会場内では自身に向けられたわけでもないのに二人の殺気の余波で失禁する者が続出している。
「うぅ、うるせぇ! テメェなんか怖かねぇ!
俺は……俺は負けられねぇんだ!!」
この時点になってようやく本能的な死の恐怖を感じたライトニングだが、プライドが邪魔をする。
振り上げた拳を振り抜かずに下ろすのは、彼にとって死ぬことよりも恐ろしいカッコ悪さなのだ!
「バカ野郎ッ!」
アクスはライトニングの震えを見て、すでに心が折れていることを見抜いた。
だがそれでも振るわれた拳には、拳で返すしかない。それこそケンダマ使いとしての礼儀だ。
「けぺっ!」
勝負は一瞬。
ライトニングの飛ばしてきた超重量のケンダマ・ボールは、後から飛ばしたはずのアクスのケンダマ・ボールが撃ち落とす。
その勢いを落とすことなく、ライトニングの額を大きく切り裂きながら。
「ふっ、俺様も死ぬに相応しい強者との勝負だったぜ……」
そして死を覚悟したライトニングだったが、いつまで待っても死は来ない。
ライトニングは血に濡れた目をこすって前を見ると、そこには何をするでもなく、ただ不動立ちするアクスの姿があった。
「……俺様は生きている。
貴様、情けを掛けたのか!?」
「情けだと? 俺は俺の惚れた女性への愛を侮辱された怒りを晴らしただけだ。
そして真に俺の愛を証明するためにもお前は殺さん! 強くなってまた挑んで来い。
俺はロゼさんへの愛の証として、自分の命を狙う敵に強くなるための時間的余裕を与える強者でなくてはいけないんだZE!」
これでこそアクス! だからこそロゼのお気に入り!
敵をただ殺すのではない。自分を殺しに来た相手を殺さずに追い返す活人拳。
アクスのケンダマは、決して人を殺さない。
「くっくっくっ、随分と甘っちょろい奴だな。
だが俺様は確かにテメェに殺意を失い、一人のケンダマ使いとして真っ当な道を歩みたくなったぞ」
「それでこそケンダマ使いだ。
俺はいつでもロゼさんへの愛を証明出来る場にいる。何時でも掛かってくるがいいZE」
「ふん、どこまでもケンダマ使いだよテメェは。
だけど気をつけろよ?
俺様の兄弟はまだまだ貴様を狙ってるぞ」
そのセリフを最後に気絶するライトニング。
いかにケンダマの裏世界に長いこと居たとはいえ、本物の強者たるアクスのオーラに晒され続けた疲労は並々ならぬものがあったのだ。
ライトニングの兄弟たちは総勢110人。つまり110つ子だ。
騎士アクスは果てしなく厳しい戦いの舞台へと足を踏み出したのだった――。
私は普段、考えずに手を勝手に動かして書いているので、あとから読み返すと自分でも驚くことがあるのですが随分と妙な展開になっていますねw
まぁ、それもいつものことですが。
そして昨日の朝。ついに、この作品の最終話を書こうと思い、一気に執筆して「やれ完成だ」と保存しようとしたらエラーで飛んでしまいました。
執筆終えた話が消えたのはずいぶんと久しぶりですが、ショックは大きいものですねぇ~。
具体的にはその後すぐに書き直した話が消えた話に及ばないところが。
まぁ、大体は思い出せたので最終回は6月24日に予約投稿して完結しようと思っています。
ストーリーが無いので何時までも続けられますが、逆に言えばいつ終わっても不思議じゃない作品ですからね♪
では、また明日♪




