湯豆腐 * ご当地調味料?佐賀編
せっかくの日曜日なのに、熱が出た。
病院に行くとただの風邪だと言われた。インフルエンザじゃないならすぐに治るだろう。
夕飯用の買い物をして帰る。
熱が出た日の飯はうどんだと決まっている。俺ルール。
「あ、主任ー、お買い物ですかぁ?」
お隣さんから声を掛けられた。またお前か。
「おー、鍋の材料」
答えて、スーパーの袋を持ち上げた。
ネギ飛び出てますが。もう恥ずかしさなんて残ってない。皆無。
「鍋って……え、レタス? 白菜じゃなくて?」
「レタスだな。旨いんだ、レタスのしゃぶしゃぶ」
スーパーの袋の中にはレタスと豚肉、ホウレン草、白ネギ、しいたけ、冷凍うどんなどの鍋材料が入っている。
他にも冷えぴたとポカリ、栄養ドリンクも混在。
「はぁ……しゃぶしゃぶ、ですか」
「湯豆腐だけど」
「湯豆腐なんですかしゃぶしゃぶなんですかどっちなんですか」
「鍋」
「……」
「地元でよくやってたんだが、豆腐がな、溶けるんだ」
「溶ける?」
「温泉豆腐つうの。専用の温泉水もあってな? 溶ける」
「はぁ……よくわからないけどおもしろそうですね?」
「まぁ温泉水じゃなくてもアルカリ性だったら良いんだろうけど……あ、そうだ、ちょっと待ってな」
豆腐一丁水一パック、ゴマダレ一本を取りに戻り、手渡す。
「やるわ。百聞は一見にしかず」
「え? いいんですか? 主任の足りなくないですか?」
「大丈夫、いっぱいあるから。あと二丁ある。某所エッセイ読んで久々に食いたくなって実家から送ってもらった」
「ボウショエッセイ? よくわからないけど、遠慮なく頂いちゃいますねー」
「おー。豆腐はとろっとろになったところを食べるんだぞ。ゴマダレ一択。甘い濃い味がこれまた合うんだ。ただし要注意、九州の味は基本甘い、辛い、濃い。出汁の効いた薄味に慣れている人間には味が濃すぎて受け付けない。地元のお気に入りの店、半分はおすすめできないんだよなぁ……」
「しゅ、しゅにん?」
「ともかくだ。豆腐がとろっとろになるまで煮込め。蕩ける葱と豆腐をゴマダレで食し、薄くなってしまったゴマダレは汁で薄めて飲む。二人いるんだし、豆腐一丁くらい増えてもかまわんだろ」
「これにレタスをしゃぶしゃぶするんですか?」
「そう。レタスとゴマダレ合うんだよ。他にも豚肉と鶏肉、ほうれん草、レタス、にんじん、しいたけ、うどんといろいろいれれば鍋になる。鍋は一人飯の最高峰だと思う」
うんうんと頷き、
「じゃあまたなー」
「あ、ありがとうございますー」
熱が出るとハイになるよね。
さて、調理開始である。
まずは水。
鍋にパックの水をじゃばー。
具材をどさー。
え? 入れる順番? 何それ。
火をつける。
まだ水は透明。
「そろそろかな」
蓋を開けてみる。
よし食べ頃。
いつもならビール飲みつつ食べるのだが、今日は正直そんな余裕がない。
初っ端からうどんを入れてしまい、ゴマダレでがっつり食べる。
「はぁー……ごちそうさまでした。……薬飲んで寝よ」
挿絵を縦にする方法わからず仕舞い。
今回は透明→白を載せたかっただけなので、具は特に入ってないっす。湯豆腐だし。