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星よ帝国を守り給え





 第2回政務院特別議会が開かれ、その一週間後に第3回政務院特別議会が開かれたが、そこでも決定的な事は何も決まらなかった。そしてまた二週間後に第4回政務院特別議会が開かれようとしている。議会は進まず、されど届く報告は暗いばかり。例えばどこどこの領地から食糧要請だとか、致命的なものであれば帝国の小麦生産の七割を担っていたユーゴ地域の小麦が半分くらい火山灰で死んだとか。

 もう、待ってられない。


 「個人的にお話したいと、そう手紙にあったのでてっきり私は口説かれているのかと思いましたよ」


 城の貴賓室でブルースは冗談混じりに言ってるが、今から私の言う事を聞いたら彼はどう思うんだろうか。驚いて手に持っているコップを落としてしまうのか、それともいつもみたいに不敵な笑みを浮かべるのか。


 「まさか。確かに貴方のような細い男性を好む女性も今しょうが、私は断然ガッチリした方が好きですよ」


 「そうですか。それで、口説きに来たという訳では無いのなら、貴方は一体何用で私をここに呼び付けたんです?」


 深く座り、一度天井を眺めて目を瞑る。

 私の選択は正しいのだろうか。これを言ってしまったらもう戻れない。だから賽を投げてしまう前にこの選択の正しさを確認しなければならないけれど……もういいだろう。散々悩んだんだ。このまま緩慢な議会を続けていても首が挿げ替えられるだけならば、いっそ……


 「全ての議会を停止する」


 これが私の結論である。纏まらない議会で長期的かつ決定的な政策を打ち出せないのなら、いっそ議会を停止して皇帝大権による独裁で超法規的かつ迅速な政策をする。とても正しいとは思えないけれど、それでもこのまま何もせず人が飢えて国が荒れていくよりかはマシだ。

 何より何もしなければ私の首が飛ぶし、それなら何かをして全てを完璧にこなして私もこの国の人も幸せになれる方法を模索する。


 「それには軍の力が必要なんです。協力していただけませんか?」


 彼はただ、私を見ていた。コップを持つ手が震える事はなく、驚く訳でもなく、ただ仏頂面で見ていた。


 「私は協力しますよ」


 いつもと変わらぬ抑揚。彼は挨拶をするように、どうでもいい日常の会話をするように、議会の停止という恐ろしい選択に対して賛成と返したのだ。


 「私は、と言いますと?」


 「私は鷹派の首魁であり軍の殆どが私の支持者ではありますが、それでも軍の全てを統治できるている訳では無い」


 「つまり……鳩派の軍人をどうにかしてってこと?」


 「はい、そうなります。ですから3明日の戦勝記念パーティ、私と貴方でイタズラしませんか?」


 子供のような喋り口だが、意味は鳩派の軍人を殺してしまおうって話だ。

 人が死ぬ、しかも今回は私の手で直接。でも言ってしまった以上もう、後戻りはできない。


 「いいよ、そうしようか」


 あぁ、私は本当に皇帝なんだな、ノストルムの。絶大な権力を行使して神っぽい事をしている。


 「流石は我らの皇帝です。貴方は常に正しい」


 彼との密約を終えた後、私は寝室に帰る。そしてまた弱いままの私に戻るんだ。でも、もう弱いままの私じゃいられない。だから……


 「マクリヌス、お願いがあるの」


 自室にて、私の中の私が眠ってしまう前に私は彼の胸板の上であるお願いをした。


 「お前は世界に必要無いって言って。そしたら私は、弱いだけの私は消えてくれるから」


 私は弱い私を完全に消し去る。この世界に必要が無い私の存在を。そうでなければどこかで躊躇って、全てを駄目にしてしまうかもしれない。


 「……俺は奴隷です、そんな俺に貴方の全てを捨てて世界に奉仕しろって言わせるんですか」


 「もうそれ所じゃないの。わかるでしょ、前話してくれた女みたいな顔の友達、それと同じで、彼が妹の為に権利を売ったみたいに私も帝国の為に全てを投げ捨てないとならないの」


 「だからと言って、俺にその役回りをやらせるんですか?俺に貴方の本心の部分を封じ込めた罪を背負えって言うんです?」


 「そうだよ、貴方は……貴方は私の奴隷だ。だから私は主人として命令してるんだ。私に不要だって言って」


 結局、最後の最後で私は彼に奴隷と言ってしまった。奴隷なんて嫌だなんて言って奴隷に生活を支えられて、最後には奴隷に命令する、全く滑稽だよ。


 「……貴方の存在は、この世界にとって不要です。でも、いつか貴方の本心を解放してくれる人が来ると願っています」


 「ありがとう、マクリヌス」


 私は眠った。多分、二度と目覚める事は無いだろう。だから後は頼むよ、ヘリオース。

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