大いなる帝国、大いなる礎石、永遠の繁栄
大いなる帝国、大いなる礎石、そして永遠の繁栄?
「いや、やっぱ特に言いたいことはないですね。何も思いつきませんでした」
何もない?貴方は負けたんだぞ。子供だと舐めていた相手に。にも関わらず何もない?
「何もないって、どういう事なのさ。貴方から見て私という存在は未だに15歳の子供なの?」
彼はいつものように窓の側に立った。
「いえ、そうではありません。貴方は私と共に賽を投げてそして勝利し、私すらも欺きました。これを子供というのは難しいでしょう」
なればこそ、貴方は何かを言うべきだ。例えばそう、独裁官制度が廃止されたとして独裁官という前例はある、よってそれが必要になった時に独裁官制度は復活するから、ハンニヴァルカを利用してそれが必要になるを作ってやるとか、そう言ってくると思っていた。なのに何だ、貴方は負けたけど別に何だって態度と顔をしている。
「だからこそ、思ってしまったんです。私は貴方の2倍は生きているのに、私自身はまだ何もしていない。アレクサンドル大王が世界征服をした歳には私もと思って、でもそこから何年も経っているのに、私はまだ何もできていない」
その声はいつもと違う、どこか寂しいものだった。だからと言って私は彼に同情しない。敗者は敗者だし、何よりだ。確かに偉業を成す事は素晴らしいし、それによって歴史に名を刻まれるというのは私も望む所だけれど、かと言って偉業を成せず歴史にも残らない事が不幸という訳ではないしね。
「でも貴方はどうですか、弱冠14歳で皇帝となり、15歳で第二次奴隷戦争を終結させガイウス魔法法をヘリオース魔法法と改めた。まるまる貴方1ページとは言わずとも、小さく年表で貴方の名前は教科書に記されるでしょう」
それで十分な筈がない。だってそんな功績じゃ初代皇帝尊厳王オクタウィアヌスに並べないし、何よりこんな小さな功績じゃ私の原因で損なわれた人、ユリアンも奴隷も全ての人の損害を埋めるものにはならないでしょ。
「だから思ったんです、私は。私はアレクサンドル大王ではなく星ガモフになってみるってのもいいかもしれません」
星ガモフとはア=ステラの筆頭使徒だ。つまり彼は私の右腕として歴史に刻まれてもいいと言った訳ではあるけれど、本当にそうだろうか?だってそれならこうもっと、それこそアレクサンドル大王の腹心であったヘタイロイ将軍とかあったでしょ。
「星ガモフって表現した意味、わかってる?」
彼は私の目の前に立ち、そして微笑んだ。こういう時はいつもそうだ、絶対に悪い事を考えている。
「救世主ア=ステラは人を癒しパンを配り、そして最後に星の海へと消え神となった」
「何が言いたいの?」
「私のパンをほんの少しだけ甘くする魔法と貴方の万能の治癒魔法があれば我々は救世主を演じる事ができる」
神になれと、そう言いたいのか、私に。
「……考えておくよラスアジィンニコフ。今日はもう寝ちゃおうと思ってるから」
「えぇ、前向きにご検討下さい。聡明なるヘリオース帝」
執務室を去り、私は私の部屋の前で立ち尽くす。部屋の中に入ってしまうとヘリオースである私から弱くて身勝手な私の中の私に変わってしまうから、ここでこうやってさっきの事を考えるしかないんだ。
にしても神になるか。確かにそれは魅力的かもしれない。だって歴史的偉業よりも信仰の方が深く残りよく知られる。だから救世主を演じて神になるっていうのは私も望む所かも。まぁ、今考えても答えは出せないな。また今度に考えようか。
「あの、お入りにならないんです?」
扉の前で考え込んで守衛さんを困らしちゃったみたいだ。
「あ、ごめんね。入るよ」
その後私は少し泣いてから寝た。マクリヌスにあやして貰って。
翌日、朝起きた時、部屋の外がやけにうるさいなと思った。なのですぐに外に出て様子を見に行った。そしたら何という事だろうか、窓が黒く染まっていたのである。
「黒い、雨?」
窓を撃つ水滴は何故か黒かった。墨のようというよりも、何というか、泥水のようだ。
「あぁ、陛下。昨日の夜中からこんな具合なんですよ。このせいで市中は大騒ぎですよ」
守衛さんの報告。別に黒い雨が降ろうが赤い雨が降ろうが私の仕事は変わらないけれど、これでなんか黒い雨が降るのは皇帝が神に祝福されていないからだなんて噂流れたな嫌だな。一応原因でも探っておこうか一日くらいならどうせ忘れると思うけどね、みんな。
「そう、調べておくよ。んじゃ私は仕事行くから」
執務室に向かうまでの道のりの中、私は黒い雨について考える。
雨って地上とか海とかの水蒸気が上空で冷やされて雲になって、その雲の中で水滴とかになって地上に降ってくるんだよね。なら雨が黒くなる状況ってどうやってできるんだろう?だって雨が黒くなる状況ってこのプロセスの中で塵とかが混ざった訳だよね。
ん……上空に塵、塵が上空に巻き上げられる……
そんな状況があり得るのは……これは、もしかしたらまずいかもしれない。
「矢先に、こんな……」
軍を全方向に出さないと、状況の確認をさせるんだ。だって塵が上空に巻き上げられて黒い雨が降る状況なんて火山噴火くらいしか無い。この火山噴火の規模がとてつもない規模だったら例を見ない大不作が訪れるかもしれない。
西暦345年、ポペイウス=エンデラ山の破局噴火である。
これで第一部終わりです!評価お願いします!
あとこれはポンペイ山の噴火っすね




