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世界の管理者  作者: suiren
2/2

世界の設計者は管理者を決めたがっている

「〈管理者〉にならないかい?」

確かに、自称〈設計者〉はそう言った。

俺は死ぬ直前に夢でも見ているか。

「俺は死んだのか?」

頭の中に声が響く。


「いや、生命活動は停止していない。意識だけを切り離しているからな。

 もしかして状況が理解出来ていないのか…」


いきなり周りが白い空間になって頭の中から声がしている。

誰でも理解することなんか出来ないだろう。

頭の中で小さな声でぶつぶつと「面倒くさい」を連呼している〈設計者〉。


「分かった…近いうちに纏めて説明するから。じゃあまた今度。」


気が付いた時、俺は帰り道で自転車に乗って立ち止まっている。

とりあえず、自転車を漕ぎだし家に帰ることにした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


家に帰り、夕食を食べ、お風呂に入ってテレビを見ながら時間をつぶしていた時、

ふと先ほどの事を思い出した。

帰り道の途中、何故か自転車に乗って立ち止まっていた。

「疲れてんのかな…」

つい言葉に出てしまった。きっと疲れているのだろう。

早めに寝ようと思い、部屋の電気を消し、布団に入り瞼を閉じる。

なんてことのない行動だが、少しして一つだけ違和感を感じた。


視界が白い。

瞼を閉じれば視界が暗くなる。

でも今は、まるで光源が近くにあるかのように、やたらと白い。

電気は消したはずだ。何かがおかしい。


そう思い、目を開けたとき目の前に広がったのは、

白い空間に白い円形の大きな机、白い椅子、6人が机を囲むように立っている。


「おわっ」

変な声が出た。というか自分も立っている。何なんだこれは。


何がなんだか分からなくなって周りを見渡しす。

ほかの人も自分と同じ心境なのだろう。周りを見渡している。

そして明らかに日本人ではない子供が泣き出した。

英語は得意ではないけれど、何となくお母さんを呼んでいる気がした。


「あー、あー聞こえるかな。

 とりあえずこちらの世界に来てもらったけど、気分はどうだい?」

〈設計者〉の声が空間に響く。

その瞬間、俺を含めた7人の反応は様々だった。


子供と寄り添い一緒に泣き出す者。


ただ虚空を見つめる者。


携帯を取り出し誰かに連絡をしようとする者。


膝から崩れ落ちる者。


何かが成功したように歓喜の声を上げる者。


そして、俺は声を荒げていた。

「おい!〈設計者〉だか知らないが、ここから出せ!」

自分でもびっくりする程の声量だった。


「あーあ、これじゃ先が思いやられるな。

 というか予定外が1名居るし、こんな子供いれるつもりなかったし…

 仕方ない。とりあえず精神操作プログラムを起動しようかな。」


皆の泣き声や罵声といった感情剥き出しの行動が急に止まった。もちろん自分のも。

今まで何に怒っていたのかそれすら分からなくなるくらい。


そして皆が何かに導かれるように席に着く。


「これで意思疎通が出来るぐらいにはなったのかな。

 いやダメか、生活圏で使う言語違うんだったかな…

 翻訳機能プログラムも起動しよう。」


先ほどまで日本語以外の言語も聞こえていた気がしたが、今はすべて日本語に聞こえてきた。


「喋ってんの誰?」

赤髪のTシャツ姿の女がぶっきらぼうな口調で言う。


「じゃあ僕の自己紹介をしようかな。僕の名前は*****。

 君たちが住む宇宙や星、全てを作った〈設計者〉だ。」


宇宙を作った設計者?てことは所謂神様か?俺は神様と喋ってるのか?

疑問が止まらないが、それ以上に気になることがある。

名前のところだけが聞こえない。

自分だけが聞こえないかと思っていたらスーツの男が聞き直した。


「あーそっか、人間の構造上僕の名前は発音出来ないし、聞き取ることも出来ないから

 名前のところだけ聞こえないのか…まあ名前なんてのはどうでもいいし〈設計者〉とでも呼んでくれ。」

〈設計者〉は淡々と説明を続ける。

「僕は〈設計者〉として、色々な宇宙を作っていた。

 超高温の物質だけの宇宙、惑星の引力が強すぎて常に隕石が降り注ぐ宇宙。

 とにかく色々な世界を作っては消して更に作っていた。

 そんな時、放置していた8361もの宇宙から面白い反応をしている星を見つけた。

 多くの生命体の中で1つの種のみが繁栄している〈地球〉という星を。」


「地球では、人間が地球を支配しているといっても過言ではない。意思の疎通を行い、領土を決めて各々が支配している。種別で領土を支配しているのは私の作った宇宙の中で幾つも存在しているが、星全体が一つの種で支配されている星はこの地球含めて6個しか存在していない…あ、今増えたっぽいなぁ!7個になったよ!」


増えたから喜んだのか声色が淡々としていたのから変わっていた。



「話が逸れてしまったね。といったように地球のあるこの宇宙はとても貴重なサンプルなので常に観察していたい所なんだが…生憎と他の星も観察しなければならない上に私は〈設計者〉として宇宙を作り続けなければならない。だから〈管理者〉というシステムを導入したのさ。〈管理者〉が僕に報告してくれれば見続ける必要は無くなるからね。」


先ほど歓喜の声を上げていた眼鏡を掛けた小太りの青年が質問があるようで手を上げて口を開く。


「〈管理者〉ってのは何するんだ?ゲームや漫画では必ずメリットデメリットがあるって相場が決まってるもんだろ?それ次第じゃ〈管理者〉になっても良いぜ!漫画の世界みたいでサイコーだ!」


「本当かい!?それは良かった事は急を要するからね。〈げえむ〉や〈まんが〉については報告書でしか知らないけどこれで〈管理者〉になってくれるなら消さなくて良かった!」

「じゃあ〈管理者〉について説明すると、簡単に言えば君たちの世界で言うところの神様だね。今居るこの部屋で作業してもらうが、全ての生物がいつ生まれて、何をして、いつ死ぬのかを決めたり、天候制地殻変動の制御、隕石の衝突、不具合が起きたときの修正etc…全てを決めてもらう。そして起こった結果を1年間単位で報告書にして提出してもらう。OKならそのまま継続してもらって駄目な場合は報告書の再提出。それでも駄目なら1年前からやり直しだ。」

「で、メリットデメリットだがメリットは今と過去の全てを識る事が出来る。文字通り全てだ。何時誰がどんな時何を考えていたか、この時地球では何が起きたかその全てを識る事が出来る。」


俺も含め皆が生唾を飲む…そりゃそうだ。これが真実なら、〈管理者〉になれば歴史的事件の真実が分かるんだろ?あとは例えば好きな人が知れたり、例えば例えばその好きな人と恋人にだってなれる。最高じゃないか。


「デメリットは、現実の肉体が無くなり精神だけの存在となって、生きていたという歴史が自動的に消える。そもそも存在しなかったという事になる。精神だけの存在…君たちの世界で言うところの幽霊かな。現実には干渉出来ないし、現実世界の人間からも認識されなくなる。」

「そうだそうだ。これはメリットかデメリットか分からないが…というか僕にとってはメリットだと思うのだが。」


「一度〈管理者〉になったら永遠に〈管理者〉だ。死ぬことは無いし辞める事も原則出来ない。」

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