~プロローグ~
学校の帰り道。
所属する美術部の買い出しで画材屋に来ていた時のことだ。
-「私は〈管理者〉を放棄します。」-
感情のない無機質な声が確かに聞こえた。
しかし、ここは画材屋だ。
管理者がどうこうの話をする場所ではない。
不思議に思い、一緒に来ていた部活仲間に確認を取る。
「白鳥、なんか言ったか?」
「ん?なんのこと?」
随分と気の抜けた声が返ってきた。
「いや、さっきの管理者を放棄するだ何とか言ってたやつ。」
「そんなこと誰も言ってないぞ。大丈夫か?」
絵を書いているとき以外、常に間抜け面を晒している能天気な男に
心配をされた。
果てしなく心外だが、自分の聞き間違いだと思った。
「いや…何でもない。とりあえず欲しいものは手に入ったから帰るか。」
あいよー、という気の抜けた返事と共に画材屋を去った。
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白鳥とは家の方向が微妙に違うため、
いつもの十字路で別れを告げ、自宅へ向かっている最中、
立ち眩みのように急に目の前が白く染まった。
ふらつく自転車を制御しようとハンドルを握りしめた時、異変に気が付く。
ハンドルがない。というか地面?に棒立ち状態だ。
買った画材も自転車無くなっており、真っ白い空間に棒立ちの自分だけ。
もしかして死んだのではとパニックになりかけた時、
かすかに音が聞こえてきた。
そして最初に大きく聞こえたのは、
黒板を爪で引っ掻いたような耳障りな音だった。
しかし徐々に音の正体が声であった事を知る。
「あー…聞…え…か…」
「聞こ…るか…」
「あー、あー、聞こえるかー」
どこから声が出ているかわからない、
頭の中に直接話しかけられてるような声に返事をする。
「えっと…誰です?」
「はぁー…ようやく意思疎通がとれるようになったか。
やれやれ…人間というのは不便な生物だな。
しかし、普段使わない装置を使うというのは物凄く疲労感を覚える。
だから僕はこんな事したくなかったんだ。」
気怠そうな声は間を置くことなく言葉を続けた。
「僕の事は、そうだな…〈設計者〉とでも呼んでくれ。
個体名:相島 健斗君かな。
君さ、〈管理者〉にならないかい?現在募集中なんだ。」
意味不明な状況と意味不明な言葉。
生まれて始めて、開いた口が塞がらない状況を体感した。
~第1話に続く~
≪登場人物≫
・相島 健斗:神奈川県立翔美高等学校2年生 美術部所属
・白鳥:翔美高校2年生 美術部所属 相島の友人
・〈管理者〉
・〈設計者〉




