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死んでも守るとは言ったが、死んでからも護ると言っていない!  作者: 那須 儒一


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第一話 死んでも守る?

「真理《まり》は死んでも、俺が守るよ」


幼い彼女の茶色い瞳に、

俺の情けない顔が映っていた。


一度は言ってみたい台詞ランキング第二十三位は堅いであろう言葉を――俺は六歳で口にした。


今思えば、この時が人生のピークだったのかもしれない。


†


十年後――その言葉を捧げた女性に、

俺はパシられていた。


「ちょっと、拓也《たくや》!

早く、シュークリームを買ってきてよ!

もちろん、あんたの奢りでね」


黒かった真理の髪は金髪に染まり、耳にはイヤリング――化粧だってケバくなった。


「うん……わかったよ」


「まったく、うじうじして。

ホントにキモい!」


金髪ギャルになった彼女はクラスのカースト上位のグループに混ざって、俺を虐めるようになった。


いつから俺の人生は、初恋の人にこき使われるだけのものに成り下がった?


「真理、相変わらず。

境《さかい》には容赦ないな。

あんなミジンコほっとけばいいのに」


「むしろ、友達のいないあいつに構ってやってんだから、感謝してほしいぐらいよ」


都合の良いことばかり、そんなこと誰も頼んじゃいない。


†


ぺしゃんこになった小銭入れの中身を確認する。


はぁ……今月もお小遣いがすっからかんだ。


「拓也ー!」


帰り道、信号を渡った先でため息をついていると、

背後から真理の声が響く。


げっ……!

これ以上、こいつと関わりたくない。


足早にその場を立ち去ろうとした。

でも、なんだか嫌な予感がして振り向いた。


この時、振り返らなければ――

真理なんて見捨てれば、俺の人生の結末は違ったのかもしれない。


「真理っ、危ないっ!」


信号を無視してトラックが猛スピードで迫ってくる。それは漫画のコマ送りのように、鮮明でゆっくりに見えた。


気づけば真理へ向けて手を伸ばしていた。


残響――急ブレーキの音が耳の奥にこびりついて離れなかった。


†


近年、トラックに跳ねられたら、天国よりも異世界転生をする確率が高いという死生観が根付いていた。


そして、俺はそのどちらでもない場所で目が覚めた。


「あれ……ここ、教室?」


いつもの席、目の前にはかすかに透けている真理の夏服――変わらない景色がそこにはあった。


何となく、いつもよりクラスが静かだ。


うっ……視界にノイズが走る。


†


担任の、白爺《しらじい》がしゃがれ声で言葉を絞り出した。


「昨日、境拓也くんが……交通事故で……亡くなりました」


クラス内は静寂に包まれていた。


……さすがのクラスのカースト上位共も、

ここで茶化すほど非常識じゃなかったか。


いや、そもそも俺に興味なんてなかったんだろう。


……って、えっ!?

俺……死んだの?


真理の背中に触れようと手を伸ばした。


嘘だ……俺の手は彼女の体をあっさりとすり抜けた。


叫んでも、騒いでも誰一人見向きもしない。


死後の世界なんか信じていなかった。

どれだけ拒絶しても、この状況がすべて肯定していた。


ここは天国でも地獄でもない。

……もしかして、俺って浮遊霊かよ。


未練がないかと言われれば嘘になるが、

俺、このままどうなるんだ?


死ぬと、すべてから解放されるなんて嘘じゃないか。


はぁ……とりあえず学校にいても、憂鬱になるだけだ。母さんの枕元にでも立ってやるか……


教室を出ようと、生前の癖で扉に手をかけようとした。


へぶっ!?


突然、見えない壁に阻まれた。


なんだ……これ以上先に行けない。


マジかよ。

もしかして、教室に囚われた地縛霊?


最悪だ。

見たくもないこいつらの顔を毎日眺めないといけないのかよ。


しかも、夜になったら、一人じゃん。

夜の学校なんて怖すぎる。


幽霊の俺にできること、できないことを確認していたら、あっという間に放課後になった。


「あれ、真理、もう帰んの?」


「あっ、うん……ちょっと用事を思い出して」


彼女は軽く手を振ると教室から出て行った。


くそ、こんなことなら文句の一つでも言ってやるんだった。


って、えっ!


うぉぉぉぉ!


突然、見えない力に引っ張られていく。


待て待て待て!


真理に引きずられるように、俺は彼女から離れることができなかった。


もしかして……俺、真理の守護霊になった?

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