苦難の道だとしてもその2
「あんたが一番危ないでしょうが」
お兄ちゃんの言葉に恵令奈が呆れたように言い放った。
それを聞いて彼は苦笑いを浮かべる。
「大丈夫さ、多分……」
不安そうな言い分だった。
この人は現実的にわかっているのだ。
自分は合格できないと、そこに入学できる可能性が少しもないという事を。
「呆れた」
彩花の呆れたため息にお兄ちゃんは苦笑いを浮かべている。
「まぁいいわ、ボクがちゃんと入学できるように鍛えてあげるよ」
「……あぁ、よろしく頼むよ」
彼女の言葉で苦笑いを浮かべ返すお兄ちゃん。
それはそうだろう。
彼女の方が上だから、二人の中で彼の方が圧倒的に弱い。
彼女一人でもう任務をこなせるが、彼はまだ未熟で彩花と一緒に行動を共にすることになっている。
とはいえ、彼もそれなりに素質はある。
一人で討伐程度は行える程度には成長してる。
正直、未熟というわけではない、彩花と比べられているせいもあって彼もそれほど弱くはないのだ。
私は知っている。
彼の事が心配で、彩花が守る為に一緒に居る事を。
彼女は恐らくだけど、お兄ちゃんの事が好きだろう。
私に恋心はわからないが、彼の事を少なくとも悪くは思ってないだろう。
本人は気づいていないだろうけどね。
「それじゃ、もう一回やろっか」
その言葉にお兄ちゃんは頬を引き攣らせる。
今まで一度だって、お兄ちゃんは彩花に勝てたことがないのだ。
毎度毎度、打ち合っていればそうなるのもそれはそうといえるだろう。
仕方ないなぁ~。
「ねぇ彩花、私ともやろうよ」
私の言葉に彩花は驚いたようにこちらを見つめてくる。
それはそうだ、私の見た目は年端も行かない子供だ。
彼女等より年下で非力そうな女の子だ。
自身に満ち溢れている彼女にとっては、私など相手にならないと思っているのだろう。
「大丈夫だよ、私もお父さんから剣を学んでるもん。 彩花よりかは強いかもよ?」
私の言葉に、彩花は好戦的な笑みを浮かべる。
彼女は挑発に乗りやすい、少しでも何かあればすぐに乗ってくる。
お兄ちゃんがよく止めてくれているようだけど、一人だと騙されやすいのだ。
だから買い物とか重要な事はお兄ちゃんを通すように彼女は言われているのだ。
「あ、ならこれ使っていい?」
私は在庫の木剣の中でいい強度を誇っている。
これを作った人はきっと、才能があるのだろう。
「じゃあ、ボクはこれにしようかな」
そう言って彩花は僕の次に強度の高い剣を抜く。
そして私と彩花は訓練場の真ん中に向かい剣を構える。
「ふーん」
彼女は真っ直ぐ剣を向け、こちらに構える。
万能型の剣術、流れるように対応し女性がよく使う流派
名を清流、一般的な流派だ。
じゃあ、私はこの流派を使おうかな。
私は力を抜き、地面に触れない程度に剣を下げる。
「へぇ、そっちかぁ」
彼女は嬉しそうにつぶやく。
彼女は流派の型を調べ、自力で昇華していたのだから。
全ての流派の初級を得ていると言っても過言ではないのだから。
天才、彼女の剣の才能は天が二つ目に与えたものといえるだろう。
天才と努力が織りなす最強の代物だ。
そうして私は彼女と対峙するのだった。




