第29話
side:エルディン
今日は出発の日。なるべく日が出ている時間に動きたいので、日の出とともに森に入る。4人の立ち位置は、剣士の俺とレオナードが前と後ろで、弓使いのユランと探索役のエルネをはさむ。まあ、真ん中の2人もある程度の近接戦闘はできるが。
「北北東、フォレストウルフ。」
「了解。進路変更する。」
エルネの探索により俺が進む方向を決める。いつも森に入っているから方向感覚にはそれなりに自信があるが、そこまで遠くに進んだことはない。それでと確信をもって進めるのは地図と、「コンパス」があるおかげだ。
地図は、貴重なものではあるがよく見るものだ。今持っているこれはユイがアーグレム王国によるオークションで競り落としたものらしく、歩いたところが埋まるという謎仕様だが。
そしてコンパス。ユイいわく、
「どこにいても北を指す…と思う。」
らしい。なんだ思うって。
だが、少し試した結果とても便利だと分かった。常に北を指すということは、例えば、ある場所から真北に向かって直進し、そこから真南に戻れば元いた場所に戻れる。地図は中途半端に埋まった状態だが、この2つがあれば迷う可能性はほぼない。やはり今気をつけるべきは…
「西からホワイトウルフ。このまま歩くと鉢合わせる。」
「了解。じゃあ、ここで小休止。」
明らかに数が増えている魔物たちだろう。5,6頭、それもこっちが先に見つけた状態ならそこまで苦労しないが、戦ってる間に10頭20頭、それも不意打ちで乱入されると軽く死ねる。
「どうしますかねぇ。」
「どうするかなぁ。」
主戦力4人が調査に向かった。それすなわち、村の戦力が減ったということ。このタイミングで魔物の群れが来ると結構まずい。この村の人口は100人くらいで、50軒くらいの家がそこそこの間隔で並んでいる感じ。他にも戦える人はいるが、魔物の群れには勝てない。というかそもそも4人が残っていても数によっては押し切られるらしい。だからこそ、調査に向かったんだもんね。
ってことで、いま村長のハルドさんとその他数人の強そうな人たちが防衛について話し合ってる。…私の家で。
リュミエラ達ヴァンパイアは、戦い慣れた種族だったから地球の武器にすぐ対応できた。だが、普通の人間はそうはいかない。いきなり銃を握らせても事故る未来しか見えない。私も暇な時練習しているが当然教官などいないので、まともに使えるようになるのにどんだけかかるの?って感じだ。
地球の技術で何でもできるわけではない、ということを今感じている。それでもいくつか役立ちそうなものはあるので、できる限りのことはするが。
「んー、どうにかして自分達で解決したいですよね。」
「そうだな。冒険者たちには頼りたくない。」
私も、冒険者を雇いたくないからそれはありがたい。理由はもちろんろん、私がここにいるってことを広められたくないから。そして村の人達には、冒険者を信用できない理由があった。
数年前、ハルドさんの父親である先代の村長が、この村を狙った魔物に対抗するため冒険者を雇ったことがあるらしい。だが、その冒険者たちは魔物を前に逃げ出してしまった。その混乱の中で村長も命を落とし、村は滅びかけた。最終的には偶然通りがかった人に助けられなんとか村は生き残ったが、冒険者への不信が生まれた。
フェルカナのお父さんから聞いた話だ。彼はこうも言っていた。
「金で雇ったやつを信用するな」と。
それは、信じれなるのも当たり前だ。全員がそんなんじゃないというのは分かっていても、どうしても疑い目で見てしまうだろう。
それを除いても、人を雇うという方法はとりづらい。魔物がいつ攻めてくる、とかではなく解決するまでずっと脅威に曝されているので、長期間雇う必要が出てくるからだ。
あー、リュミエラなら…だめだ、あいつヴァンパイアだ。あれ、でも村を救った人ってリュミエラだよな。でもお父さんは「偶然通りがかった人」って言ってたし正体を明かしてないのかな?
状況がわからんから村の人には聞けない。それにまずリュミエラの居場所がわからん。




