ショルの固有スキル 2
私はオババ様が戻って来るまでに、この子供のようなショルさんの魔力を回復させて、またやる気を出してもらわないといけないと、考えを巡らせた。
そうしないと、この人「面倒くさいから」とまた長い道を歩いてここまで来てくれる保証が無い。
それまでに、伯父さんの長男のジョエル兄様が苦しんでしまう。
私は貧民街からお母さんと私を連れ出してくれた伯父さんを忘れてないよ。
今度は私が助けるからね。
気合いをグッと入れたチヤは、高い位置にあるショルさんの顔を見上げた。
「ショルさん、今から魔力回復ポーションを飲んでください」
私の言葉だけでショルさんが言うことを聞いてくれるとは思わない。
案の定、ショルさんは呆れたように言った。
「嫌だよ。ただでさえ魔力が無いのに、回復させてからまた魔力を使えだって? そんなの疲れるだけじゃん。
僕はあの果実分の働きはしたと思うな。
半分だけとは言え、壊死しそうだった腰から下を治したんだよ? 短かった寿命も長くなったはずさ」
自分の主張は当たり前だと言わんばかりに報酬を寄越せと言ってくる。
『治る』と希望を見せてから放り出すのは、かなり残酷だよ? ショルさん。
ほら、ジョエル兄様より、伯父さんとおじいちゃんの方がショックを受けてるじゃないか。
私はとびっきりの提案をする。
「魔力回復ポーションを飲んでくれたら、ここには無い、いえ、この世界には無い食べ物や飲み物を用意しますよ?」
これには、ショルさんも驚いたようだ。
ついでに、伯父さんもおじいちゃんも驚いているけど。
あ、ジョエル兄様は、どちらかといえば下半身を隠すのを頑張っている。
思春期だものね?
「それは……嘘なんじゃないかい?」
ショルさんは顔に期待を滲ませながらも、否定の言葉を口にする。
それを見た私は「ふふふん!」と小さな胸を張る。
自信満々にね!
「それは、魔力回復ポーションを飲んで、ご自身で確認してみればいいのでは?」
「まあ、いいよ。魔力回復ポーションを用意して。でないと僕は飲まないからね。
……今の話が嘘だった時は……わかってるね?」
私はここ最近、買いだめしていたポーションの中から1番効果の高い魔力回復ポーションを取り出して、蓋を開けた状態でショルさんに渡す。
「ふ〜ん。最高級魔力回復ポーションじゃなくていいんだ。僕は別にこれでいいけどね」
くっ!本当は効果が1番高いポーションを買いたかったんだよ!
でも、仕方ないんだ!
お金が無いから!
中級魔力回復ポーションで許してくれ!
ショルさんは少し手の中でポーションを弄んだ後にくいっと全部飲み干した。
そして、面白そうに私を見て来る。
「さあ、魔力回復ポーションを飲んだよ?
この世界に無い食べ物は、どんな物かな?」
ふふん。
面白がっていられるのも今のうちさ!
「食事、おやつ、飲み物、甘いの、辛いの、酸っぱいの、ゲテモノ、どれが欲しいですか?」
ショルさんが少し驚いた後に考えてから「甘いのがいいかな」と言ったので、私は部屋にあった椅子を持ってショルさんのところへ行き、座らせてから自信満々にショコリキサー(甘い)を通販で購入して手に持った。
2つ、ね?
「……ふ〜ん。確かに初めて見るけど、この世界の物じゃないの? 君が持っているだけで、この世界にある物だろう?」
この野郎、屁理屈をぶつけてきたな?
本当にショルさんは子供みたいだ。
「これが私の固有スキルです。屁理屈をこねる前に食べるがよろし!」
私は椅子に座らせたショルさんに冷たいショコリキサーを渡して、食べ方の分からないショルさんに見せびらかすように、もう片方のショコリキサーを食べ始めた。
「んーっ! おーいしー!」
ショルさんはショコリキサーを観察したあとに、チョコのかかったクリームを口に入れて、ビビッとした。
「え? なにこれ? おいしい。はじめてたべる。え? なんで苦いのにあまいの? え? ほんとうにこのせかいのたべものじゃないの?」
なんだか喋り方が子供みたいになって驚いている。
そして、ショコリキサーを堪能させて時間稼ぎをするはずが、物凄い早さで食べるショルさんに、私は次の策を考えざるをえない。
夢中になって高カロリーのショコリキサーを早食いしたショルさんは、初対面の眠そうだった顔が嘘みたいに顔をキラキラさせていた。
うっ! 木族の美形の顔じゃなくて良かった!
おかわりをねだる子供のような顔に負けるところだった!
「ねえ! 君のスキルは凄いね! きっと知らない食べ物の種がたくさんあるんだろう? 今食べた甘苦い物の種を売ってくれよ!」
おねだりに、私は、負けない!
私は小さい体で、チッチッチッ! と手を振る。
「私がショルさんに求めるのはお金じゃありません! 先天性障害を持つ人を治すのを対価に求めます!」
ショルさんは「え〜」と、拗ねたような顔をしたが、私は追撃する!
「今日あげる予定の果物も異界の物です! この世界での栽培に成功した人はいません! そして、その果物の『桃』は、1種類だけではありません! 今なら『桃の育て方』の本をお付けします!」
ショルさんは拗ねた顔から一転して、また期待するようなキラキラとした目で私を見つめてきた。
「異界の本です。言語理解を持つ固有スキルの人は居ますか?」
ショルさんは「うんうんいるよ」と期待満天です!
私はパパパッと通販で検索して、他の果物の育て方も一緒になっている本を購入した。
だって、桃だけを育てる本が売って無かったんだもん。
……今から、嫌な予感しかしません。




