下半身付随の伯父さんの長男
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そんなに離れていない場所の1階にある部屋に着いて、部屋の前に立っていた騎士が扉を開けてくれた。
おじいちゃんは騎士にねぎらいの言葉をかけてから中に入ると、まず思ったのが「床面積が広いな」だった。
余計な物を置いていない部屋のようだ。
日当たりも良く、部屋から続き部屋になっている隣の部屋に入ったが、扉が無いのが印象的だった。
すると、意外にも小さいベッドに伯父さんの面影のある少年がクッションに埋もれて本を読んでいたが、おじいちゃん達の足音が聞こえていたようで、私達とバッチリと目が合った。
すると、伯父さんが前に出て「ジョエル、体調は大丈夫か?」と声をかけると、ジョエル少年は「お父様、お帰りなさい。体調は問題ないよ」と、穏やかな優しい声で答えた。
なんだか、ジョエル少年が下半身付随なのを忘れそうな、ほのぼのとした空気だった。
そして、おじいちゃんとおばあちゃんがジョエル少年に挨拶した後に、今だにおじいちゃんに抱っこされていた私にジョエル少年の目が向いた。
そして、何故だかキラキラした目で見られた。
「もしかして! その子は、オババ様の親戚ですか!?」
私の髪色を見て言っているのなら、オババ様から何度か診察を受けていたのだろうことが伺える。
おじいちゃんが少し困った顔をしながら「まあ、そう、なるかな?」と、曖昧に濁した後に、お母さんと私をジョエル少年に紹介してくれた。
ジョエル少年は私を見て「お兄ちゃんって呼んでね」と、結構良い空気の中で言ってくれた。
なんだか、善意100%で出来ている子だなぁ、という印象を受けた。
自分の体に負い目を感じている様子では無い。
「ジョエルの体にさわりがあっていけないな。私達は部屋を出よう。ジョシュアはまだいるか?」
「ああ、ジョエルに土産話でもするさ」
伯父さんのジョエル少年を見る目が優しい。
溺愛、してるんだろうなぁ。
私達が部屋を出るまで手を振ってくれたジョエル少年に、私もおじいちゃんの肩から顔を出して手を振った。
痛々しくは無かったけど、ベッド生活だ。
下半身付随って事は、どこまで壊死が進行しているのだろうか?
体の大きさからして、8、9歳くらいだから、きっと足のマッサージを毎日しているのだろう。
ジョエル兄様(お兄ちゃんとは呼べない雰囲気)に好感を持ったチヤは「やっぱり、治してあげたいなぁ」とオババ様の顔を思い浮かべた。
次はどこに向かっているのか知らないが、おじいちゃんに話しかける。
「おじいちゃん、おじいちゃん、オババ様に会いたいです」
「おお、そうだな。私達が領地に帰って来た報告をしないといけないな。
お前たちは、ゆっくりと旅の疲れを落としなさい。私はチヤとオババ様の部屋へ行ってくる」
一緒に歩いていた人の顔はよく見えなかったが、オババ様の部屋が『木族の里』と繋がっている部屋なのだろう。
おじいちゃんが声を潜めて、チヤに話しかけてきた。
「チヤちゃん、大事な話だからよく聞いてね。オババ様の部屋に入れるのは、部屋の鍵を持っている私だけだ。私が血族にオババ様の部屋の鍵を渡した時だけ他の血族も中に入れる。
今日、紹介したエリザベートと子供達はオババ様の部屋に入れないように厳重に警備しているが、木族のチヤちゃんは例外だ。
あとからオババ様の部屋の鍵を渡すから好きに出入りしたらいい。チヤちゃんはオババ様の木族だからね」
後ろからついて来ている使用人や警護の騎士に聞こえないくらいの声でおじいちゃんが耳元で話してくれた。
そうか、私が木族だからいつでも出入りしてもいいのか。
「王都の屋敷は?オババ様の部屋があるの?」
「ああ、あるとも。領地も王都の屋敷も同じ鍵で開くからね。チヤちゃんはアイテムボックスにしまっておくんだよ」
「わかった」
私は神妙に返事をした。
屋敷の奥へ奥へとおじいちゃんと一緒に進みながら、木族が見つからない為の措置なのだろうなぁ。
と、思いながらも、子供の足では気軽に行き来出来ない距離だな、と感じた。
だって、遠いんだもん。
宮殿、じゃない、豪邸なだけはある。
奥行きも広いようだが、中庭も何度か過ぎ去って、多分豪邸の真ん中ぐらいに来たと思う。
豪華な扉かと思っていたら、オババ様の部屋は意外なほど質素な扉で、蹴破れたら侵入できるんじゃない? と考えていたら、木族の力で頑丈に壊れないようになっているらしい。
わざわざ質素にしているのは『オババ様の部屋とバレない為』だとか。
老騎士達が数人で警備している中を進みながら「今度からはこの子、チヤが来たら通してやってほしい」と老騎士達に声をかけながら進んだ。
その、おじいちゃんの様子から、ここの警備をしている老騎士達は信頼されている、と感じた。
おじいちゃんが部屋の鍵を開ける時も、おじいちゃんの背後をがっしりと老騎士達がガードしながら鍵を開けていて、多分、オババ様や木族の秘密を密かに知る者達で警備についているんだと推測した。
中に入ると、小さな部屋の奥にもう一間あるようで、そこに入ると大きく綺麗な鏡が壁にかけられていた。
おじいちゃんが鏡に話しかける。
「オババ様、オババ様、領地に帰りました。今からは用事がある時は領地にお越しください。オババ様、オババ様ーー」
おじいちゃんが何度か鏡に呼びかけると、鏡からオババ様の声が聞こえた。
『聞こえてるよ。無事に帰って来れて何よりだ。他に用事はあるかい?』
おじいちゃんは驚かずに鏡に話しかける。
「チヤがオババ様に会いたいと申しております」
すると、にゅっ、と、オババ様が鏡の中から出て来た。
私は、まさか鏡からオババ様が出てくるとは思わずに「ひっ」と声を出してしまった。




