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ファンの理想

「昔さ、少しテレビの仕事をしてた事があってさ」


早川俊の口から語られるなど思っていなかった、単語が三つも出てきて私の心中は穏やかでは無かった。

ふわっとした風が早川俊の前髪をさらう。

長い睫毛の下の藍色の瞳が語る過去。

トクン、この人はあの頃と何も変わってない。

真っ直ぐに前だけを見て、真っ直ぐに自分を生きてる。

生まれながらのイケメン、大量生産のイケメン、努力型イケメン、時代のイケメン、などなど色々な言葉はあるけれど、

早川俊はそのどれも当てはまらない。

イケメンって近くに行く事に罪悪感を感じてしまう事あるのよね。

こんな私なんかが近くに行ってもいいのだろうか?

こんなにイケメンなのに一緒に並んでも罪悪感を感じさせない。

それは彼だからなしえる独特な空気感がそうさせるのだろう。


「あの世界にいるのが楽しくて楽しくて。いつもキラキラしているあの世界の中にまさか自分がいられるなんて夢でも見ている気持ちだった、毎日毎日こんな日が永遠に続くのかと思ってた、でも、あの世界って一瞬でも気を抜けば常に自分の変わりが用意されていて自分が自分じゃ無くなる気がしてきた」


どんな表情で何て相槌を打っていいのか分からなかった。

早川俊の曇った笑顔から語られる言葉の先には落胆しか感じられ無かったから。

私は知らない。

あんな燦々とした早川俊の笑顔の中にそんな暗い暗い感情があった事、できれば知りたく無かった。

早川俊には常に笑顔でいて欲しかった。

早川俊には常に明るい場所にいて欲しかった。

ワガママ?ファンなんてそんなモノじゃない?

理想だけを追い求めてその相手を追いかけてるんだから。

現実世界でうまくいかない事を直接会った事も無い相手に全部押し付けてどうにか夢を見させて貰おうとしてるのがファンなのじゃないのだろうか?


「あ…ごめん、変な事言って」


沈黙に耐えきれなかったのだろうか?また私の表情を見てこれ以上は話しても仕方ないと思ったのだろうか?早川俊は口早にそう言った。

言葉よりも色を亡くした切れ長の瞳が物語っていた。

きっとキミにこんな事話しても無駄だろう、だってキミはボクの事なんて全く知らないだろうし、たとえボクの存在を知っていたところでキミなんかがあの世界の事何一つ知らないだろうから。









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