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聖地巡礼

「確か、ここら辺だったよね?早川俊が転んで砂を握ったとこ…」


ある日の休日、鈴木さんからのランチのお誘いを受けそのまま早川俊が昔出ていたドラマの聖地巡礼に来ていた。

何の変哲も無い商店街の中にある小さな空き地、そして更に何の変哲も無い空き地の地面に膝を着き両手で砂を握りしめ空を仰ぐその姿は第三者から見たらさぞ異様だろう。

もう何年も前のドラマの聖地巡礼するのもファンとして当然の行動。

鈴木さんは早川俊のファンでは無い、特定の推しがいる訳でもない。

ドラマや映画を見るのが大好き過ぎて、自分もその中の1人になりたいと思ったのが今のエキストラ人生の始まりだったようだ。

そして、ヲタクの気持ちも否定しない心優しき人物だ。


「うん、うん。いい感じに撮れてる、撮れてる。ほらほら見てみて!」


当時の映画のスクショを見ながら、早川俊と全く同じ体勢での撮影。

うん、我ながらバッチシ。

この映画大好きだったなー。

早川俊が出てるからとかじゃなく、いや、まぁそこもあるけれど内容がすごく好きだった。

亡くなってしまった恋人が別の人の身体からだを借りて、またヒロインの前に現れて限られた時間を共に過ごす、ありきたりな内容だけどすごく好きだった。

ヒロインはまさかその人の中に彼がいるなんて知らないのに、これまたありきたりなんだけど惹かれていくのが本当に切なくて。

いずれ彼は天国へと昇っていかなければならないから。彼の方も複雑よね。

彼女の側にずっといたいのに。

また彼女と恋をしたいのに。

まだ新人の早川俊はそんな難しい役を難なくこなしてしまったのよね。それのおかげで注目度がグッと上がってしまって、小さなその事務所初のファンクラブができ、早川俊を見ない日は無いと言えるほどだった。


「早川俊に会いたいなー」


厳密に言えば、『早川俊』には毎日会っている。

私が会いたいのはあの時の輝いていた早川俊だ。

そんなのただ自分の理想を押し付けているだけだとは分かってる。

最近、最近なんだかそんな風に強く思うようになった。

早川俊が何故あの世界から立ち退いたのかなんて考えた事も無かったから。

昨日、早川俊と一緒に学校から家まで歩いた。

早川俊が引っ越してきたばかりの頃は2人で並べる事が信じられなくて夢の中にいるようなフワフワとした気持ちで足が地に着いていないようで、その日何を話したか忘れないように日記に記していたが、一緒に帰るのが当たり前になると昨日の夕ご飯は何食べたっけ?ぐらい思い出せなくなってきた。

だけど、昨日の話は一語一句覚えている。

昨日…。

早川俊が自身の昔の事を話したのだ。


「オレさ、昔テレビの仕事してた事あってさ」


触れられない昔の話をし始めた。





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