表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第三章
64/227

お菓子を求めて

 悠魔は調理場でとある物を調理しながら、現状の状態をどうしようかと考えていたが、どれだけ考えても悠魔の力ではどうしようもなかった。


 すぐ後ろでは航路の魔女のソフィーと剣姫の魔女のアリスがテーブルを挟んで睨み合いをしていた。この状況に耐えられなくなった、元パーティーメンバーのナナと帝国の姫のサリアは自分の部屋に逃げて行った。


「あのう、2人共もう少し仲良く出来ませんか?」


「「無理」」


 実は仲がいいんじゃないかと思うほど、綺麗にハモった2人を見て悠魔は可笑しくなるがとても笑える状況ではなく。この状況の中ソフィーに頼まれたお菓子を作り続けた。


 しばらくして出来上がったクッキーをテーブルに並べた、それを見てソフィーは手を伸ばし食べ始めた。ソフィーは幸せそうな笑みを浮かべクッキーを食べ続けた。




 事の発端は4人で悠魔の作ったお菓子を食べていると、見覚えのある扉が室内に現れた。それを見たアリスが魔剣を展開して、出て来るであろう魔女に警戒した。


「この扉って」


「どういうつもりだ」


 ドアが開き出て来たのは、見た目が子供の魔女のソフィーだった。流石のアリスも彼女の急な訪問に驚きを隠せなかった。


 魔剣を彼女に突きつけるアリスを見て、慌てて止めに入る悠魔だった彼女達が戦えば、この王都が大変な事になるが目に見えていたからだ。彼女をテーブルに案内する悠魔だったが、流石に彼も彼女の訪問には驚きを隠せなった。


「それで君は何をしに来たんだい?」


 不機嫌なのを隠そうともせずに目の前に座るアリスを無視して、悠魔の方を見て。


「……お菓子」


「え、」


「この前約束したお菓子」


 どうやら彼女は悠魔のお菓子が目当てで来たようだった。これには流石のアリスも呆れて悠魔に視線を向けた、その視線にはさっさと渡す物を渡せと言う意味が込められていた。


 だが悠魔は困った様に頭を掻く、ここ最近忙しくてお菓子を作るひまがなくまだ作ってなかったからだ、それを聞いたソフィーはあからさまに落胆した。


「今から作りますからそう落胆しないでください」


「ホント!」


「はい、ですから少々待っててもらえますか?」


「待ってる」


 そうして現在の状態だった。


「ほらさっさと食べたら帰れ、君がいるのがばれたら面倒な事になるから」


「もう少しいいでしょ、このお菓子美味しい」


「いい訳ないだろ、大体君が此処に居るのをエルフェリアは知ってるのかい」


 エルフェリアの名前を出すと、お菓子を食べていた彼女の手が止まり悪戯がばれた子供の様な反応をし始めた。この様子だと彼女に黙って出て来たようで、アリスはさらに呆れた。ソフィーの魔法は魔女教団内部でも重用しされている為に基本エルフェリアの屋敷に籠っている。


「後で怒られるぞ」


「うぅぅ」


 泣きそうな目でアリスを見るソフィーだが、彼女は自業自得だと切り捨てる。アリス自身彼女を助ける必要性を全く感じないからだ。


「……悠魔」


「僕に言われましても……」


 目元に涙を溜め悠魔に縋りつくソフィー、その姿は可愛く出来る事なら何とかしてあげたかったが、彼女の背後のアリスの冷ややかな視線が怖かった。


「言っておくがそいつの実年齢僕より上だよ」


「……えっ?」


 魔女の身体は悪魔と契約した時から成長しなくなる、そのため外見年齢と実年齢が合わない事が多い。この時悠魔が初めて助けた魔女は、20代後半くらいの女性で子を助ける為に魔女になったと言っていた。そう思うとアリスやソフィーの年齢の少女が魔女になるような事があるのだろうかと考え出した。


「いい年して怒られるのが怖いて、子供か君は」


「う、うるさい!」


 結局答えが出ない事を考えても仕方ないと諦め2人に視線を送る、何だかんだ言い合いをしていても、悠魔から見たら仲良さそうに見える2人だった。そこである事を思い出した、先日エルフェリアが言ってた事を思い出した。


「ソフィーさん、1つお願いがあるのですか? もし聞いて貰えるのでしたらエルフェリアさんには僕から言っておきます」


「ホント!」


 机に乗り出して悠魔の提案に食い付く、ソフィーの目はキラキラしているが逆にアリスの目は覚めていて、ちょっと引き気味になっていた。


「悠魔君ロ……幼女趣味だったのか⁉ 道理で一つ屋根の下に美女が3人も住んでるのに手を出さない訳だ」


「そんな訳ないでしょ馬鹿なんですか! それに言い直せてませんよ、前にエルフェリアさんが」


「待て、アレだけはやめとけ、幾ら顔は良く胸が有っても中身は最悪だ、性格破綻者だ!」


「うん、やめといた方がいい、あれはダメ、それならこれの方がまだマシ!」


 性格に難がある魔女に、これほど言われるエルフェリアが少々気の毒になるが、彼女も魔女だ一見人当たりは良くても偶に見せる彼女の魔女としての顔を見ると、まともな性格をしてるとは思わなかった。


 アリスは純粋に悠魔の将来を心配して、ソフィーは美味しいお菓子を食べ続けるため、悠魔には今まで通りの生活を送って貰うために必死に説得する、頭痛を覚えながら興奮状態の2人を宥める悠魔だった。


「……じゃあ君はロリコンでも悪女趣味でもないんだな?」


「違いますよ⁉」


「……コレを傍に置いてるだけ、女の趣味は悪いよ」


 悪女のアリスを指さすソフィーを見て、どう反応していいか分からない悠魔だった。実際彼もアリスの性格は良いとは思ってなかった。これを口にすると怒られそうだから言わないが、2人に視線を戻すとソフィーの指をへし折ろうとしているアリスがいた。




 喧嘩をしていた2人を落ち着け本題を話し始めた。


「グリーンウッド王国で何が起こってるかを確認しに行きたいんです」


「そう言う事か」


 エルフェリアはグリーンウッド王国で起源龍が出現したかもしれないと言ってた。グリーンウッド王国には、この世界に来て初めて友達になったエミリアやその家族が居るため安否が気になっていた。


 何度か確認しに行こうとしたが、グリーンウッド王国行の馬車は騒ぎのせいで無く、歩いて行こうかと考えたがアリスやナナは兎も角サリアを放っておく訳には行かなかった。だから今回の航路の魔女のソフィーの来訪はチャンスだった。


「確かに彼女の魔法なら一瞬で移動できるね」


「なら、はい! これがグリーンウッドと繋がるカギ、これでエルフェリア説得してくれるよね」


「はい、それじゃあ早速エルフェリアさんの説得に行きましょうか」


 善は急げと立ち上がる悠魔だが、ソフィーがエルフェリアは出かけていて屋敷に居ないと言う、彼女が居ないのを良い事に此処に来たソフィーだった。後の事を考えないでお菓子欲しさに飛び出して来たのでアリスにエルフェリアの事を指摘されてどうしようと考えた。


「それじゃあ、どうします?」


「取り合えずグリーンウッドに行くのはどうだい? カギを使えば移動は一瞬だし」


「2人は大丈夫なんですか魔女なんですけど……そう言えばどうやって魔女の存在を隠してるんですか?」


 悠魔の疑問に答えたのはソフィーで腕に付けてる腕輪を見せた、この魔道具は魔女特有の魔力を隠す事が出来る物で、魔女教団の魔女は全員所有している物だった。


 アリスを頭の上から足元まで見るが彼女がそんな魔道具を付けてる気配がなかった。彼女が今付けてる装飾品は、前に悠魔が贈ったネックレスだけで疑問に思うが、その視線に気が付いたアリスが説明してくれた。


「ん、僕の場合魔道具に使われている魔法陣を解析して、直接体に刻印してるからね……見るかい?」


「結構です!」


 徐にワンピースのスカートの裾を持ち上げるアリスを見て、慌てて止めに入る悠魔に残念そうに裾を放すアリスを見てソフィーは何をやってるんだこの2人はと思う。


 


「何だ……これ?」


以前訪れた時は、舗装された道路に綺麗な建物が立ち並んでいた街の王都プリーは無残に破壊されていて、エルフ達が修復作業をしていた。


 悠魔の脳裏には一瞬嫌な予感がして、エミリア達の住んでいるペリドット魔法店を目指して走り出した。2人の魔女はお互いに不思議そうに顔を合わせて、その後を追いかけた。




 ペリドット魔法店の前に来て悠魔は安堵した、多少壊れているが店は無事だった。悠魔は慌てて店のドアをノックすると中からよく知った声が聞こえて来た。


「どちら様ですか?」


 ドアを開けて中から出て来たのは、悠魔がこの世界に来て初めて会ったエルフの少女のエミリアだった。彼女は訪ねて来た人物に驚き、家の中に居る兄と母親を呼んだ。




「久しぶりね悠魔君元気そうで何よりよ、ごめんね大したおもてなしも出来なくて」


「いえ、街が酷い事になってるのは道中で知りましたから、何が合ったんですか?」


 エミリアの母親のシャルル・オルデジアは順を追って説明してくれた。彼女の話では街の近くの最も緑の深い場所周辺から強大な魔力が検出されたと思ったら、緑の鱗を持ち蝶の様なカラフルな翼を持つ巨大な竜が現れた。


 エルフ達は応戦したが、全く歯が立たずに蹂躙され破壊するだけ破壊して何処かに飛び去ってしまった。それが10日ほど前の話で、今もエルフ達の街は復興作業が続いていた。


「アリスさん……」


「間違いないね、話を聞く限り風の起源龍ゾーマに違いないね……これで2体目か、そろそろ本格的に対応を考えないとまずいな」


 2人の会話を聞いてシャルルの顔が青くなった伝説上の存在とは言え、流石にあれだけ理不尽な力を持つ者を見れば認めるしかなかったが、彼女はその存在を認めたくなかった。


「でも、あれは伝説上の生き物でしょ? そんなまさか……」


「地の起源龍グラウが確認されていてアリテール王国の国王陛下が敗退しました」


「っ! 魔王が負けた⁉ そんなまさか!」


 アリテール王国の国王リボーズ・ジードは魔王で強大な力を持っている、それはシャルルも知っており彼が負けると言う事は、少なくとも世界を揺るがす力を持つ者がこの世界に解き放たれたと言う事だった。


「シャルルさんお願いがあるんですけど」


「何かしら?」


 悠魔は起源龍が出現した所が見れないか、彼女に頼んだ。彼女困った様な表情をするが、悠魔には過去に娘のエミリアを助けて貰った事もあり出現場所が見える様に国王陛下に進言してくれることになった。その時悠魔にはあり疑問が生まれた、シャルルがこの国の国王に進言できるのか不思議だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ