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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第二章
38/227

魔王リボーズ・ジード!

「ハハ! 何だその攻撃は!」


 男は黒い地竜を片手で持ち上げ投げ飛ばした。


「無茶苦茶だ」


「ハハ! この程度か!」


 楽しそうに笑いながら、男は黒い地竜に近づき、天高く投げ飛ばし男もそれを追うようにジャンプし背中から翼を生やし飛翔し始めた。


「悠魔大丈夫か!」


「アリスさん」


「無茶をするな君も」


 アリスは安堵しその場に座り込んだ。


「あの男は何者でしょうか?」


「今回の旅で会う予定の男だよ」


「え、それって」


「魔王――リボーズ・ジード」


 アリスが飛翔する男に視線をやり、悠魔も釣られる様に視線を男にやると、男の拳に光が集まり。


「消えて無くなれ、獣王拳!」


 男が拳を放つと獅子の姿を模った光が放たれた。黒い地竜を巻き込み大きな爆発を起こし黒い地竜を跡形もなく吹き飛ばした。


「ハハ! 脆いな……まぁ弱ってたし、こんな物か」


 男は地表に着地して翼をしまい、笑いながら悠魔達に近づいて来た。


「いや~助かった、俺の国の国民を救ってもらって」


「いや、僕は何も……」


「何言ってんだ、君が黒い地竜を引き付けて泣ければ、もっと町に被害が出てたし沢山の死者が出ていた」


 悠魔は苦笑して照れくさそうに顔を伏せて。


「嬢ちゃんやるねぇ、あの地竜に喧嘩売るなんて」


「ちょっと痛いです――痛い」


 バン、バン、とリボーズに背中を叩かれ悠魔は痛がり慌てて離れ。


「痛いです」


「おっと、すまない」


「それに僕は男です」


「……えっ?」


「本当だよ、悠魔は男だよ」


「剣姫の魔女……どうして此処にと言うか人間と一緒に……嬢ちゃんが男で剣姫の魔女が一緒にいて」


 アリスが面倒だと呟き、悠魔が事情を説明するとリボーズは納得したように頷き。


「それにしても、あの剣姫の魔女がねぇ~」


「何だいその顔は」


「別にぃ~」


 ニヤニヤ笑うリボーズを不愉快に思ったアリスは不機嫌な顔をして睨み付けるが。


「おや、顔が赤くなってるね、お前のそんな顔は初めて見るね」


「…………殺す」


 アリスは無表情になり魔剣を取り出し。


「待ってください、アリスさん落ち着いて!」


「放せ悠魔! 今すぐこいつは殺す」


 悠魔に羽交い絞めにされて止められるアリス、そしてそれを見て爆笑するリボーズ。


「人間に制止されて止まる剣姫の魔女、いやぁ~見てて愉快愉快」


「ぶっ、ぶっ殺す!」


「だからストップ、ストップですアリスさん! リボーズ様もアリスさんを煽らないでください!」


「あー! いました、二人ともやっと見つけました! て何でこんな所に魔王陛下が!?」


「もう、無茶苦茶だ!」


 コトナが二人を見つけ近づいて来ると、そこに居た魔王のリボーズ・シードに驚き腰を抜かしてしまった。




「では、陛下は奇妙な魔力を感じたから、この町に来たと?」


「ああ、知ってんだろ、ここ最近暴れてる妙な黒い地竜の事を」


「はい」


「そう言えば、君は今回の事を何処まで把握してるんだい?」


 不機嫌そうなアリスがリボーズに今回の事件を何処まで把握してるのか尋ねると。


「そうだな、黒い地竜がすべて同型個体てことぐらいかな」


「古参魔王なら起源龍について何か知ってる事はないかい?」


「起源龍? あの伝説の龍の事か」


「ああ、今回はどうやらあれが絡んでるみたいだ」


「ウム」


 考える様に目を閉じるリボーズ。


「悪いが知らないな、あれがこの世界の何処かに封印されてるのは知ってるが、特段興味もなかったもんでな」


「そうか」


「実は起源龍1体の封印が解けたみたいで」


「何?」


「最近出没してる黒い地竜は、地の起源龍の力で作られた眷属だ」


「にわかには信じられない話だな……だが黒い地竜の奇妙な魔力の説明がつくな、それでそっちのエストア王国の使いの嬢ちゃんは?」


「私は陛下より預かって来た同盟についての新書をリボーズ・ジード陛下にお渡しするために来ました」


コトナが親書をリボーズに渡そうとするが。


「ああ、そういうのは王宮でした方がいいだろ、取り合えず王宮に行くか」


「申し訳ありませんが、私達の馬車は今回の戦いで壊れてしまったので、すぐにと言うのは」


「問題ない、俺様が送ろう」


 リボーズの姿が変化して巨大な怪鳥に変わった。


「お前ら乗れ」


 怪鳥の背中に乗る3人を確認した。リボーズは翼を広げ大空に飛び立った。


「ひゃゃゃ!」


「おぉぉぉ!」


「こら、2人とも離れろ落ちるだろ!」


 悠魔、コトナは驚きの余りアリスに抱き着き、2人に抱き着かれたアリスは怪鳥から落ちない様に必死にバランスをとり。




しばらく飛行すると、アリテール王国の王都が見えて来て、リボーズは王都の中心に建築してある王宮の中庭に着陸すると、兵士や補佐官の様な人達が集まって来た。悠魔達が怪鳥の背中から降りリボーズも人型の姿に戻ると、エルフ族の女性が1人近づいて来て手に持っていた本でリボーズの頭を叩いた。


「この馬鹿魔王! 何処に行ってたんですか!?」


「厳しいな、クーちゃんは」


「誰がクーちゃんですか! 私はクリルです!」


 遠巻きに2人のやり取りを見ていた3人の内悠魔とコトナは状況が理解出来ないという表情をしていた。


「そうそう、クーちゃん客人を連れて来たから部屋を用意してやってくれ」


「私はクリルです! お客様ですか?」


 クリルはリボーズの連れて来た3人に目をやると、先ほどまでのイライラした表情から一転させて笑顔になり。


「ようこそ王都イクシードに」


「初めまして、私はコトナ・フルール、エストア王国クランド・ブリッツ・エストア国王陛下より親書を預かってきました」


「はい、確かに」


 コトナがクリルに親書を渡し他の2人に目を向けると。


「お久しぶりです剣姫の魔女」


「ん」 


「そちらの方は?」


「初めまして、九条悠魔です、九条が家名で悠魔が名前です」


「貴方が人間を連れているのには意外ですね」


 クリルがクスリと笑いアリスを見ると、アリスは心底嫌そうな顔をしてそっぽを向いた。


「取り合えず立ち話もなんですので此方にどうぞ」


 案内され謁見の間に移動した3人。


「改めて民を救ってくれた事に感謝する、そしてこの度の同盟の件は前向きに検討させてもらう、近日中には答えを出すからそれまでは城でくつろいでくれ」


「はい、ありがとうございます」


「それでは、皆様部屋に案内させてもらいます」


 豪華な部屋に案内され、室内を見ると悠魔はその豪華さに驚きアリスとコトナを見るが、2人は特段おどく事もなく部屋に入って行き。


「隣にも同じ部屋を用意してありますので、悠魔様もそちらをお使いください、それだは私はこれで、何か用があれば彼女たちにお申し付けください」


 数人のメイドを残してクリルは歩いて行った。メイドたちはお茶やお菓子を用意してくれ、3人は雑談をしていると部屋の扉が勢いよく開くと、そこにはリボーズが立っており。


「俺も混ぜてくれ!」


「え、リボーズ様」


「魔王陛下!」


「ハァ……」


 リボーズの乱入に悠魔は驚き、コトナは姿勢を正し、アリスは飽きてた表情をした。


「剣姫の魔女が人間に飼われるとは」


「あのう、僕は別にアリスさんの飼い主ではないのですけど……」


「いやいや、謙遜するな、あの悪名高い魔女を誑かすとは面白い男だ」


「誑かしてもないです!」


「……剣姫の魔女」


 お茶を飲みながら、リボーズがアリスに視線を送り。


「何だい」


「ちょろいな」


「う、うるさいよ君は! そんな事は僕が一番分かってるんだ!」


「たった一言で此処まで魔女を変えるとはねぇ」


 顔を赤くしてお茶を飲むアリス、コトナはハラハラしながら二人の様子を見ながら。


「御二人は付き合いが長いのですか?」

「ああ、大体500年くらいの付き合いだ」

「昔のアリスさんてどんなのだったんですか?」

「っ悠魔それは!」


 悠魔の問いに、慌てた様にアリスは立ち上がり不安そうな顔をして悠魔を見ると。


「ハハ! 剣姫の魔女のこんな表情初めて見るな」


「何と言うか、こんなアリスさんを見ると、本当に彼女が剣姫の魔女とか信じられませんね」


「そうなんですか? 僕は今のアリスさんしか知りませんからね」


「俺様が剣姫の魔女と出会ったのも、この魔女が俺様の領地の街を壊滅させようとしたからだしな」


 悠魔がアリスを見ると、アリスはばつの悪そうな顔をして視線を逸らした。悠魔もそんなアリスを見て苦笑して彼女の頭を撫でると顔を綻ばし気持ちよさそうな顔をして目を閉じた。


「本当に丸くなったな」


「それで、街を壊滅させようとしていた人と、こんな友好的な関係になったんですか?」


「ああ、それは戦ったて疲れたから酒飲んでたら今みたいな関係になっていた」


「……」


「それから、年一度くらいぶらりと来ては飲んでる、飲み仲間だ」


 コトナは、悠魔に撫でられて顔を綻ばせるアリスを見て、鬼人族の里に行った時見た残忍さはなく悠魔がそばに居ればあんな顔もするのだと思った。

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