陰謀、策略、自分の考えた策に相手がハマった時て最高に気持ちいよね!
「それで、エレナ様の衰弱の原因て何だったんですか?」
「わかりません」
ルチアが悔しそうに、拳を握り答えてくれる。
「まぁ、治ったんだからいいんじゃないか」
「そうね、えっと、悠魔さん、ありがとう」
「いえいえ、僕は……ん?」
「……」
悠魔が国王と王妃と話してると、視線を感じてそちらを振り向くと、そこには先ほど紹介された姫のエリスという少女がおり、彼女はショートヘアスタイルに純白のドレスを着ており。
その少女が悠魔を見ていた、その顔は無表情で何を考えてるか、分からなく悠魔は戸惑う。
「あのう、姫様どうされました?」
「……男性? 女性?」
「…………男ですよ」
「ごめんなさい」
「頭上げてください! 一国の姫様に頭を下げられるほどの事でもないですから、謝らないでいいです、それによく間違えられますから!」
エリスが頭を下げ、悠魔に謝罪をする。
彼はそれを見て慌てる、彼女はそんな悠魔を見て、無表情のまま首を傾げた。
「何で?」
「何でと言われましても、僕は平民ですし、王族の方が平民の頭を下げるのは……」
「意味は分かりますけど、此処は公式の場じゃないですし、他の貴族の目があるわけじゃないですから……それに、悠魔様はお母様を助けてくれました、その方に敬意を払うのは当然です」
今まで無表情だったエリスが、クスリと笑い笑顔に変わった。
「姫様、その悠魔様て言うのをやめてもらえませんか?」
「そうですか、でしたらその姫様っていうのも、やめてください」
「…………」
「…………」
悠魔とエリスの視線がぶつかり、悠魔が先に大きなため息をつき。
「エリス様」
「その様付けやめてください、公式の場じゃないんですから」
「エリスさん」
「はい、悠魔さん」
エリスはニコニコと、テーブルに置いてあったお茶菓子を食べ、悠魔は負けましたと言わんばかりに、天井を見上げた。
しばらくすると、国王は仕事があるから退室してしまい、それに続くようにジェンガとコトナも出て行く、部屋には王妃のエレン姫のエレナ王宮魔導士のルチアに悠魔だけとなった。
「ん?」
悠魔は何かに気がついた様に、部屋の中を見回す。
「どうかなさいましたか悠魔さん?」
「いえ、さっきまでジェンガさん見たいな、大きな魔力を持った存在が居たもんでですかね、妙な魔力が感じられて」
「ルチアはどう?」
「いえ、私は何も? ちょっと待ってください……検索」
ルチアがソファーから立ち上がり魔法を発動させると、ルチアを中心に波紋の様な光が放たれた。
「これは、エレナ様失礼します」
「ええ?」
ルチアがエレナの胸辺りに手を置き、再び検索の魔法を発動させた、そうするとルチアの顔が今まで以上に真剣になり、青い顔をして部屋を出て行った、しばらくして国王とジェンガを連れてルチアが戻って来た。
「さっきの話は本当なのか?」
「はい、間違いありません、エレナ様の体内には、何者かによって施された魔法陣があります、このタイプの魔法陣は特定の魔物を引き寄せる物だと思います」
「魔物を引き寄せる?」
「はい、多分死霊系の魔物を引き寄せる物だと、死霊系の魔物は生者の生命力を吸い取りますから、エレナ様の異常な衰弱はそれは原因かと思われます」
「エレナの魔法陣は取り除けるのかい?」
「はい」
「なら、すぐに取り除いてくれ」
「わかりました、陛下」
ジェンガの疑問いエレナは即答してすぐに魔法陣の除去に取り掛かった。
「普通王宮てそんなに簡単に侵入出来ませんよね、例え実態がない幽霊でも」
「うん、この城は球体状の探知結界で覆われていて、外からの侵入はその結界に引っかかると、すぐにわかるはずだし……悠魔どうかしたかい?」
ジェンガの言葉を聞いてると、悠魔は何かが引っかかった様に顎に手を当て考え始めた
「外からの侵入は、すぐに気づく……なら、死霊は……だけど……狙う理由が……何か……なら……それでも……」
「悠魔?」
「⁉」
「どうしたんだい?」
「いえ、ちょっと考え事を、何でエレナ様が狙われたのだろうと陛下を狙うなら、いくつか理由が出てくるのですが?」
悠魔が考えに耽ってると、ジェンガに肩を叩かれ意識をジェンガに向けた。
「それなら……多分エレナ様が生まれ持ってる異能せいだと思う」
「異能?(確か魔法とも武芸とも違う、生まれ持ったその人だけの能力だっけ)」
この世界には、魔法、武芸、異能と言われる力があり、異能は生まれ持ったその人だけの能力で、その能力は多種多様。
「えっと……」
ジェンガがチラッと国王と王妃を見ると二人は頭を縦に振った。
「エレナ様の異能は、他者の嘘を見破る事が出来るんだ」
「嘘を見破る?」
「ええ、嘘をつく人を見ると黒い靄みたいなのが、その人の周りに見えるの」
「なら、その異能を使われると困る人がいるって事ですかね? 何か心当たりとかないんですか?」
悠魔が何か心当たりがないか尋ねると、皆くらい顔になりうつむいてしまった。
「その反応何か心当たりがあるんですね」
「それは……」
「陛下⁉」
国王が何かを言おうとした時、ジェンガが慌てるように、それを遮り止める。
ルチアも王妃も何か思う所があるのか、少し暗い雰囲気で話していいか迷っていた。
「これは、私の不徳の致す所だ」
「しかし!」
「悠魔殿、この話は出来れば此処だけの話にしてもらいたい、民に無用な不安をかけたくない」
「わかりました」
国王は渋い顔をしながら現状の説明をし始めた。
「半年前程から王宮の備蓄が横領されている形跡が見つかったんだ、横領された物は」
「剣、槍、盾、ポーション類、魔法石、魔法金属などです」
横領されたものは、ルチアが丁寧に答えてくれる。
「私は王宮内の誰かの仕業だと思ってる、だからエレナを狙ったんだと思う……」
「そう言う事ですか……犯人の目星はついているんですか?」
「それは……」
国王は言うか言わないかを迷って口を噤んでしまう、ジェンガも目を閉じ喋らなくなってしまった。
「バルマ伯爵です!」
「ルチア!」
「陛下、彼しか考えれません、もうお分かりでしょう!」
「っ、しかし」
ルチアが声を張り上げて、犯人と思われる者の名前を言い、それを咎めようとしたジェンガの声を無視して、煮え切らない態度の国王を問い詰めた。
「でしたら少し考えがあるんですけど」
悠魔が、ニヤといやらしい笑顔を浮かべ、そしてその笑顔を見た此処にいた人達は、綺麗な顔してるのに残念な笑い方するなと思った。
そして夜になり、先ほど王妃が眠られた部屋で大きなベットには、人が眠ってるのがわかるように膨れ上がっていた。
しばらくすると、壁を通り抜ける様に煙の様な物が室内に入って来る。
煙はベットの上空をクルクル回り初め、そして急に止まると、煙りの一部が人の顔の様な物になり、ベットに向かって飛来してきた。
「鎖!」
布団を跳ね飛ばして、布団の中から悠魔が飛び出した悠魔が、ルチアに教えてもらった魔法を発動させる。
空中に数個の魔法陣が展開され、その魔法陣から魔力で作られた鎖が放たれた、煙の様な姿をした魔物死霊を捕縛した、ほぼそれと同時にドアが開かれジェンガとルチアが入って来て。
「光の障壁」
ルチアが発動させた魔法で、死霊を光の壁で包み込み隔離する。
しばらくは、鎖が外れ逃げようと暴れていた死霊も、光の壁に阻まれ逃げられないと悟ったのか、おとなしくなっる。
「うまくいったね」
「はい、こいつが死霊ですか?」
「まさか、王宮内にいたとはね」
「しかも、私ですら集中しないと見つけられないほど、小さい存在だったとは」
「僕は探知が苦手だからね申し訳ない」
「さてさて、それでは次の作戦移りますか」
三人はルチアが隔離した光の球体をのぞき込んでいた。
「バルマ伯爵!」
「こ、これは陛下このような時間に一体どうされましたか? それに聖剣に王宮魔導師のルチアも連れて――」
国王の急な来訪に、肥えたカエル見たいな顔をした、男が慌てて椅子から立ち上がる。
ジェンガとルチアは、国王の後ろに立ち、その後ろには、一人のメイドが開いたドアを音もなく閉めた。
「要件はこの死霊の事です」
「こ、これは!?」
ルチアが、光の球体に閉じ込められた死霊を机の上に置いた、それを見たバルマ伯爵は、明らかに動揺した表情をした。
「何か、心当たりでもあるのか?」
「い、いえ、わ、私は何も知りませんね」
「……そうか」
この時、国王の顔は、残念そうな雰囲気が漂って居た。
「この水晶に心当たりはありませんか? この水晶には死霊が封印されていた形跡が確認されました」
後ろに控えていたメイドが、歩いて来て布で綺麗に包まれた、濁った水晶をテーブルの上に置いた。
「っ……」
それを見たバルマ伯爵の視線が、本棚の方に向き、それを見たジェンガが歩き出し、本棚をあさり始めた。
その行動に顔を青くするが、その行動を制止しようとするが間に合わず、ジェンガが一つの水晶を見つけ出す。
「陛下ありました」
「……そうか」
ジェンガが本棚に隠されていた、その濁った水晶を手に取り歩いて来る。
「こ、これは、その……
「全く、貴重な上級魔水晶を一つ無駄にしたかいはありましたね、まったく勿体ない、たかが下級死霊を封印して汚すなんてもう、使えませんよこんなの……」
ルチアは初めに置いた水晶を手に取り、憎たらしく呟く。
「な、な、な」
「どうやらもう言い逃れは出来ませんね、ご同行お願いしてもいいですよね」
ジェンガが剣に手をかけ、ルチアが宝石で装飾された本を手に取った。
「く、う、動くな!」
「キャッ!?」
バルマ伯爵がテーブルの近くに立っていた、メイドを掴み喉元に隠し持っていたナイフを近づけた。
「バルマ伯爵⁉」
「ハァハァ……道を開けてもらえませんかね……」
「くっ」
彼の行動に、剣を引き抜くのをやめるじジェンガ、それと同時に動きを止めるルチアを見て、バルマ伯爵は満足そうに笑みを浮かべる。
「そのメイドを放しなさい!」
「早く道を開けろ! この娘がどうなってもいいのか⁉」
「バルマ伯爵、どうやってエレナの体内に魔法陣を施した……」
国王の言葉に、バルマ伯爵はニヤリと笑い口を開いた。
「簡単ですよ、エレナ様の飲み物に、刻印魔法を紛れ込ませ、それを飲み体内に入り込んだら、刻印魔法が発動するようにしてあっただけですよ」
「そう言う事ですか、どうやって王妃様の体内に魔法陣を施したのかが、分からなかったもので……僕も勉強不足だな、刻印魔法なんて物のあるんだな、帰ったら、ちょっと調べてみるか」
「何を、ぐちゃぐちゃ言ってるメイドの分際ぐぇ」
メイドの肘がバルマ伯爵腹に入り、ひるんだ隙に腕を掴み投げ飛ばした。
「ぐげぇ⁉」
「犯罪者の前に、ただのメイド連れてくる訳ないじゃないですか」
メイドが、髪紐をメイド服のポケットから取り出し、いつもの様に髪を縛ると、そこには悠魔が立っていた。
「悠魔……意外にメイド服に合うね」
「このまま王宮で働きますか?」
ジェンガとコトナの、笑えない冗談に笑みを浮かべるが、その目は全く笑ってなかった。
「は、は、は、面白い冗談ですね、二人とも」
ジェンガがバルマ伯爵の拘束し歩き出した。
「それでは陛下僕はこれで、彼を地下牢に連れて行くので」
「ぐっ」
「バルマ伯爵……残念だ」
二人が出て行くと悠魔はその場に座り込んだ。
「怖かった、自分で考えた作戦だけどもう、二度とごめんだ……ん、首ちょっと切れてるな」
「すぐに薬を!」
「ああ、いいですよ、このくらい自分の持ってる試作のポーションで治すんで」
「ですが!」
「悠魔殿ありがとう、エレナに続きこんな危険な仕事まで頼んで」
「いえ、彼に顔が割れてないは僕だけですし、手口を知りたかったですから、エレナ様を危険にさらすわけにはいきませんから」
「今日は、もう遅い部屋を用意しよう」
「いえ、帰ります明日は朝から仕事行けるかもしれませんから」
「そうかい? なら後日お礼をさせてくれ」
「はい」
悠魔が窓の外を見ると満月が出ていた。




