あの日
あの事件が起きたのは一瞬だった。
過去に円は風紀委員長ではなく一般生徒だった。
自分の出番ではないので恵理香と他の人の試合を見ていた。
そんな時に一花と善丸と3年生3人組とのバトルが始まった。
少し遠くにいたので会話の全てが聞こえたわけではないが一花と1人が取っ組み合いをしている時に相手が彼女に何かを囁いた。
「そちにその様な事を言われる筋合いはない!」
と一花が叫んだ瞬間、円は血液が沸騰するような力の暴走を感じた。
どうやら円だけではなく、この場にいる生徒が皆感じてるようだった。
ただでさえ力の強い生徒しかおらず特殊な力の生徒も多い中での力の暴走。
それはとても恐ろしい事だ。
「あの子が一番苦しんでいる」
「恵理香?」
恵理香は自分も力が暴れて苦しそうなのに、あの子…竜田を指差しに駆けていった。
その時に爆発と爆音があり竜巻のような暴風が起きた。
驚きと衝撃が来るであろうから円は目を閉じる。
たが何時まで経っても衝撃が来ない。
円がうっすらと目を開けると目の前に叶真がいた。
「怪我はありませんね?」
「お…おい…」
叶真が円の顔を両手で包み確認をしている。
円は今まであまり関わりのない生徒会の副会長が自分を守っている状況に混乱していた。
「良かったです。貴公が無事なら、それで良いのです」
「おい…副会長?」
「叶真ですよ」
何故か円の無事を満足そうに確認したのに叶真は"副会長"と呼ぶのは気に入らないらしく顔をしかめていた。
「と、とうま?」
円に名前を呼ばれて笑う叶真。
彼の目から段々と光が遠のいていく、その様子を見て円が焦る。
「おい、叶真っ!目を開けろ!」
倒れてきた叶真を支えながら円は叫ぶ。
叶真は満足そうに笑っているのだ。
「何で…何笑っているんだ」と円がそんな事を考えてると叶真の体重が完全に円にもたれかかる。
円は血の気が引いた。
「とーまぁーーーーーー!!」
円は叶真を抱き締めながら叫んだ。
そんな様子をボロボロになった遥都は遠くから見ていた。
「生徒を守るのは生徒会としての義務。惚れた女を守りたいのは男の性だ」
遥都はふらふらしながら呟いている。
「良かったな、トーマ…俺は守れやしねぇ…」
そう言いある一角を見た。
手を伸ばすが届かず何かを求めて乞う視線だけを向け遥都は倒れた。
視線の先には竜田を抱き締める恵理香の姿があった。
事件は残念な事に生徒の力の暴走した結果起こってしまった。
そんな簡単な言葉で片付けられてしまった。
良くも悪くも力のある学校に起こってしまう事件だと…。
ただ生徒には深い傷になった。