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5話

扶桑は戦士としての誇りが高いという設定ゆえに葛藤も多いです。

太平洋上で展開された日中両艦隊による戦闘は中国艦隊の先制攻撃によって開始され、現状、日本艦隊は守勢に立たされている。


扶桑CIC(戦闘指揮所)

「敵ミサイルは第1防衛線突破、ESSM発射用意!」

扶桑の砲雷長である猪口中佐がそう言うと砲術員は情報を入力する。

「敵誘導弾は第1防衛線と第2防衛線の中間地点に到着します!」

「距離50!!まもなくESSMの有効射程に入ります」

砲術員や電測員の報告を聞くと猪口中佐がミサイル発射命令を下した。


猪口中佐が発射命令を下すとMk-57VLSからESSMが放たれる。

私は軍刀を鞘にしまい、リボルバーを構える。

リボルバーをミサイルの方角へ構えたのと同時にFCS-4多目的レーダーからミサイルの誘導電波が照射され、ミサイルの終末誘導を行う。

「中々骨があるわね敵さんも・・・・・・でも死ぬのは貴方たちよ」

私がそう呟くとESSMが敵艦の放った刺客であるYJ-82(対艦誘導弾)を次々に撃墜し、レーダースクリーン(表示盤)からフリップ(輝点)が幾らか消えた。

私が拳銃に弾を込め様とした次の瞬間、戦闘指揮所職員が声を荒らげた。

「敵ミサイル2発、第2防衛ライン突破、駆逐艦浜霧へ接近中!」

艦隊輪形陣の外縁部を航行していた浜霧にYJ-82が接近していた。


浜霧CIC(戦闘指揮所)

「敵ミサイル接近中!主砲(76㎜砲)、CIWS射撃用意!」

浜霧の砲雷長がそう叫ぶと浜霧の76㎜速射砲とCIWSが火を噴く。

同艦の搭載する76㎜砲とCIWSが形成した濃密な対空弾幕(アイスキャンディー)を潜り抜けたYJ-82(対艦誘導弾)は浜霧の船体後部のヘリ格納庫に炸裂、その数秒後には巨大な爆発が格納庫を破壊しヘリや後部マストを倒し、第2煙突を始めとした後部構造物をグシャグシャにした。

「痛いよ・・・・・・暑いよ・・・・・・みんな(乗員)は逃げてー!!」

血塗れで痛がっている浜霧を目の前に私は何も出来ないのか。

「くそっ・・・・・・浜霧、大丈夫だ!お前も国に帰れる!」

私はそう言って浜霧を勇気付けるが、既に彼女は助からないと悟っていた。

「扶桑さん・・・・・横須賀でみんなにこれを・・・・・・」

彼女はそう言い残すと、ガクッと力尽きて私の体に倒れこんだ。

「浜霧・・・・・・お前の仇は私が討つ、安心しろ・・・・・・」

私はそう呟くと力尽きそうな浜霧にそう言うと浜霧が最後の力を振り絞り自分の船に転移し、そこで力尽き、浜霧は海中へ没した。


私の放ったSM-6とESSMは30発近いYJ-82を撃墜したが、撃墜し損ねた数発のYJ-82は浜霧を撃沈し、霧雨を戦闘不能に追い込んだ。


私は既に僚艦1隻を撃沈され、ほぼ1隻を沈没間際に追いやった敵に対して怒りと復讐心に駆られていた。

扶桑CIC(戦闘指揮所)

「第1波攻撃を乗り切ったが、被害は大きいな・・・・・・」

「どうですね、ですが2隻の仇を討ちたい、いや必ず討たせて下さい!」

猪口砲雷長に対して井原砲術長そう言うとある事を砲雷長は思い出した。

(あぁ・・・・・・そう言えば砲術長の前任は撃沈された浜霧の砲術員だったな・・・・・・)

砲雷長が顔を上げると悔し涙を浮かべる砲術長が握り拳を机に置いていた。

「くそっ・・・・・・俺のせいでみんな(浜霧の乗員)が・・・・・・」

井原がそう呟くと猪口が語りかける。

「いや、お前のせいじゃない・・・・・・・みんな(浜霧乗員)の仇はみんな(俺達)で討とう、悔しいのはお前だけじゃない・・・・・・」

猪口がそう言うと射撃命令を下した。


その射撃命令の直後、4セルのMk-57VLSからSSM-3が一斉に放たれ、目標に向けて飛翔する。

「よくも、よくも浜霧ちゃんを・・・・・・」

私はそう呟くと握っていた拳銃のトリガーを引いた。


無論、私以外にも霧島や日向、照月も悔しそうな表情を浮かべつつそれぞれが構えていたけん銃を敵の方角へ向けて放つ。


私や霧島、日向、そして汎用巡洋艦たちが放ったSSM-3は中国艦隊へと順調に向かっていた。

「浜霧ちゃんの痛みと苦しみを味わいなさい・・・・・・」

私はそう言うと冷酷な表情で敵艦隊を睨み付ける。

無論、私のトラウマとなっている目の前で戦友を失う事が再び起きた故だ。

そして再び私は誓った、もう二度と戦友を死なさないと。


中国軍駆逐艦蘭州CIC(戦闘指揮所)

「敵対艦ミサイル接近中!距離、マッハ2.7!」

「そうか・・・・・・相手に不足はない、対空ミサイル発射用意!」

蘭州の砲雷長がそう叫ぶと3隻の蘭州級駆逐艦からそれぞれ6発の対空ミサイルが放たれ、2隻のソブレメンヌイ級駆逐艦からも2発放たれた。

ロシア製の艦対空誘導弾は中国製と比較して命中精度が高い事もあって見事に2発のSSM-3を撃墜したが、精度の低い中国製のミサイルはSSM-3にかすりもしなかったのである。

「敵対艦ミサイル、第1防衛線突破、各艦、短距離ミサイル用意!」

砲雷長がそう叫ぶと4隻の新型フリゲートから数発の短SAMが放たれ、SSM-3を迎え撃つべく放たれる。


だが、現実は非情だった。

「敵ミサイル最終防衛線突破・・・・・・りょ、遼寧へ向かっています!」

砲雷長がそう叫ぶと次の瞬間には蘭州の10㎝砲が火を噴く。

蘭州以外にも深玔を始めとした各艦が搭載する10㎝砲や13㎝砲が射撃を開始し、強力な対空弾幕を形成する。


だが4発くらい撃墜した次の瞬間だった、蘭州にSSM-3が直撃し、一瞬にして蘭州の船体を引き裂き轟沈させた。

蘭州に命中したSSM-3は巨大な火球を形成し浜霧同様に乗員全員が一瞬にして焼かれて戦死した。

その蘭州を轟沈させた直後だった遼寧にもSSM-3が5発も命中、一瞬にして同艦の戦闘艦としての能力を奪い去り、艦載機の弾薬などに引火し、中国の誇る空母は洋上の溶鉱炉へと変わり果てた。


北海艦隊司令はミサイル命中の衝撃で全身を強打し、死亡。

艦長や副長を始めとした戦闘指揮所職員は全員頭部粉砕骨折で即死。


生き残った遼寧の乗員たちはパニックを起こしていた。


扶桑CIC(戦闘指揮所)

「遼寧の輝点、消滅します・・・・・・」

「彼らも同じ船乗りだ、国の為とは言え、冥福を祈りたいものだ」

艦長がそう言うと多くの乗員がそれに同意した。

私は怒りが収まったものの遺された彼女の妹である瀬戸霧、沢霧、海霧の事を思うと怒り以前に何とも言えない気持ちが残っていた。

だが、そんな事は押し殺し、私はやるべき事がある。

それは日本と言う国家(我が国の国民と領土)を護ると言う事だ。

私は誓いを新たに、次なる戦場へと向かう。


一方、中国艦隊の輪形陣は崩壊し、何が何やら不明な状況となっており、時には1隻だけ遁走しようとし、政治士官が乗っていると思われる船から発砲されて航行不能に陥った船もいた。

結果は黄海海戦と同じ様な終わり方となったのである。


そして遼寧撃沈が日本側にとって逆襲の嚆矢となったのである。

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