6話
鞍馬の船名は梅おにぎり先生に頂きました。
当初とは別の形での登場ですが、ありがとうございます。
戦時中の零式水上哨戒機は零式水偵の対潜哨戒機版で、磁気探知機と1式対潜爆弾(散弾形式で多数の穴を隔壁に開ける)を搭載しています。
「これで終わりね・・・・・・浜霧ちゃん、仇は討ったわ・・・・・・」
私はそう呟くと持っていた拳銃から弾丸を抜いてを懐へしまった。
恐らく80㎞先では遼寧以下中国艦隊の艦魂や乗員達が傷付き、倒れているだろうと思うと私は勝利の喜び以前に何とも微妙な気持ちになった。
13時20分、その中国艦隊は・・・・・・
「み、みんな・・・・・・私から離れて、そして国へ帰って・・・・・・」
遼寧の格納庫内で血塗れで倒れつつも遼寧の艦魂が息絶えそうな声でそう叫ぶが、多くの乗員が焼け死んだ為、生存者はいてもごく少数であった。
その炎上する遼寧の格納庫では各種搭載機用のミサイルに引火し、弾薬庫やその周囲を一瞬で焼き払い隔壁をぶち破り被害を増大させていたのである。
他にも飛行甲板に駐機していたJ-11やJ-10C艦上戦闘機が傾斜する遼寧から海面へと落下していた。
「りょ、遼寧さんを見捨てるなんて私には・・・・・・」
そう言うのは護衛の中で被害を奇跡的に免れた1隻であるDDG広州だ。
「あなたは私の乗員達を連れて帰り、もう一度・・・・・・」
遼寧がそう言おうとした次の瞬間、弾薬庫で再び巨大な爆発が発生し、遂には応急員の奮闘で延焼を免れていた航空機用燃料タンクにも燃え広がった。
「うっうう・・・・・・と、兎に角日本艦隊が迫っているわ、あなた達が離脱すれば、もう一度艦隊を組んで戦える、私はもう沈むわ・・・・・・・」
遼寧がそう言った次の瞬間、遼寧から飛び降りた20名程の乗員が海面へ飛び降りると護衛の広州や深玔に向かっていた。
「そ、そんな遼寧さん!!」
彼女がそう叫んだが、遼寧は遂に海中へと消えていった。
扶桑戦闘指揮所
1分ほど乗員の一部が黙とうをするとその沈黙を砲雷長が破る。
「さてと、遼寧機動部隊の残存の動静はどうだ?」
「依然として統制はとれておりません、ですが逃亡を試みようとする艦に対して発砲する艦がいます・・・・・・恐らく政治将校が指揮を執っている可能性があります・・・・・・」
「逃亡する船に対する発砲は看過出来んな、船名を報告しろ!」
「はっ、駆逐艦石家庄が艦隊から離脱を試みようとする駆逐艦青島に対して発砲、被弾により青島は航行不能の様です・・・・・・」
「そうか・・・・・・SSM-3発射用意!!目標、DDG石家庄!」
「ほ、砲雷長・・・・・・ほ、本気ですか・・・・・・」
「あぁ、敵艦とは言え傷付いた友軍を攻撃するのは許せない!」
「俺も同意している、友軍に対する攻撃は同意できない!」
猪口と西村の二人がそう言うとSSM-3が石家庄に向け放たれる。
無論、金剛からもSM-6を水上打撃モードに切り替えて放たれていた。
同じ頃、石家庄CIC
「敵ミサイル接近中!・・・・・・も、目標はこの船です!」
電測員がそう報告をすると艦隊政治委員を兼務する艦長が呟いた。
「我々は不逞者を処分しただけだ、国際法など違反しておらん!!」
「その通りですよね艦長、戦場から逃げるなんて臆病者のする事ですよね、彼らは我が国の政府に逆らった反逆者ですよね?」
「無論その通り、反逆者なんて国家にとっていらない連中だ!!」
因みにDDG石家庄の乗員は皆、中国政府の関係者の親類であり、軍艦政治委員会と艦隊の僚艦から忌み嫌われていた。
敵艦隊との距離は80㎞、恐らく1時間くらいしたら我が艦隊は的艦隊が漂流している海域に着くだろうし、敵艦の乗員救出も可能であろう。
(冷酷な政治将校は冷たい海底へ送ってやる!!)
艦隊司令部も今回の西村大佐の独断を敵損傷艦を攻撃している敵艦に向けて攻撃したと言う事もあって、不問とした。
そして救助には2隻の巡洋艦を向かわせる事にした。
その巡洋艦は雷と電の2隻であった事は何かの因果であろう。
因みにこの世界でも先々代駆逐艦電と雷は敵艦乗員救助を実施している。
それは1944年11月のグアム沖海戦で、グアム要塞を建設すべく物資を輸送していた帝国陸軍所属の船舶を護衛中に、米海軍通商破壊部隊のフレッチャー級駆逐艦7隻とその駆逐艦を指揮する巡洋艦アトランタが出現。
帝国海軍はそれに対し船団を護衛する船団護衛部隊に旗艦である戦艦比叡、重巡愛宕、那智、水上機搭載量に優れる航空重巡洋艦利根、筑摩、鞍馬に最新鋭軽巡阿賀野、矢矧に空母隼鷹、軽空母瑞鳳等の有力艦と空母を置き、駆逐艦をその周囲に配備して警戒線を張っていた。
そしてその中でも利根型は防空用の強風水上戦闘機と多目的機である瑞雲水上偵察機と対潜哨戒用の零式水上哨戒機を搭載しており、対潜作戦を駆逐艦と共に、艦隊防空を空母と共に支えていた。
閑話休題、艦隊決戦が終わった直後に沈んだネバダや放棄されたアトランタや駆逐艦の乗員を電と雷が救助している事もあって、艦隊司令部は敵艦乗員救助の役目をこの2隻に託したのであろう。
「また私たちが敵を助けるのね、これも任務よね、敵だって人間だし!」
電がそう言うと妹の雷は他の事例を引き合いに出してそれに同意した。
「あの時も助けたわね、でも当然の事よね、退艦した乗員を砲撃するとんでもない事よね、そんな奴は指揮官失格よ!」
その3分後、石家庄に迫っていた2発のSSM-3と2発のSM-6の内、各1発の撃墜に成功するも、2発が続けざまに命中した。
火災によって航行不能に陥った石家庄であったが既に被害を免れた艦隊の僚艦は次々に安全海域へ撤収しており、戦闘不能なれど中破航行可能の駆逐艦青島に助けを求めたが、青島も既にほかの船の乗員で一杯になっており、更には白旗を掲げて日本軍へ降伏する準備を始めていた。
降伏した駆逐艦青島に対し護衛を担当する夕立は乗員を雷と電が収容したのと同時に76㎜砲で射撃レーダーや10㎝連装砲、ミサイル発射機などを破壊して武装解除を実施したのである。
夕立の護衛の元、出来る限りの中国艦隊の水兵を収容した2隻は格納庫や士官室を彼らに開放し、捕虜収容施設が設置された鹿児島へ向かう。
雷と電が抜けた代わりに初霜型の時雨、雪風、初霜が艦隊に加わった。
当初、日本側は石家庄の乗員の救助も考えたが、青島に救助された他艦の乗員から聞いた政治将校の船という言葉で断念してスルーしたのである。
これには当初、電と雷の乗員も困惑したが、救助した政治将校及びほかの中国軍将兵の間で揉め事が起きて欲しくないと言う事もあり救助は断念した。
以後、中国艦隊はしばらく積極的な行動を避けていたが、4月1日に中国艦隊は馬公市を制圧、台南や左営などが制圧され、特に台南市内に翻っていたのは五星紅旗のみと衝撃的な事態が発生した。
遂に米政府が動き出し、既に東シナ海で日本国防海軍と中国海軍が衝突した事も受けて台湾防衛作戦を発動したのである。
当然、出撃命令を受けた米軍の反応は非常に迅速であった。
陸軍はストライカー旅団とハワイ州兵を中心に、講和条件として日本側が手放したものの(※1)グアム島に兵力を集中させ、日本国防陸軍の駐在武官と協議した結果、日本は物資の支援などの担当となった。
海軍は原子力空母エンタープライズ以下巡洋艦2駆逐艦5、原潜2を率いてサンディエゴ海軍基地を出港した。
同様に横須賀の日本国防海軍基地に同居する空母G・ワシントンと佐世保の強襲揚陸艦ボノム・リシャールも護衛艦艇を引き連れて出撃していた。
そして空軍も嘉手納と三沢に駐留するF-15CとF-16Cが空対空装備をして台湾方面へ向けて飛び立ったのである。
沖縄から200kmほど離れた空域では常に日米のAWACSが警戒を実施し、その護衛を日米のF-35A/Bが交互に実施していた。
「私たちの実力を見せてあげるからいつでも来なさい・・・・・・」
エンタープライズがそう言うと彼女は軍刀を空へと掲げた。
そしてその数秒後、爆音轟く中、彼女の飛行甲板の射出機に固定されていたF/A-18E/FINRMが飛び立つ。
「エンタープライズさん、敵空母搭載機はSu-33の劣化品と言われているJ-15と聞くから相手に不足はないですね」
アーレイ・バーク級駆逐艦スプルアンスが言う。
「スプルアンスの言う通りだな、油断してはならんな」
スプルアンスに続くようにチャンフーが言う。
「お前らの言う通り、連中も経済発展故に訓練回数も増えたからな、油断すればそれが命取りになる、お前らも気を引き締めろよ!」
私は2隻に対してそう言うと二人とも頷いた。
兎に角、中国海軍の状況は常に衛星通信で伝えらてくる。
戦闘指揮所勤務の乗員達はそれを分析し、最適な作戦を立案する。
恐らく私たちは4月18日には戦闘に参加できるであろうから楽しみだ。
さて、日本には扶桑と言う巡洋艦やかつて刃を交えた空母瑞鶴の生まれ変わりや、先代に宿っていた際に面識のある金剛や霧島がいるから楽しみだ。
そして台湾にも昔の私の護衛艦たちがいるから、思い出を語りたいと思う。
だが戦であることも理解しているから、それは凱旋してからだ。
※1グアムは米領になりますが、ミクロネシアは日本管理と言う設定です。




