ラージダンジョンへの挑戦6
僕たちは四十層に下りてきた、一緒にいるのはテツにぃ、アベル、ロウさん、ゴドスさんにアスラさん。それと騎士団の赤布を付けた六人。
僕たちは自分の力で六十層を目指して進むだけ、騎士団の人たちは絶対について行けと言われているそうだ。
騎士団の人たちの顔を見ると、僕たちを厳しい目つきで見る人、怯えた感じの人、自信満々な人、落ち着いて周囲を確認している人、目が合った人……目が合った人は、気が付くとすぐに目を逸らしてしまったけれど、何だろう?
アスラさんが、騎士団の前に出て話し始める。
「騎士団の者に言っておくが、王からはお前たちの一人でも六十層へたどり着ければ良いと言われている……お前たちは騎士団の生え抜きだろうが、私から見ればここにいる三人より格下だ、ダンジョンの中ではこのテツの指示には絶対に従うように」
騎士団の人たちに動揺と苛ついた空気を感じる。さっき睨んでいた人は、さらに強い視線で僕らを見ている。
「この隊のリーダーは誰だ?」
「私です!」
さっき僕と目が合った騎士の人が一歩前に出た。
「リンゲルか、先ほど言ったことを忘れないように。テツの指示は私の言葉、騎士団長の言葉と同じだと思って行動するように」
リンゲルと呼ばれた騎士の人は、驚いた顔でテツにぃを見たけれど、すぐにハッとしてアスラさんに礼をして隊へと戻っていった。
「テツも、今までの三人だけでなく見る範囲が広がるからな、よく見て注意するように。そして指示を出すときは躊躇わず大声でハッキリと指示を出すように」
言われたテツにぃも、騎士団の人たちを見ながら「出来るかな」と呟いていたけれど、きっと大丈夫! 今迄もテツにぃの指示で僕たちはダンジョンで戦ってきたからね、僕たちはテツにぃを信じてるよ!
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アスラさんから、騎士団の人たちにも指示を出せと言われて戸惑ったけれど。今日の戦いを見て貰えば、少しは話を聞いてくれるかと思い、アルたちと今日の作戦を再確認する。
「先ずはこの四十層のボス、キングオーガとの戦いだ。 アル! 因縁の相手だぞ、最後は任せるからな」
アルは、その瞳にしっかりと決意の炎を燃やしていた。
「キングオーガへの牽制は、ロウさんお願いします。最初は接近し過ぎないように。そして、俺とアベル、アルの三人で取り巻きを倒す。その時に、アルは一体を残して力を溜めておけ。取り巻きが残り一体になったら、俺とアベルとロウさんの三人でキングオーガの相手をする」
それぞれの顔を見ると、皆真剣な顔で話しを聞いている。
「そしてアル。力が溜め終わったら合図をしろ、合図に合わせて俺とアベルがキングオーガに攻勢を強めるから。アルはその剣の力で、残った取り巻きとキングオーガを一気に仕留めるんだ! 出来るな?」
「はい!」
皆の顔を見て頷き。
「よし、行くぞ!」
俺たちは、四十層ボス部屋の扉を開いた。
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「クッ、何なんだあの冒険者たちは」
四十層のボス部屋に入った冒険者共と我々騎士団だったが、キングオーガの圧に一瞬でも遅れを取ってしまったのは我々騎士団の方だった。
「グヴォオーーーーーーーーーーーーーー!」
入った瞬間に聞こえたキングオーガの威圧の咆哮。それは、冒険者共を蔑んでいた我々の心を萎縮させるには十分過ぎる効果を持っていた。
当然、冒険者共も怯んでいるだろうと見てみると。奴らは既に飛び出して、あまつさえ現れたばかりの取り巻きのホフゴブリンをあっという間に倒し、残り一体としていた。
「ハァッ!」
ガァン!
「うりょ」「ハァッ!」
ザシュッ!
ズパッ!
あのキングオーガを、ドラゴニア族の大楯持ちが防ぎ。若い獣人族の冒険者二人が攻める。
もう一人のドラゴニア族の若者は、残り一体のホフゴブリンを倒し損なったのか。何故か手を出さずに動きが止まっている。
そう思って見ていたのだが……。
ドラゴニア族の若者の全身が赤く光り始めたかと思うと、ものすごい勢いで覇気が立ち上がり、光となって手を持った剣に集まってゆく。
光が集まった剣は、元からそうであったかの様に光り始めると。
「テツさん!」
若者が声を放ち、ホフゴブリンへ一太刀を浴びせると、まるで上層のゴブリンを切るかのようにアッサリと切り倒し、その勢いのままキングオーガへと向かって行った。
「!!」
声に反応した獣人族の二人は、一気にキングオーガへ攻撃を加えると。背後から飛び込んでくるドラゴニア族の若者の動きが見えているかようなタイミングで、キングオーガの前から飛び退いた!
「ハァアアアッ!!」
ザンッ!!
大きく振りかぶり、振り抜かれた剣は。硬いキングオーガの皮膚も簡単に切り裂き、黒いモヤへと変えた。
戦闘の一部始終を、キングオーガの最初の咆哮で立ち竦み黙って見せられた我々は、自分たちの技量の差を嫌と言うほど思い知らされた。
最初にアスラ卿から言われた格下の言葉が重くのし掛かる。我々もキングオーガ相手であれば勝てる……だろう。だが、あれ程の連携と速さで倒せるかと言えば無理だ、圧倒的な決定力の差。
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キングオーガが消えた後、残った大魔石を拾ってアルへと渡す。アルは特に気にせず魔石を手にすると、そのままマジックバックへ収めていた。
「さて、と」
俺は、騎士団の人達の方へ振り返りその姿を確認すると、其方の方へ近寄って行き。
「今のが、俺たちのほぼ最大限の力を出した連携と力になります。特にアルのあの力は強敵には頼もしい強さになりますが、溜めが必要なので何時も使える訳ではありません。四十一層から下では、あそこ迄の力は必要では無いと思いますが、いきなり見せられると驚かれると思い力を使わせて貰いました」
騎士団の人たちは「アルの力は何時も出せる訳では無い」と聞いて少しホッとしたような、強張った笑顔を見せていた。
「いや、君たちの力は十分見せてもらったよ。アスラ卿が勧めるのも頷ける力だった、連携も素晴らしかった」
リーダーのリンゲルさんがボス戦の戦闘を誉めてくれるが、他のメンバーの人は無関心だったり、睨んでいる人もいる。
その後、それぞれの自己紹介をしてから俺たちは四十一層へと進んだ。




