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6

「死んでも恨むなよ」


 馬上の男は、そう言うと僕に向かってグレイブを向けた。


「やれるもんならやってみやがれ!」


 僕はそう叫ぶと、再び飛び上がった。


「ううぉおおおお!」


 僕の槍と、男のグレイブが激しくぶつかり合う。僕は着地すると、すぐに男と向かい合った。

 このまま真正面から攻撃をしても、奴を傷付けるのは不可能だろう。素早さで惑わすしかない。僕は男の周りをぐるぐると走ることにした。


「僕のスピードについて来れるかな?」


 調教で鍛えられた僕の四肢は、とてつもないスピードと俊敏性を誇っていた。それはまるで死のメリーゴーランド。男は僕が今どこにいるのか、まるで分からないだろう。


「今だ!」


 僕は男に向かって飛びかかる。完全に背後を捉えていた。このまま真っ二つにしてやろう。僕は大槍を振り下ろした。


 ガキン!と音がする。男はノールックでグレイブを背後に構え、僕の攻撃をガードしていた。


 なんて野郎だ。そう思った束の間、前方から飛んでくる黒い影に僕は気付いた。それはサディ様の鞭であった。男の体目掛け、それは劈くように宙を翔ける。


 僕は勝ちを確信する。僕が近接で戦闘をし、その最中にサディ様が遠距離から攻撃をしかける。完璧なコンビネーションであった。この女王と奴隷のゴールデンコンビに、敵う者などそうそういないだろう。


 そう思った束の間、バチン、と音がした。その眼前の騎士は、空いた左手の拳で、サディ様の鞭を弾き飛ばしたのだった。

 その後、すぐにサディ様の2撃目3撃目が飛んでくる。しかし、男は左手一本で次々と連撃を対処するのだった。


 なんて野郎だ。僕は再びそんなことを思う。


 すとん、と、僕は地面に着地する。これは長期戦になりそうだな。僕がそんなことを思っていると、眼前に男のグレイブが迫ってきていることに気付く。


 咄嗟に槍でガードする。重い、重い一撃だった。危うく咥えていた槍を放してしまいそうになるほどに。

 一旦男から離れようとした矢先、脇腹にもの凄い衝撃を受けた。男の蹴りが炸裂していた。


 僕は吹っ飛んだ。サディ様が「青太郎!」と叫ぶ声が聞こえる。僕は床をごろごろと転がってやがて止まった。

 馬上からなんであんな鋭い蹴りを放てるのだろう。僕は脇腹を押さえながら立ち上がった。


 男は僕の方を見ながら、後方でグレイブをくるくると回していた。それは彼に向かって飛んでくるサディ様の鞭を断ち切った。鞭の切れ端が、あちこちにぴゅんぴゅんと飛んでいく。


「おい小僧、もう終わりか?」


 男は僕のことを見下すように言った。脇腹の痛みといい、相手が女だったら申し分なかった。


「まだまだこれからだ!」


 ダメージを快楽に変え、僕は更なるスピードを求めて走り出す。シュビビンシュビビンシュビビンと、跳躍を交えた僕のぐるぐる運動は物凄いスピードだった。


 今度こそいける。僕は再度男に飛びかかった。しかしまたしても、僕の槍は男のグレイブに阻まれることになった。男はサディ様の鞭も同時にいなしている。恐ろしい。


 それから、やはり着地の瞬間を襲われた。再び重いグレイブを槍で受け、その隙に鋭い蹴りが脇腹の同じ所に食い込んだ。


「ぐはあああ! こりゃたまらん!」


 僕は吹っ飛んでごろごろと転がった。すぐに体勢を直して立ち上がる。男は僕の方を向いていて、さも余裕そうに見下している。


 まるで勝てる気がしなかった。それでも果敢に挑むしか、僕に選択肢はない。


「ううぉおおおおおお!」


 僕は叫びながら全力疾走する。男の周りをあっちへこっちへと飛び跳ねて、今度こそ男の撹乱を狙う。


 男はまるで隙だらけのように思えた。しかしどこから攻撃しても、彼には全てお見通しであるような気もした。


 気持ちで負けていては駄目だ。今度こそ奴を叩っ斬ってやるのだ。

 僕は再び男に向かって飛びかかった。

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