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僕は廊下を爆走し、ベリィ様の部屋の前までやって来た。入り口の扉は開け放たれていて、側に使用人の死体が転がっている。やはりよくない想像が過った。
僕は飛び込むように室内に入った。入り口付近には数人の騎士が並んでいる。その向こうでは、あちこちにたくさんの鎧兵が倒れ、主を失った馬達が所在投げに彷徨いていた。
部屋の中央に、1人の騎士が佇立している。その男の横には、蹲るベリィ様の姿があった。
「お母様!」「ベリィ様!」
僕達はすぐさま声を荒げた。ベリィ様が顔を上げてこちらを見た。
「サディ……、青太郎……」
彼女は苦しそうに顔を歪めていた。ベリィ様を傷付けるなんて、決して許されることではなかった。
ベリィ様の傍らにいた騎士がこちらを見ている。他と同じように、機械的な銀の鎧に身を包んだ男に生物感はない。彼の手には僕が咥えている大槍と同じような武器が握られていた。グレイブというのだろうか、先端が剣状になっている。
「なんだお前達は!?」
入り口付近にいた騎士の1人が僕達に向かって言った。それから周りの騎士達も、口々に何やら喋り出す。
「奴隷と令嬢?」「奴隷を馬にしてやがるぜ」「可哀想に」
彼らから哀れみの目を向けられるのだが、それはまるで見当違いだった。馬にならないなんて、人生半分損をしている。
「おい、娘、奴隷から降りろ」
1人の騎士がそう言ってこちらに寄ってくる。周りもぞろぞろとそれに続いた。
「大丈夫だよ、お嬢ちゃん、殺したりはしないから」「そうそう、捕虜にするだけ。お前達と違って虐待なんかしないから」「奴隷くん、今助けるよ」
さて、奴らが間合いに入ったら槍を振るおう。僕がそう思っていると、サディ様の私の両鞭は機関銃 (ダブルマシンガン)が炸裂した。
「ぐへえええ!」
次々と騎士達は鞭を受けて落馬していった。動かなくなった彼らをよそに、僕はベリィ様の元へと駆けていく。近づくに連れ、彼女達の周りに、鞭の切れ端が散乱していることに気付く。
「お母様! 大丈夫!?」
サディ様が僕の上からベリィ様に問いかける。彼女はぎこちない笑顔で、「ええ、大丈夫よ」とそれに答えた。
見る限り、ベリィ様の体に切られた跡はなかった。彼女がお腹を押さえていることから、きっとグレイブの柄で、そこを殴られたのだろう。
許せなかった。ベリィ様を傷付ける者は、万死に値した。
僕が飛びかかろうとする前に、サディ様の私の両鞭は機関銃 (ダブルマシンガン)が炸裂した。しかしながら、やはり手練れであるその騎士は、スパスパと鞭を切り裂いていくのだった。
「くそっ!」
サディ様は悔しそうに言った。
「サディ様! 奴は僕が相手します! サディ様は私から降りてベリィ様の介抱、及び後方からの支援をお願いします!」
僕がそう頼むと、サディ様は「分かったわ!」と言って僕から下馬した。
今度こそ僕は騎士に飛びかかる。宙を舞いながら、咥えた大槍を奴目掛けて思い切り振り下ろした。
ガキン!と音が鳴る。男は難なくグレイブで受け止めたのだった。
僕は着地すると、すぐさま2撃目を入れようと四肢に力を込める。
「その槍は……」
僕が咥える大槍を見て、男は言った。
「お前、ヴェルモンド卿に何をした?」
僕が「ぶっとばした」と答えると、騎士は「そうか」と小さく言った。「1つ聞いていいか?」と男はさらに言葉を続ける。
「なんだ?」
「お前、奴隷だろ? なんでこいつらの味方をするんだ?」
またこの手の質問か、と僕は辟易する。
「奴隷が主人を守るのは当たり前のことだ」
「当たり前じゃないぞ。他の奴隷達は喜んで逃げていった」
「じゃあそいつらは奴隷じゃない。僕こそが本物の奴隷だ」
それきり男は黙り込む。鎧をかぶっていても、彼が呆れ果てているのが分かった。




