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77.移住者との生活の始まり

 翌日、移住してきてくれた人たちに、改めて挨拶をした。


 衛兵隊第一小隊の隊長ラッカランさんが、リーダー的な感じになっている。

 そして彼の小隊の十名は、全員同行している。

 魔境で魔物から助けた時に、俺に文句を言ってきた若い衛兵もいて、バツが悪そうに前回の非礼を詫びてきた。


 あの程度のことで根に持つ狭量ではないので、すぐに和解の握手をした。


 まぁ和解も何もないのだが。


 死ぬかもしれない事態になって、動転してしまうのは、むしろ普通と言える。

 特に経験の少ない若い衛兵なら、なおさらだ。


 彼は名前をカルチと言い、「何でもやります、がんばります」と、この前とは打って変わって、素直な若者らしいハツラツさを出していた。


 衛兵だった人たちは、一般の人より戦闘力があるので、ここでも人々を守るための警備や、魔物狩りによる食料確保を担当してもらおうと思っている。


 だが、カルチは、「何でもやります」と言ったので、畑仕事でも大丈夫かと尋ねてみた。


「もちろんです。畑仕事は好きなので、むしろ大歓迎です」


 そんな答えが返ってきた。


 そこで今後、畑仕事を担当してもらうことにした。


 それから、衛兵は、第一小隊の十人だけでなく、第二小隊第三小隊からも合わせて、十名来てくれている。

 ラッカランさんによると、二つの小隊の中で、まともと思える者だけ、誘ったらしい。


 この人たちにも、問いかけをした。

 警備や魔物狩りによる食料確保をメインで担当するか、農作業をやるか、という希望を訊いたのだ。


 すると、五人が農業を希望すると手を挙げてくれた。


 この五人には、カルチ同様に、畑仕事を担当してもらうことにした。


 これにより、周辺警備と魔物狩りによる食料調達を担当するのは、ラッカランさんを隊長とした十五名となった。

 『ヤマダイ国』初代警備隊の誕生である。


 そして農業を担当するメンバー六人のリーダーは、カルチにした。

 『ヤマダイ国』初代農業隊の誕生である。


 ちなみに、『ショウナイの街』に残った衛兵は十人で、他に小隊長が二人と隊長が一人いることになる。

 おそらくまともには、機能できないだろう。



 それから街の人で移住してきてくれた人たちは、みんな俺が前に話し込んだ人たちだった。

 少しの時間だったが、多少なりとも人間関係が作れていたようだ。


 日用品の製作や簡単な武器の修理程度ならできるという鍛治職人、家具などが作れる木工職人、縫製ができる裁縫職人といったメンバーだ。


 あと驚いたことに、『冒険者ギルド』のスタッフもいた。

 あのいけすかない感じのギルド長の下で働いていたわけだから、移住を選んでくれた気持ちもなんとなくわかる。


 それから、役場で働いていた文官も何人かいた。

 この人たちも、あの守護の下で酷い目に遭っていたんだろう。

 新天地に希望を託して、やって来たに違いない。


 ここに来てくれた人たちの人間性を、完全に把握しているわけではない。

 だが、ラッカランさんが、性格に難ありの奴は誘ってないから安心してほしいと笑っていたので、信用して大丈夫だと思う。


 職人系の人たちが結構来てくれたので、俺としては非常に助かる。



 せっかく来てくれたこの人たちの為にも、一日も早く住みやすい環境を整えてあげないといけない。


 とりあえずは、組むのが簡単な丸太小屋をいくつも作って、生活拠点にすることにした。


 ラッシュと木工職人セザイさんが中心となって、みんなに指示を出して、組み上げることにした。


 実際に作業を始める前に、俺は少し気になっていることを、改めてみんなに問う。


「皆さん、この魔境で暮らすことにして、本当に良かったのですか?」


「ヤマト殿、ご心配なさらなくても大丈夫です。

 我々は、何度も話し合いました。

 皆この最果ての街での暮らしに、夢も希望も持てないでいました。

 ただただ、生きていただけでした。

 でもあなたが、我々に希望をもたらしたのです。

 皆、新天地で、夢を持って生きる決意をしたのです」


 マッカランさんがそう言うと、人々が一様に頷く。


「ありがとうございます。

 実は、ここに国を作ろうと思っています。すでに『ショウナイの街』の守護には、国を作ったと宣言してきました。

 皆さんは、この国『ヤマダイ国』の大切な国民です。

 私がなんとしても守ります」


 つい熱が入ってしまい、そんな挨拶をした。


「対外的には、私が国王と言うことにはなりますが、陛下と言うのはやめてください。人数も少ないですし、変な気持ちです。どうか普通にヤマトと呼んでください」


「ですが、国を作ったのに、そういうわけにはいきますまい」


 ラッカランさんが困り顔だ。


「いえ、せっかく来ていただいたのに、陛下なんて呼ばれると距離がある感じで、あまりいい気持ちじゃないんですよ」


 それが俺の正直な気持ちだ。


 傍で聞いているクラウディアさん達は、苦笑いをしているが。


「そうですか……。ではせめて……ヤマト様とお呼びさせてください」


「そうですね。それならまだ何とか……」


 陛下と呼ばれるよりは、だいぶマシだ。


「では、そう呼ばせていただきます」


 ラッカランさんがそう言うと、他の皆さんが、嬉しそうに「ヤマト様」とか、声をかけてきた。


 なんかこんなチヤホヤされる感じ、慣れないから、どう対応していいかよくわからない。

 変な気分だ。




 ◇




 翌日の夕方、丸太小屋がかなりできて、ちょっとした村っぽくなってきた。


 ちなみに、昨日突然、街の住民の半数がいなくなった『ショウナイの街』は、当然のごとく大変な騒ぎになっていたようだ。

 日中に、少し様子見に出てもらったのだ。


 クラウディアさんとラッシュの話によれば、北門から衛兵たちが出て来たらしいが、すぐに引き返してしまったそうだ。


 クラウディアさんの話では、門を出てすぐのところに、何か痕跡がないか、探しただけではないかとの事だ。


 それ以上奥への踏み込みは、魔物が怖いのと、俺が国を宣言したことから、控えたのだろうとも言っていた。


 報告を受けた感じからして、放っておいても良さそうだ。



 みんなで夕食の準備をしていると、見慣れない飛行物体がやって来た。


 どうやら魔法の伝書鳩のようだ。


 クラウディアさんのところに、知らせを届けに来たらしい。




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