78.伝書鳩の魔法道具によってもたらされた驚きの情報
クラウディアさんの下に、伝書鳩の魔法道具の伝書鳩がやって来た。
遠くから見ると普通の鳩っぽく見えたが、近くで見ると魔法道具的な機械的なフォルムだ。
巣箱型の装置があって、それを目指してやって来るのである。
したがって、設置してある巣箱型装置に止まった。
胸のところにカバンをぶら下げていて、その中に手紙が入っている。
手紙の内容を、クラウディアさんがみんなに説明してくれた。
手紙の主は、デワサザーン伯爵である。
王都での情報を、デワサザーン伯爵家の王都屋敷の執事長が入手し、伯爵にもたらされ、そのまますぐに、ここへ飛ばしてくれたようだ。
クラウディアさん曰く、伝書鳩の魔法道具のメインパーツの伝書鳩は、一体しかないので、高速で飛ばしても複数箇所への連絡には時間がかかってしまうとのことだ。
それを考えると、この情報は、勇者ジャスティスが『魔王』の『称号』を得て、その後悪魔が現れたあの日の情報のようだ。
伝えられている内容は、その後の国王すなわち王国の対応についての情報だった。
そしてその内容は、驚くべきものだった。
魔王及び悪魔の出現を受けて、その対策を王国は取るわけだが、その第一の対策というのが、俺から聖剣を奪還するというものらしい。
まぁ普通なら、理屈が通っている。
魔王や悪魔といった特別な存在に対し、特効を持っている聖剣が必要と考えるのは、筋としては通っているし、無理もないことだ。
だがすでに俺のものだし、聖剣の奪還を第一に掲げるのは、ちょっと違うんじゃないかと思う。
考え方としては、ありと言えばありなのだが、ただ聖剣を取り返せば良いと言うものではないと思う。
現に『勇者の可能性』だったジャスティスは、聖剣の力を引き出せていなかった。
おそらく、次の王国認定勇者であるジェイスーンが強硬に、聖剣の奪還を主張したんだと思うが、あいつにしたって、聖剣の力を引き出せるかどうかは未知数だ。
と言うより、ジャスティスの二番煎じみたいな奴だから、奴にも使いこなせないだろう。
もし俺が反対の立場なら、まずは魔王に対抗する戦力を確保するという意味でも、聖剣の使い手を確保すると思う。
もちろん強制的にではなく、協力を依頼するというかたちでだ。
だが、そんな発想は、王国にはなかったようだ。
まぁ今更協力してくれと言われても、そんな気にはなれないので、それはそれでよかったのだが。
話の内容からすれば、次期認定勇者、もうすでに認定されているかもしれないが、ジェイスーンが、一個大隊を率いてやって来るらしい。
この情報の経路から考えると、決定から数日は経っているはずだから、いつ来てもおかしくない。
数日以内、遅くても四、五日以内には来ると思った方がいいだろう。
「まったく、王国には呆れますわね」
「本当です。また来るって言うなら、もうやっつけちゃいましょうよ!」
「ほんとだよねぇ、エドガー将軍がちゃんと報告を上げたのに、ほとんど無視だもんね」
「確かに。ヤマト君の実力を、見誤ってるわね」
クラウディアさん、ラッシュ、イリーナ、フランソワも呆れている。
「ヤマト様、我々にできることがあれば、何でも申し付けてください」
勇ましい顔つきでそう言ってくれたのは、ラッカラン隊長だ。
いつの間にかヤマト殿から、ヤマト様になっている。
まぁいいけど。
「大丈夫です。王国軍は、我々でなんとかします。
皆さんは、この拠点を守ってください。
我々がここを離れている間に、周辺から魔物が出てくる可能性もあります。
一般の人たちは、戦いに巻き込めないので、その人たちの護衛をしながら、ここを守ってください」
「はい、分りました。これから鍛えあげて、なるべく早く皆さんと共に戦えるようにします」
ラッカラン隊長が神妙な面持ちでそう言うと、周りにいた衛兵改め守備隊員たちが、大きく頷いた。
おそらく、今の自分たちの実力では、俺たちの足手まといになると冷静に判断したのだろう。
その客観的な判断力は素晴らしいと思う。
確かに今のレベルでは、かなり危険だし、彼らに気を使った戦いは俺たちにとって負担になる。
だが、本人たちが言うように、これから精進して強くなってくれればいい。
今は焦る必要は無いのだ。
「『大剣者』、『ショウナイの街』の動きに注意が必要だ。子犬、いや狼ユニットたちを放って、哨戒任務を頼む」
俺は、『大剣者』に指示した。
『クマゴロウ』内蔵の狼ユニットたちを使って、『ショウナイの街』の北門周辺の情報収集をしてもらうのだ。
これで、王国軍がもし現れても、すぐに『大剣者』が情報を把握できる。
それから、もう一つ手紙があった。
おそらく元々出そうと思って、書いていたものだろう。
その内容は、クラウディアさんが気にかけていた『勇者選抜レース』第三位パーティーの勇者候補だったミーアさんのことだった。
デワサザーン領に入ったという知らせである。
ミーアさんは、伯爵邸に呼ばれて、伯爵と話をしたそうだ。
彼女の希望は、故郷である『トブシマー』に帰ることだったらしい。
ただそんな中で、勇者ジャスティスが魔王となったこと、悪魔が現れたことを伯爵から知らされ、彼女は、クラウディアさんの元を一度訪ねるという決意をしてくれたとのことだ。
そして驚くべきことを、打ち明けたのだそうだ。
なんと彼女は、『勇者』の『称号』を得ているというのである。
『勇者選定機構』をクビになり、故郷に帰る途中で、路銀稼ぎのために迷宮に入っていたところ、勇者ジャスティスに見捨てられたサポート部隊を、命がけで助けたとのことだ。
その後に、『勇者』の『称号』を取得していたのだそうだ。
『勇者の可能性』が、見事に『勇者』に花開いたわけである。
『魔王』の『称号』に対抗するかのように、『勇者』の『称号』が現れてくれたわけだ。
もっとも、時系列的にいうと、ミーアさんの方が先に『勇者』の『称号』を取得していたようだが。
この状況下で、『勇者』の『称号』を得た者が現れているというのは非常に大きい。
クラウディアさん達は、まさかの展開に、かなり驚いているが。
それでも、気にかけていたミーアさんが、『勇者』の『称号』を得たことは、素直に嬉しいようだ。
それからもう一つの驚きは、ジャスティスに見捨てられたサポート部隊の人たちを助けていたということである。
その人たちは、もともとは第二位の勇者候補パーティーのサポート部隊の人たちなのだ。
当然第二位の勇者候補パーティーだったイリーナとフランソワは知っている人たちだし、ラッシュも担当は違えど同じサポート部隊ということで、知っている人たちなのだ。
その人たちの生存も、かなり嬉しい情報というわけである。
イリーナたちの話では、王国では死んだとされているとのことだった。
それにしても、『勇者』の『称号』を得たというのは、本当に素晴らしい話だ。
あまり詳しくは書かれていないが、命がけでサポート部隊の人たちを救ったようなので、何かそういう行いが、『称号』の取得に影響するのは、間違いないのだろう。
『勇者』の『称号』を得たミーアさん……俺は当然見知っているが、まともに話をした事は無い。
早く会ってみたいものだ。
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