17.三度目の失敗(勇者サイドストーリー)
勇者ジャスティス視点です。
聖女などと巷で言われているユーリシアは、勇者であるこの俺様に対する侮辱でしかない発言をした。
今の俺たちには実力がないといい、実力があるから『勇者選抜レース』で一位になったと反論した俺に、それはヤマトがいたパーティーだったと、ふざけたことを言った。
「ヤマトだと! なぜあいつの名前が出てくるんだ!?」
「やっぱり何もわかっていないようですね」
あきれたような眼差しを向けるユーリシア、まったく腹が立つ。
「ヤマトくんのスキルのお陰で、私たちパーティーは全員受けたダメージを半分にできてたんです。それが、どれほど大きかったか、この状態でも気づかないんですか?」
「はぁ!? 馬鹿を言うな! 半分……確かにそうだ、半分で済んだ。だが所詮半分だ。ダメージを抑える程度の効果しかなかったんだぞ!」
「でも今にして思うと、その半分のダメージっていうのがかなり大きかったと思う。ダメージを受けても、戦い続けられたし。継続戦闘能力が格段に違うってのがよくわかったよ」
魔法使いのマルリッテまでが、そんなことを言い出した。
「お前、何言ってんだ! お前だって、あいつは無能で役立たずって言ってたじゃないか!」
「確かにそう思ってたんだけど……昨日今日のこの惨敗じゃ……。それに実際自分がダメージを受けてみてわかった。敵の攻撃が当たるのは、怖いことなんだって。今までなら、なんとか踏ん張れた傷が、致命傷になっちゃう。やっぱりヤマトの力は大きかったんだよ……」
「ふざけんなよお前ら! あのクズの力が大きかったなんて、俺は認めないぞ! お前らが力がないからだ! 今回の失敗は、タンクのガードルが持ちこたえられず、すぐに戦闘態勢が乱れたからだ。それに弓使いのボールドウィン、あいつも動きが悪すぎる。ガードルのフォローができてなかった。だから、ダメだったんだ。ヤマトの力なんか関係ねぇ!」
「ホントにそう思ってるの?」
「死んだ仲間に対してあんまりじゃないの?」
「ユーリシア、マルリッテ、お前らいい加減にしろよ! そうだっつってんだろう! よしわかった! じゃぁ仕切り直しだ! 補欠の第二パーティーから、タンクと弓使いを補充する。それで充分戦える! ヤマトの力なんて関係ないってことを、明日証明してやるよ」
「ふう、好きにするといいわ」
「私は……明日の戦いに参加するのは、ちょっと遠慮したい。死にたくないし、囮にされるのも嫌だし……」
こいつ……ボールドウィンを囮にしたことを、暗に批判してるようだ。
そのお陰で、自分だって助かったくせに。
「なんだと!? マルリッテ、お前クビになりたいのか!?」
「いいよ、クビでも……」
「ふん、戦うのが嫌だからって、簡単に辞められると思ってるのか。明日の迷宮攻略に参加しないと言うなら、お前だけじゃなくお前の家族も、罪人にしてやるぞ!」
「え、な、なんでそんな……」
「はいはい。ジャスティスわかったから。そこまでにして。マルリッテ、ここはジャスティスに従いましょう。ジャスティスの言うことが正しいか、明日わかることだし、頑張って参加しましょう」
ユーリシアが取り成したから、俺も矛を収めてやる。
まったく……最近どいつもこいつも、俺をイライラさせる奴ばかりだぜ。
くそ!
とにかく明日だ。
明日の戦いで、今まで通り戦えるってことを証明してやるぜ。
◇
くそくそくそぉぉぉぉ!
一体どうなってるんだ!
今日もダメだった。
途中で撤退せざるをえなくなった。
なんで前のように戦えないんだ!
新たに加えた二番手パーティーのタンクと弓使いも、大した事なかった。
昨日死んだガードルとボールドウィンと大差ない。
戦闘陣形が崩れ、それぞれの役割が機能しなくなったので、撤退せざるをえなくなったのだ。
死者こそ出なかったが、酷い戦いだった。
「勇者ジャスティス、あんた、うちの勇者ジェイスーンよりも全然たいしたことないな。あんな魔物相手に苦戦するなんてよ。あんなに倒すのが遅いんじゃ、タンクの俺が先に死んじまうじゃねーか!」
「ほんとだぜ。俺たちのパーティーが二位で、あなたのパーティーが一位になったのが、信じられないぜ」
今日入ったばかりで、機能出来なかったことを棚に上げて、このタンクと弓使いは、俺に喧嘩売るのか!?
「なんだとお前ら! ふざけやがって、俺をなめてんのか!?」
「なめてるも何も、本当のこと言っただけだ」
「俺たちは、王命で仕方なくここに来たが、正直、勘弁して欲しいぜ。死にたくねーぜ」
「なんだと! 臆病者め!」
「そんな言われよう……心外だな。力のないリーダーとは組みたくないだけだ」
「その通りだ! 仮にそれが認定された勇者だとしてもな!」
「お前ら……死にたいようだな」
「ふん、クビにするのは得意だそうじゃないか。クビにしてくれないか?」
「そうしてくれると助かるぜ。俺たちからは、辞められないからな。王命に背くことになっちまう」
「ほんとにクビにしてやろうか? クビと同時に、お前らは犯罪人だ。『北端魔境』に追放してやるぞ!」
「ちっ、いい性格してるな」
「特殊なスキルを持ってたメンバーを、一方的にクビにして、追放したってのは本当のようだな」
「それがどうした?」
「そいつがいなくなったんで、この体たらくなんじゃないのか?」
「もう噂が回ってるぞ」
「ふざけるな! ヤマトなんか関係ねえ! ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなぁぁぁ!」
こんな奴ら、殺しても構わない!
代わりは、いくらでもいる。
俺は、剣を抜いて斬りかかる——
——ガチンッ
おっと、タンク野郎が盾でガードした。
「両者やめなさい! 殺し合って、何の意味があるのです」
ユーリシアが割って入った。
またこの女か。
「お前は、引っ込んでろ!」
「いいえ、引っ込みません。どうしてもと言うなら、私からお斬りなさい。人々から聖女と言われている私を斬ったら、勇者とてどうなるか……?」
「お前、いい気になるなよ! 俺にできないとでも思ってんのか!」
「ほんとにできるかしら? あなた一人で……」
ふん、タンクと弓使い、そしてマルリッテまでが、俺に対して構えをとっている。
全員で俺に抵抗する気か。
こいつら全員、斬り殺してやりたいが……さすがにそれは大事になるか。
「昨日も言ったじゃない。いい加減、認めたらどうです。
ヤマト君の力は、大きかったのです。
彼がいて、彼のスキルが発動している前提で戦っていた私たちは、そのスキルに甘え、防御も甘ければ、隙も多い、そんな戦いをしていたのです。
そんな戦いをしていても、あのスキルのお陰で、そして彼の的確な回復薬散布のお陰で、戦えていたんですよ」
せっかく我慢して剣を収めてやった俺に、追い打ちをかけるように、ユーリシアがまたヤマトの話を持ち出す。
「ふざけるな! なんで追放したのに、いつもあいつの名前が出るんだ! くそ、くそ、くそ、くそ、くそがぁぁぁぁ!」
俺の怒りは、全身を駆け巡り、頭の中が真っ白になった。
あまりの怒りのせいか……意識も遠のく……
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この物語は、私の書いているもう一つの連載「異世界を魅了するファンタジスタ 〜『限界突破ステータス』『チートスキル』『大勢の生物(仲間)達』で無双ですが、のんびり生きたいと思います〜」と、同一世界線の違う時代の違う場所の物語です。
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