18.ほくそ笑むユーリシア(勇者サイドストーリー)
前半は、三人称視点です。
後半は、勇者ジャスティス視点です。
「皆さん、勇者ジャスティスは、気を失ったようです。今日は、引き上げましょう。新たなサポート部隊のみなさん、ジャスティスの搬送をお願いします」
聖女とも評判の回復担当ユーリシアが指示を出す。
勇者ジャスティスは、激昂し、そして気を失ったのだ。
その身に絶望の種を宿し……。
「これが勇者だなんてな」
「ジェイスーンも、酷い奴だが、こいつよりはマシだぜ」
二番手のパーティーから編入されたタンクポジションのタテゲルグと、ロングアタッカーポジション弓使いのキューボウドが吐き捨てた。
「あなたたち、ジャスティスにあんなこと言って大丈夫? 何されるかわかんないよ」
魔法使いのマルリッテが、少し心配気に言葉をかける。
「ああ、もうどうでもいいよ」
「そうだなぁ。このままじゃ、死ぬだけだ」
「でも……クビになるだけじゃ済まない可能性が高いよ。ヤマトは、本当に罪人が送られる『北端魔境』に送られたんだから。死刑宣告と一緒だよ。私も辞めたいって言ったら、家族まで罪人にするって脅されたし」
「けっ、やっぱりゲス野郎だな」
「呆れるぜ」
「今更ながら、私もあいつのクズっぷりに、驚いているところよ」
「今までは、俺たちのリーダージェイスーンをクソ野郎だと思っていたが、下には下がいるんだな」
「ああ、ここに来て唯一良かった点は、今までクズだと思ってたジェイスーンが、少しはマシで、俺たちは一番酷いパーティーにいたわけじゃないってことが、わかったことだぜ。皮肉なもんだ」
深いため息をつく、タテゲルグとキュウボウド。
「まぁ何とかなりますから、もう少しだけがんばりましょう」
ユーリシアは、三人の肩を叩き、明るく励ますのだった。
だがそれは、あくまで彼女の表の顔だった。
迷宮から引き上げる部隊のしんがりを務めながら、ニヤリと悪い笑みを浮かべるユーリシア。
「ふふふ。これは思ったよりも、早く事が運びそうね。
あの馬鹿のジャスティスがヤマトを追い出したお陰で……一気に落ちぶれたからね。プライドだけは高いジャスティスが、闇に落ちるのは時間の問題、いやもう今日で落ちたとも言える。……ふっふっふ」
思わず呟いたが、当然誰にも聞かれていない。
そして上機嫌な彼女は、さらに呟く。
「ふっふっふ、まだ『勇者』になっていない『勇者の可能性』だと言うのに、いい気になっているのは好都合。
国は勇者と認めたが、全く以て『勇者』の素養はない。
そもそもなぜ、ジャスティスに『勇者の可能性』という称号がついたのか……?
この世界のシステムが、故障しているのかもしれない。
まぁ神の気まぐれかもしれないけど。
もっとも、そのお陰で、あの方が受肉する時期が早まりそうだわ。神にも感謝をしないと、ふっふっふ。
勇者と魔王は紙一重。
コインの表裏の関係。
『勇者の可能性』が闇に落ちれば、それすなわち『魔王の可能性』。
ジャスティスが、『魔王の可能性』に目覚めるのは間違いないでしょう。
あの馬鹿の素養は、魔王に適してる。
まぁそんなこと言ったら、歴代の魔王が怒るかもしれませんが。
いずれにしろ、大きな戦乱を起こす為の重要なパーツなのは間違い。
しっかりフォローして、闇に落とさないとね……」
一人ほくそ笑むユーリシアであった。
◇
俺は、勇者ジャスティス。
なぜこうなったんだ?
『勇者選抜レース』を勝ち抜き、勇者として認定され、目障りなヤマトを追放し、最高の人生を始めようと思った矢先……。
たかが迷宮での魔物討伐訓練でつまずくとは。
それもこれも、あのヤマトがいないせいだと言うのか?
あの忌々しいユーリシアの言う通りなのか?
確かに改めて考えてみれば、受けたダメージを半分引き受けてくれるというのは、大きかったかもしれない。
致命傷となるダメージでも、緩和されるわけだしな。
あいつは、パーティーの中に置いておくべきだったか。
パーティーの中で、奴隷のようにこき使えばよかったのか。
俺としたことが、判断をミスったかもしれんな。
あいつが、目障りすぎたことが悪いんだ!
まぁものは考えようだ。
こうなったら……あいつを呼び戻すか。
……生きてればの話だがな。
俺様のパーティーのメンバー自体、しっかり腕の立つ奴を選び直したり、育て直す必要があるが、とりあえずあいつを呼び戻して、ダメージを半分にするのが一番手っ取り早い。
奴隷として……そうだ! 犯罪奴隷にしよう。
俺の奴隷にしてやる。
そして、言うことを聞かせればいい。
目障りなら、あいつを毎日いたぶればいい。
クックック、それがいいな。
早速、陛下と宰相に話をしなければ。
◇
はぁ全く疲れた。
国王陛下も宰相も、この三日間の迷宮訓練の結果を聞いて動揺してやがった。
まったく、肝が据わってないというか、器が小さいというか。
まぁそのほうが御しやすいがな。
勇者である俺を信じて支援してくれれば、絶対に大丈夫だと何度も力説したら、最後には納得したからな。
そしてヤマトは、犯罪奴隷として送還させることになった。
あれから何日も経ってるから、生きている可能性は低いがな。
でも奴のことだ……うまく隠れながら、弱い魔物を狩って生き残っていることもあり得る。
はっはっは、またヤマトをこき使ってやるぜ!
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この物語は、私の書いているもう一つの連載「異世界を魅了するファンタジスタ 〜『限界突破ステータス』『チートスキル』『大勢の生物(仲間)達』で無双ですが、のんびり生きたいと思います〜」と、同一世界線の違う時代の違う場所の物語です。
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