15.連敗への道(勇者サイドストーリー)
勇者ジャスティス視点です。
「今のサポート部隊の事だけど……」
回復担当のユーリシアが、我慢して矛を収めてやった俺に、呆れたような顔を受ける。
こいつ……今までは感じなかったが、俺をなんだと思ってるんだ。
勇者様に対する尊敬が全く感じられない。
「なんだよ、ユーリシア、サポート部隊の話は、今終わらせただろ!」
「ジャスティス……あなた、サポート部隊なんて興味ないから、見てなかったでしょうけど、隊長はじめほとんどの者は、無能よ。それを、あの亜人の女の子が、一人でフォローして回してたのよ。他のメンバーなんて、あの子に仕事を押し付けて、のんびり楽してたのが実情よ。その子をあなたがクビにしたんだから、あのサポート部隊が機能しないのは当然よ」
「はぁ? あの小娘が!? そんな話が信じられるか!」
「信じなくてもいいけど、それが実態だったのよ」
「ふん、お前の話が本当かどうかはともかくとして、あいつらが使えねぇ奴らだってのは、確実なようだな。あいつらは、今すぐクビだな」
「そのほうがいいかもしれないわね。私たちの戦いにも影響が出ちゃうし。今ならまだ『勇者選抜レース』で二位になったパーティーのサポート部隊が残ってるから、それと入れ替えた方がいいかもね」
「ふん、やっといいこと言うじゃねぇか。それがいい。選抜レースで二位だった勇者候補パーティーとそのサポート部隊は、欠員が出たときの補欠として、残ってる。そのサポート部隊を、俺たちにつけさせればいい。わはははは」
これは愉快だ。
こんな役立たずなサポート部隊は、すぐクビだ。
交代要員なんか、いくらでもいるんだよ、馬鹿どもめ!
そしてユーリシア……お前のお陰で、いいことを思い出したぜ。
第二位の勇者候補パーティーが、そのまま補欠として残っている。
あのクソ勇者候補は気に入らなかったが、パーティーのメンバーはそれなりに使えるだろう。
今後も、今日みたいな不甲斐ない戦いをするようなら、パーティーメンバーも入れ替えてしまえばいい。
特に俺に喧嘩を売ってきたボールドウィン、あいつなんかすぐ変えてやってもいいくらいだぜ。
イライラしていた気持ちが、少し晴れてきた。
勇者である俺さえいれば、他の人間などいくらでも替えが効く。はっはっはっは。
「ジャスティス、なに笑ってんの?」
ユーリシアが訝しげな表情で、俺を見てきた。
いかんいかん、一人で悦に入っていたようだ。
「気にするな。お前がいいことを教えてくれたから、嬉しくなっただけだ。はっはっはっは」
◇
翌日、俺勇者ジャスティスは、再び迷宮に来ている。
迷宮での魔物討伐訓練を、もう一度行うのだ。
昨日のような調子で終わったんじゃ、寝覚めが悪くてしょうがない。
全く使えなかったサポート部隊は、全員クビにしてやった。
能力のない奴らだから、サポート部隊をクビにしただけでなく、軍籍も剥奪してやった。
『勇者選定機構』の人員は、すべて軍人扱いで軍籍を持っているのだが、それを剥奪してやったから、他の部署で働くこともできない。
本当のクビだ!
ヤマトのように、『北端魔境』送りにしなかっただけ感謝してもらいたいものだ。
たとえ野垂れ死ぬことになっても、『北端魔境』で魔物に食い殺されるよりはマシだろう。
今日の迷宮入りには、第二位の勇者候補パーティーのサポート部隊を召集した。
サポート部隊の補欠がいなくなり、『勇者選定機構』の長官は渋い顔をしていたが、サポート部隊の人員などいくらでも補充がきくだろう。
召集されたサポート部隊員たちは戸惑ってる風だったが、勇者である俺様が直々に喝を入れてやったから、気合を入れて働くことだろう。
あとは、俺のパーティーメンバーだ。
今日こそは、しっかり気合いを入れてやってもらう。
今日の迷宮攻略は、昨日の憂さ晴らしという意味もあるが、パーティーメンバーの振り落としという意味もある。
ダメな奴は、ヤマトのように追放してやる。
代わりに補欠の二番手パーティーから入れればいいからな。はっはっはっは。
さてと……魔物を狩りまくるか!
◇
ぐふっ、……角の攻撃をまともに受けた。
なぜだ……なぜこんな状況に……。
相手は、いつも倒しているバッファローの魔物だぞ。
確かに三体と数が多いし、デカい個体だが……今までなら、こんなもの……軽くひねり潰していた。くそ!
勇者装備の鎧のおかげで、貫かれることはなかったが……あちこちの骨が折れたようだ。
……体に力が入らない。
口から溢れる血で、呼吸も満足にできなくなってきた。
……内臓がやられたな。
まともに攻撃を受けたダメージが大きい。
だが今までも……こんな感じで攻撃を受けてしまった事はあった。
だが……これほどのダメージを受けた事は無い。
ふっ、あの役立たずのくそヤマトのちんけなスキルも、少しは役立っていたってことか……。
まぁ所詮、程度の問題だがな……。
ダメだ、息が……。
ユーリシアは、何をやってるんだ?
早く俺を回復しろ……。
目が霞む……。
俺は死ぬのか?
まさか勇者になった俺が、死ぬのか……?
「回復魔法——ハイヒール」
ん……体が治っていく。
ギリギリだな……ふざけやがって。
「やっときたのかユーリシア」
「ジャスティス、ここは一旦退くしかないわ」
「なに馬鹿なこと言ってる!? 相手は、所詮バッファロー魔物だ。態勢を立て直して倒すんだよ! 二日も連続で無様な姿が見せられるか!」
「あなた、状況が全く理解できていないのね。よく周りを見て」
そう言われて、改めて周りを見て……初めて気がついた。
タンクのガードルが、全身血だらけでぐったりとして動かない。
魔法使いのマルリッテと弓使いのボールドウィンも、傷を負って岩影に隠れている。
なんてことだ……。
まともに戦える奴が、一人もいないのか……。
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この物語は、私の書いているもう一つの連載「異世界を魅了するファンタジスタ 〜『限界突破ステータス』『チートスキル』『大勢の生物(仲間)達』で無双ですが、のんびり生きたいと思います〜」と、同一世界線の違う時代の違う場所の物語です。
https://ncode.syosetu.com/n8768ff/
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