14.狂いだす歯車(勇者サイドストーリー)
「おい、ガードル、お前ふざけんな! なんだあの不甲斐ない戦いは! せっかくヤマトがいなくなって、効率よく魔物退治ができると思ってたのによ! 何やってんだ!」
「悪かったなぁ。だが俺が攻撃をまともに受けてなかったら、ジャスティス、お前だって危なかったはずだ」
「なんだと!? 攻撃を受けるのが、壁役のお前の仕事だろ! ふざけたこと言ってんじゃね! あんな攻撃で死にかけやがって、おかげで俺まで危なかったじゃないか!」
「なんだと……」
「見捨ててもよかったんだぞ! クビになりたくなかったら、次は気合入れて臨むんだな!」
まったく頭にくるぜ、壁役のあいつがしっかりしなかったら、戦う体勢が維持できないじゃねえか。
ヤマトという足手纏いがいなくなって、いい気分でいたし、一フロアの最短攻略記録を更新しようと思っていたのに……台無しだぜ。
迷宮を使ったいつもの定期訓練で、まさかこんなに苦戦するとは……。
正式な勇者として認定されたこの俺の顔に、泥を塗りやがって。
壁役のガードルが崩れたせいで、俺も大怪我を負ったし、他のメンバーも、軒並み大怪我だった。
まぁそれはあいつらが、ふがいない戦いをしたからだけどな。
一度の遭遇戦のみならず、一フロア攻略するまでのすべての戦いが、今までにない苦戦の連続だった。
お陰で、最短攻略記録どころか、過去最悪の記録になっちまった。
まったく最悪だぜ。
勇者である俺様には及びもつかないことは、わかっていたが……ほんとに役立たず共だ。
いくら『勇者選定レース』で勝ち残って、正式な勇者パーティーと認められたからと言って、気を抜きすぎなんだよ。
使えない馬鹿共め。
「マルリッテ、ユーリシア、ボールドウィン、お前らもふがいない戦いだったぞ。次はちゃんとしろよ。お前らだって、クビにできるんだからな」
「ちょっとジャスティス、何言ってんのよ! それを言うなら、あんただって一緒でしょ」
「そうですわ。前衛のあなたが数度の打ち合いで動けなくなったら、後衛の私たちだって、十分な攻撃態勢が取れないんですのよ。タイミングだって測れないですし……」
マルリッテにユーリシア、こいつら女だと思って、今まで甘やかしたのが間違いだった。
俺にこんな口を利くとは……
「おい、マルリッテ、お前の魔法がもっと早く的確に発動してれば、俺だって態勢を崩さなかったんだよ! それにユーリシア、お前は回復役なんだから、俺の態勢が崩れる前に、さっさと回復させろよ! お前らグズなんだよ! 今までは甘くしたが、正式な勇者パーティーになったんだ、これからはもっとしっかりやれ!」
「おいおいジャスティス、一度の迷宮訓練がうまくいかなかったからって、みんなに八つ当たりすんじゃねーよ。問題があるってんなら、リーダーのお前の問題だろ! 俺たちみんな死にかけたんだから! いくら正式な勇者パーティーに認定されたつっても、訓練で死ぬなんてまっぴら御免だぜ!」
「ボールドウィンふざけんなよ! そもそもはお前の弓が、的確に支援してりゃタンクのガードルだって、アタッカーの俺だって、もっと機能できたんだ。遠距離から攻撃できるんだから、頭使え! この馬鹿が!」
「はぁ!? お前にだけは、馬鹿と言われたくねーな! 勇者になったからって、頭が良くなったとでも思ってんのか!」
「何だと!? 貴様、俺を馬鹿にしてんのか!?」
「馬鹿になんかしてねーよ。真実を言っただけだ!」
「なんだと!」
「もうやめましょう。お互いを罵ってもしょうがないでしょ。サポート部隊の連中が見てるし、正式な勇者パーティーとなったのに、これ以上醜態を晒すのは良くないですわ」
……くっ、全く頭にくるが、確かにユーリシアの言う事にも一理ある。
「ふう……お前ら、もうこんな不甲斐ない戦い二度とすんなよ。今日のところは、このくらいで勘弁してやる」
「なんだと!」
「ボールドウィン、もうやめて。この話は終わりにしましょう」
「ふん、しょうがない、ユーリシアの顔を立ててやるか……」
「ジャスティス様、撤収の準備ができました」
間の抜けた声で俺に報告したのは、サポート部隊の隊長だ。
名前は何だったか……まぁそんなことはどうでもいい。
「おい、お前、なんだ今日の動きは! 全てにおいて鈍いし、必要な物資も的確に補充できてなかったぞ! 大体、数が足りねぇじゃねえか! 死にたいのか!?」
「……も、申し訳ありません。突然メンバーが一人欠けてしまって……」
「はぁ!? メンバーが一人欠けた? それだけで、こんなに動きが違うってのか? 何言ってんだお前!」
「そ、それはそうなのですが……いろんな分野を担当してた者が抜けたもんですから……」
「はぁ!? 抜けたのは一人なんだろう? サポート部隊は、十人体制だろうが! 残り九人は何してたんだよ今まで!? 大体やめた奴っていうのは、あの馬鹿な亜人の小娘だろ!?」
「は、はい、そうです。……ジャスティス様が、急にクビにされたので……我々も混乱していて……」
「はぁ!? 俺が悪いとでも言いたいのか!?」
「い、いえ、そ、そういうわけでは……」
「まったく……お前、ほんとに死にたいのか?」
「い、いえ、す、すみません。どうかお許しを……」
「あんな小娘一人が抜けたくらいで、サポート部隊が機能しなくなるってことは……隊長のお前が能無しってことだ!」
「す、すみません……」
「次もこんな動きしかできないようなら、お前ら全員クビだ! お前らも追放にしてやるからな!」
「そ、それだけはご勘弁を……。次は抜かりのないようにいたします……」
「わかったら、とっとと行け!」
「は、はい」
「おいおいジャスティス、機能しないのは隊長のせいって言ってたが、俺たちのパーティーも機能しないのは、リーダーのお前のせいなんじゃないのか! ハハハ」
「なんだと、ボールドウィン!」
「ちょっとボールドウィン、もうやめなさいよ」
「だってそうだろ。人のことは言えても、自分の事は全くわかってねーじゃねーか!」
「なんだとボールドウィン! それ以上言ったら、お前も追放だぞ!」
「もうほんとにやめなさいよ」
回復担当のユーリシアが、強引に割って入ってきた。
こいつは聖女なんて言われているせいか、時々、並の女にはない迫力を出す時がある。
ここはこいつの顔立ててやるか。
それにしても……全くイライラするぜ。
迷宮攻略がうまくいかなかったせいで、俺のおまけに過ぎないメンバーたちが、勇者である俺様に反抗してきやがる……くそ!
読んでいただき、誠にありがとうございます。
ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。
評価していただいた方、ありがとうございます。
次話の投稿は、本日中の予定です。
もしよろしければ、下の評価欄から評価をお願いします。
励みになります。
ブックマークも、よろしくお願いします。
この物語は、私の書いているもう一つの連載「異世界を魅了するファンタジスタ 〜『限界突破ステータス』『チートスキル』『大勢の生物(仲間)達』で無双ですが、のんびり生きたいと思います〜」と、同一世界線の違う時代の違う場所の物語です。
https://ncode.syosetu.com/n8768ff/
もしよろしければ、そちらも読んでみてください。
よろしくお願いします。




