111.人々へのメッセージ
王都の人々に向けて、危機は去ったので安心するようにという話をすることになった。
本来は、国王がやるべき仕事だと思うが、当然のことながら、あんな国王にはできるわけがない。
またそんな資格もない。
『十神教会』の巫女長に頼まれたからと言うのもあるが、『日曜神 テラス』様から力を授かった以上、それに伴う義務としてやるべきだと考えたのだ。
まぁ義務というか、俺に課された役割という感じに考えている。
『天船』に搭載している装置を使って、王都の何カ所かに映像を映しだし、王都中に言葉を伝えることになったので、シーマ族長がその段取りをしてくれた。
その装置は、浮遊して動くフクロウ型の魔法道具だった。
見た目は、本物のフクロウのような質感を持っていたので、浮遊させないで飛行させれば、遠目にはただのフクロウに見えるだろう。
周りの風景と一体化して見えなくなるミラージュ機能というのが付いていて、それを発動すれば、姿が隠せるという優れものだ。
映像を映し出して音声を流すだけでなく、密かに映像の記録をすることもできるらしい。
『大剣者』が搭載している映像記録能力と、同じようなものだ。
この魔法道具の名称は、『撮影投影ユニット ボローン(フクロウ型)』というらしい。
ある程度の自律行動も可能なようだが、『天船』に各種搭載装置の操縦室があって、そこで操縦する事ができるのだそうだ。
今回は、ミーアさんが助けたサポート部隊十人が操縦することになった。
操縦自体はあまり難しくないようで、シーア族長が教えて、ぶっつけ本番になったわけである。
少しして、シーア族長が準備ができたと知らせてくれた。
すでに王都の各所、十箇所ほどに、ボローンが配置されているとのことだ。
俺は、俺用にセットされているフクロウ、ボローンに向かって、話しかける。
「王都の皆さん、私は『北端魔境』にある『ヤマト魔境台地王国』通称『ヤマダイ国』の王、ヤマトと申します。
以前は、この『カントール王国』の国民で、勇者パーティーにいた者です。
勇者ジャスティスは闇に落ち、魔王となって攻め込んで来ました。
私は、『日曜神 テラス』様の加護をいただき、『光の聖者』の称号を授けられました。
テラス様から賜った力を使い、魔王ジャスティスは討伐しました。
今回の襲撃は、終わったのです。
どうぞ安心してください。
ただ、過去に何度かこの国を、そして『ジパン群島』を巻き込んで起こった『魔王戦』が始まってしまったようです。
魔王ジャスティスは倒しましたが、残念ながら、まだ終わりではありません。
ですが、決して不安に押しつぶされないでください。
今後は私が、仲間たちとともに、皆さんを守ります。
皆さん、心を強く持って、生きて行きましょう。
身内を亡くされた方もいるでしょう、家を失った方もいるでしょう、ですが、残された者は、強く生きねばなりません。
目に見えない恐怖や不安で心を乱し、精神波動を下げる事は、裏で暗躍している悪魔たちの思う壺です。
どうか強い心で、悲しみを乗り越えてください。
希望を持って生きてください!」
俺は、思いの丈をぶちまけた。
俺の周りにいた兵士や文官たちは、俺の言葉が終わると大きな歓声を上げた。
王都全域でも、人々の歓声が上がっていたようで、時間の経過とともに、地鳴りのように伝わってきた。
映像を投影している王都各所の状況を確認したシーア族長の話では、人々が熱狂し、「ヤマト様」とか「光の聖者様」とか叫んでいて、大変な状況になっているらしい。
まぁここ王城でも、兵士や文官たちがそんな声を上げていて、ほとんど会話もできないような熱狂状態になっている。
王都中が、こういう状態らしい。
英雄になったようで、少しこそばゆいが、これで王都の人々の精神的なケアも、少しはできたのではないだろうか。
後は、モーリス侯爵たちに任せれば良いだろう。
これで本当に一段落して、休憩できるかと思ったのだが……今後の事についての話し合いを、改めて行いたいので参加してほしいとモーリス侯爵に頼まれた。
その話し合いの主要メンバーは、俺とクラウディアさんを始めとするパーティーメンバーともいえる仲間たち、そして『トブシマー』一族のシーア族長、デワサザーン伯爵、モーリス侯爵、フィルミーヌ巫女長、それから王城に駆けつけたエドガー将軍だ。
エドガー将軍は、王都での人々の避難誘導の主力になっていた第二大隊を率いていたわけだが、指揮を部下に任せ、王城に駆けつけたのだ。
そして俺を見るなり、片膝をつき感謝の言葉を述べてくれた。
最初に会った時とは全く違う対応で、少し戸惑ったが、俺も人々を守ってもらった感謝を伝えた。
そしてもう一人、エドガー将軍と一緒にやって来たのは、ジャスティスが最初に『北端魔境』に来た時に、同行していた中隊の隊長ランドルさんだった。
彼も片膝をつき、感謝の言葉を述べてくれた。
彼も、モーリス侯爵に賛同し、エドガー将軍とともに、独立部隊の中核メンバーとして、人々を守ってくれていたようだ。
そんな挨拶の流れで、モーリス侯爵が、同様に独立部隊の中核を担ってくれた幹部将校や協力してくれた文官、貴族を簡単に紹介してくれた。
簡単な挨拶が終わって、打ち合わせをするスペースに移動した。
通常は、建物内の会議室で行うわけだが、非常時なので中庭にテーブルと椅子を設置して行うことになった。
そしてそこに、一人のご婦人が現れた。
モーリス侯爵をはじめ貴族の人たちが、居住まいを正し、頭を下げた。
どうやら爵位の高い人のようだ。
もしかしたら、王族かもしれない。
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