08
さて、どうしたものか。
暗黒邪竜…物騒な名前のドラゴンだが、俺なら戦っても勝てると思う。
人間辞めてそうなステータスだしね、俺。
だから、いざとなれば俺がドラゴンと話し合うなり戦うなりして、カリナと契約してもらおうと考えてたんだけど…でも、女の子相手に戦うのはちょっとなぁ…
「…あなた、お腹減ってたのねぇ」
「んぐ、腹ペコだ!」
…アイテムボックス内の食べ物、全部食い尽くされそうだな。
カリナは甲斐甲斐しく世話を焼いている。
サマンサも、とりあえず危険はないものと判断したらしい。
見た目は俺らと同じくらいに見えるけど、幼体ってことはまだ子供なのか?
まさか、人化してたとは。
「ふぅ、生き返った〜…」
串焼き肉5本とホットドッグ、バナナ一房、締めにリンゴ。
アイテムボックス内の食料はスッカラカンだ。
「助かった、ここしばらくまともに食ってなかったんだ!」
「あら、腕怪我してるわ」
「薬草貼ってあるから平気だ!ヒールもかけたしな!」
そういや人も家畜も襲ってないんだっけ。
ベジタリアンなわけでもなさそうだし、いい子みたいだな。
食後のお茶を飲みながら、ドラゴン少女は周囲を警戒してるらしい。
どれどれ…探索魔法、効果最大。
「悪い、ちょっとトイレ。ゆっくりお茶飲んでてくれ」
「黙って行きやがれなのです!デリカシーなさすぎです!」
「ハハ、悪い悪い」
(ますた?)
「すぐ戻るよ」
◇◇◇◇
探索魔法に引っかかったのは、2人組。
おそらく…いや、ほぼ確実にドラゴンスレイヤー狙いの冒険者だろう。
インビジブル。
無属性魔法のひとつ、透明化。いわゆる透明人間だ。
距離は…2キロってところかな?
ちょうどいい、全力疾走したらどうなるか試してみよう。
風の抵抗を魔法で打ち消して…
よーい、ドン!
………結論。
ほんの10秒程でした。
息を殺して、数メートル先にいる2人組を観察。
若い男性冒険者だ。
「ちくしょう、どこ行きやがった!」
「毒矢がかすってるから、遠くには行けないはずだ」
毒矢?
そういえば腕を怪我してたな…
「あのドラゴンは俺たちが倒すんだ、そしてドラゴンスレイヤーになるのさ!」
「これで大金持ちだな、ひひっ」
この2人が悪い事をしてるわけではないんだけどね。
俺も、自分とハクのために譲るわけにはいかない。
カリナのためにも、ドラゴンスレイヤーは諦めてもらおう。
一応外套のフードで顔を隠して…
「あのドラゴンは俺の獲物だ」
「誰だ!」
「お前らに名乗る必要はない」
えーっと、こっちの圧倒的な力を見せればいいかな?
ついで腕力のチェックもしとこう。
近くに岩はないし…この木でいいや。
「よっと…」
すげぇ。
え、これ本当に俺がやったのか?!
直径50センチはあろうかという木が、簡単に引っこ抜けた。
「ば、化け物かよ…!」
失礼な。
サンダー・シャベリン。
宙に、無数の稲妻で出来た槍が浮かぶ。
ついでに、ファイヤーボールも2人の周囲に浮かべてみた。
脅しとしては充分なんじゃないかな?
よし、ダメ押しで…
「死ぬか、諦めるか、選べ」
一瞬で2人の背後に回って見せれば、それが決め手になったようだった。
「い、いつの間に…!わかった、ドラゴンは諦めるから、殺さないでくれ…!」
「………消えろ」
悲鳴を上げながら、転がるように走って逃げていく2人組。
近くには他の冒険者はいないみたいだから、ひとまず安心かな。
念のため、探索魔法は発動させたままにしておくか。
それにしても、俺って意識すればあんなに動けるのか。
己のステータスのハイスペックぶり、その一端が垣間見えた気がする。
いずれ、ちゃんと検証してみよう。
俺は家電やゲーム、何でも説明書を熟読してから使い始めるタイプなんです。
さ、早く戻らなきゃハクが心配してるかも知れない。
待ってろよ、ハク。
読んでくださって、ありがとうございます。




