07
テミルナ山に近づくにつれて、ちらほらと冒険者を見かけるようになってきた。
おそらく、みんなドラゴン狙いだろう。
中にはあからさまにこちらを牽制してくる連中もいる。
ドラゴンスレイヤーともなれば富も名声も思いのままらしいので、仕方ないのかな。
「失礼なヤツらなのです!」
「放っておけ、関わりあいにならない方がいい」
サマンサを宥めつつ、マイペースにドラゴンを探していく。
カリナたちの荷物は俺のアイテムボックスに入れてある。
「あぁ、何て可愛らしい…」
カリナはというと、満面の笑みでハクを抱っこ中。
今朝、ハクから抱っこのお許しが出たのだ。おめでとう。
探索魔法で周囲を探るも、今のところドラゴンらしい反応はない。
「うふふ、ハク様の肉球はピンクでプニプニですね〜♡」
(ぷにぷに?)
幸せそうで何よりだが、もうちょっとドラゴンに集中しような?
この辺りは他の冒険者もいないようだし、昼には早いが休憩するか。
◇◇◇◇
昼食は簡単に、フリントの町の屋台で買っておいた串焼き肉。
買ってすぐアイテムボックスに入れておいたから、熱々のままだ。
ちょうど小さな湖があったので、テーブルと椅子を出して皿を並べた。
湖のほとりで食事とか、ピクニック気分だな、これじゃ。
「サマンサ、お茶を淹れてくれ」
「ハイなのです!」
お茶を入れつつも、視線は串焼きにロックオン。
大丈夫、おまえの分は誰も取らないから。
「ヨシトのおかげで、ふかふかのベッドや美味しい食事…お世話になりっぱなしだわ」
気にしないでくれ、別に大して負担がかかってるわけじゃないし。
それに、ハクの事で少なからず負い目もある。
カリナには何としても、ドラゴンをテイムしてもらわなくては。
何より、俺とハクの平穏な生活のために!
(ますた、おにくー!)
「慌てて食べると喉に詰まるぞ」
「むぐぐ…み、みずっ…!!」
「言ってるそばからお前は…ほら水」
お約束だな、この駄メイドめ。
─ぐぎゅるる。
ん?
何だ今の音。
─ズリ……ズリッ………
─ぐぅ…ぎゅるる………
引きずるような足音と、唸り声?
何が起きてもいいように、ハクと俺たちに結界を張る。
サマンサもカリナを守るように身構えた。
ぐぎゅるるるる〜〜〜
「く、食い物…」
すわ魔物かと身構える俺らの前に現れたのは、ヨレヨレになった少女。
腰まである黒髪に、藍色の瞳。耳が尖ってるから…エルフ?
盛大に腹の音を鳴らしながら、どうやら俺たちの食事の匂いにつられたらしい。
敵か味方か、一応鑑定しとくか。
鑑定。
名前:ロザリア
種族:混沌邪竜 (幼体)
あ、ドラゴン見っけ。
読んでくださって、ありがとうございます。