03
「とりあえず、サマンサは放っておいて話をしよう」
「ええ、何があってもしばらく起きないと思うわ」
猫耳メイドェ……
「実は、私からひとつ提案がある」
「提案?」
「まず、君たちにはパーティを組んでもらいたい」
「どういう事?先生」
何でも、少し前からドラゴンの目撃情報があるらしい。
まだ幼い個体で、人や動物を襲うことはない。
ただ、家畜などが怯えており少なからず影響が出ているそうだ。
「獣王国において、ドラゴンという存在は神に等しい」
力強さを尊ぶ獣人の国では、その頂点に立つドラゴンは畏敬の象徴。
聖獣と別の意味で、崇められているのだという。
「幼い個体って、親は?」
「はぐれたのか、それとも死んだのか…親ドラゴンの目撃情報はないそうだ」
もしドラゴンを従魔に出来れば、カリナの名誉は保たれる。
「なるほどね…」
「そこに聖獣様とその契約者がいればどうなると思う?」
人々はこう考える。
聖獣様が、姫君をドラゴンテイマーに導いて下さったのだと。
聖獣様とその契約者が、獣王国にドラゴンをもたらしてくれたと。
「そうなると、俺とハクの安全も確保されるってわけですね」
悪い話じゃないよな。
「ただ、ひとつ問題があってね」
「問題って?」
「ドラゴンスレイヤーの称号目当てに、もういくつかのパーティが動き始めている」
「時間がないのね」
少し考える表情を見せていたカリナだが、意を決したようにこちらを向いた。
ピクピク動く猫耳に目がいってしまう。すいません。
「ヨシト、お願い」
猫耳美少女に潤んだ瞳で見つめられて、断れる男がいるもんか。
まぁ、俺とハクにとっても利がある提案だしな。
第一、ステータスでごり押しすればドラゴン相手でも負ける気はしない。
「ああ、手を組もう」
「ありがとう!」
カリナの笑顔は初めてみたかも。
これまでは、泣くか怒鳴るかだったしな。
尻尾もユラユラ嬉しそうに揺れてて、ちょっと和む。
「先生、ドラゴンはどこにいるの?」
「最後の目撃情報は、ここから馬車で半日…テミルナ山の麓だ」
「じゃあ夜営の準備もしなきゃ…」
「今日中に準備して、明日出発でいいか?」
「ええ、そうしましょう」
そういえば…
「なあ、その子もいくのか?」
ソファで熟睡中の猫耳メイド。
…あ、涎。
「大丈夫よ、サマンサはこう見えてすっごく強いから!」
「へぇ…」
暗殺術使うって言ってたな、たしか。
「ふへ……わたしのおいも…にゅふふ……」
「お、起きてる時はもっとしっかりしてるから…」
そっと目をそらすカリナと、苦笑するギルドマスター。
大丈夫かね、このパーティ。
「そうだ、君たちのパーティ名はどうする?」
「パーティ名か…」
話し合いの結果。
どうしても聖獣にちなんだ名前にしたいカリナに、俺が折れた。
『ホーリー・ホワイト』
ホワイトはハクの名前から。
カリナの聖獣への愛が重い。
もう好きにしてくれ…
読んでくださって、ありがとうございます。