表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
疲れたニートと優しき世界  作者: こねか
一章 行動することにこそ意味がある
25/30

2-16 邪龍戦2


黒無(クロナ)! 大丈夫なのかっ?」


 生樹が駆け寄って来た。さっきまでの自信はどこに行ったといいたいほど、暗い顔をしている。


「……オレの異能は知っているだろ。問題ねえよ。それより、お前こそ大丈夫か。さっきまでの自信はどこにいった?」


 邪龍の方に目をやると、ミーネが必死で戦っていた。だが、遊ばれている。剣は軽々と弾かれるのに対し、龍の攻撃をミーネはかろうじて避けていた。先ほど、黒無が受けた攻撃より遅い。壊れないように遊んでいるのだろう。加勢しに行きたいが、まずは生樹を立ち直らせるほうが先だ。


「忘れてくれよ……。さっきのは黒歴史だぜ。最近、なんか強くなった気がしてたから、勘違いしてたうよ……最強とかないわ……」


 突っ立ったまま、生樹が剣の柄をきゅっと握る。剣先が振るえた。魔剣はそれなりに重たいが、まともに扱えるくらいの筋力はあるようだった。異世界で生き残るれるよう努力したのだろう。こんな時だが、黒無は少し羨ましかった。努力が成果に繋がる。


「そんなお前に朗報だ。活躍のチャンスはまだあるぞ」


「でも、俺の異能は龍には効かなかった……」


「いいから聞け! 原理は省くが、この世界の龍種には異世界人の干渉型の異能は通じない。仕方ないことなんだ、さっきのは。そういう仕様だから。異能は使えるだろう? この結界を調べてみろ」


「俺の異能は調べ物はできないぞ……?」


「出られるか、やってみろ。オレが成功する未来は見えるか?」


「……いや、無いな。道はあるけど、やっている間に殺される」


 生樹の言葉に黒無は少し驚く。邪龍の結界から逃げる方法があるとは知らなかったからだ。逃走を禁じて、獲物で遊ぶための結界に逃げ道があるとは思ってもみなかった。


「ど、どこに結界の穴があるんだ? 教えてくれ!」


「地面の下の方だよ……この結界、どうやら金魚鉢を逆さまにしたような形をしているらしい」


「魔術は使えるか!」


「いや、俺は無理だ。お前は使えないのか?」


「使えたら、オレは今頃討伐者だ。くっそ、ミーネも魔術は使えないし、逃げるのは無理か……ああ、もうしゃーねぇーなぁっ!!」


「く、くろな?」


 急に頭をかきむしった黒無に生樹が手を伸ばす。その手を黒無が掴んだ。


「よし。確立の魔剣をミーネに渡せ。そんでもって、お前がミーネを導け。成功する道筋に、龍をぶった切れる道筋に、ミーネを乗せろ」


「無理だって! 他人の道筋なんて決めたことがないんだ! タイミングだって合うはずがない!」


「それでもやれ! 生き残るためにな!」


 ミーネが吹き飛ばされてくる。ごろごろと受け身を取って、黒無たちの横に立った。


「あーむかつくッあいつっ! 完全に遊んでるっ! あんた達、なんかいい案無いの! くっちゃべってるだけだったら蹴り飛ばすわよ!」


 ミーネはまだまだ元気そうだった。革で補強された服はところどころ切り裂かれていて、下のインナーが見えている。直撃してないこともあるが、耐刃性のインナーがミーネを龍爪から守ってくれていた。


「お前は諦めないな」


「あったりまえでしょ! もう二度と奪わせはしない! 奪わせてたまるもんですか!」


「……そうだよな。わるい」


 朱髪が吠える。黒無はその諦めない背中に、力をもらったのだ。一人だったら、絶対に諦めていた。


「という訳だ。生樹。諦めるって選択肢はない。

 ミーネ。今、その案を考えた。オレが時間を稼ぐ。生樹から話を聞いてくれ」


「待てよ、おいっ黒無!」


「他に策があるのなら、聞くが手短にな。オレは軍師じゃないんで、悪いがそれしか思いつかなかった。ミーネあと頼む。お前が鍵だ」


「分かったわ。あんたも諦めるんじゃないわよ」


 後手をあげて、黒無は邪龍のもとに歩いていく。律儀にも待っている(実際には、雑魚が足掻く姿を眺めているのだろうが)邪龍に笑いかけた。


「よう、クソトカゲさんよ。待たせて悪かったな」


「グルルルゥ……」


 邪龍の漏らした息から、悪臭が漂う。巨大な生物特有の獣臭さを感じた。


「あーもう、くせえくせえ。肉ばっか食ってやがるな。野菜食えや、せめて歯ぁ磨けやクソトカゲが。人に会う時のマナーがなっていないんだよ」


「グララララァアアアアッ!」


 言葉は通じなくてもバカにしていることは通じた。龍爪が黒無を襲う。

 黒無は半身で斬撃を受ける。


「グルゥ!?」


「ゲぽっ……き、効かねえよ」


 黒無には踏ん張る力はない。だが、吹き飛ばされるわけにもいかない。龍の相手をするためにも。だから、半身で耐えた。邪龍が加減していることも大きいが、結果が同じであれば理由なんてどうでもいい。


「てめえごときの攻撃でやられるほど弱かねぇんだよおッ!」


「グルルルゥ!!」


 二撃、三撃と黒無を斬撃が襲う。その全てを黒無は真っ向から受け止めた。


「……げぽっ、が、あ……ぺっ……クソッ、タレ……だな。もっと、強かったら、なぁ。こんなクソな役絶対逃げたのに」


「ガアァアアアア!!」


「おっと」


 噛みつき攻撃は回避する。後ろに崩れ落ちるように転がって距離を取る。黒無は筋力がないので、大地を蹴って、逃げることはできないためだ。


「ああ、くそ。血に土がついた。傷口が汚れんだよぉ……ほんと、クソッタレだわ。クソトカゲが。汚えし、痛えし……がぁっ」


 龍鱗の巨腕に弾き飛ばされる。近くの木に当たって、体中の骨が軋んだ。それでも腕を支柱にむりやり立ちあがる。


「……ゲホッゲホ、がァッ………ぺっっ。……口の中が、血で、やべえ、な。つーか、さっさと、しろよな」


 ちらりとミーネたちの方に視線をやった。ミーネが剣を構えて、踏み込んでは生樹に止められていた。


「生樹のアホがっ……。帰ったら、罰ゲームだあいつ」


「グルゥ?」


 邪龍の視線がミーネ達のほうに向く。


「まだ、そっちじゃねえよ!」


 転がっていた拳大の石を口に投げ入れる。黒無がどんな速度で投げても邪龍の体表の結界は抜けられないが、嫌がらせにはなる。


「ガギッ、グルルゥ……」


「はっ、石でも噛み砕いて、歯磨き粉にしやがれっ。これはおまけだ!」


 ついでに、土も放り込む。


「特製、土砂歯磨き粉だ! 腹でも壊しやがれ」


「グガァァアッ!!」


 邪龍の怒りの視線が黒無を完全に捉える。鈍重そうな巨体を振り向かせた。


「今だ!」


 生樹の声が響いた。邪龍が振り向こうとするが、もう遅い。


「いっっけぇえええーー!!」


 キィーンと音がした。

 甲高い、何かが弾かれる音。

 ちょうど、金属が弾かれるような音だった。


「……グルル」


 邪龍は未だ、健在だった。


「失敗、した……っ!?」


 ずれてしまった。やはり、タイミングを完全に合わせるのは無理だったのだ。


「ぎゃぎゃぎゃ」


 邪龍が嗤う。鉤爪を振り上げた。影が、黒無を襲う。

 黒無は何かに飲まれ、落ちていく感覚に落とされた。絶望が飲み込もうとする。

 だが、


「あああーーーぁッ!」


 キィンキィンキィンキン

 暗い世界に音が響く。ミーネが、輝いていた。

 連撃が乱れ咲く。剣が痛むのも構わず、一心不乱に魔剣を打ち付ける。邪龍がそんなミーネをあざ笑うように口をあけた。食べられそうなミーネのもとへ黒無が駆ける。


「ああああああああああああああッ!」


 叫ぶミーネに、ゆっくりと邪龍が腕をあげて、


「ミーネ避けろ!」


――振り下げる前に、真っ二つに切り裂かれた。


「危ないっ!」


 落ちてくる巨爪の下から、ミーネを突き飛ばす。ミーネが突き飛ばされて、横にずれた。代わりに黒無が下敷きになる。


「はぁはぁはぁ、あり、がと、クロナ……」


「……気にすんな」


 邪龍の下から、黒無が答える。今更この程度で、怪我するほど軟弱ではなかった。

 ミーネが事切れた邪龍を見据える。


「はぁはぁはぁ、悪いわね。私、諦めが悪いの」


 息を乱して、倒れそうな身体を剣で支えてそれでも、ミーネは勝ち誇って、笑った。


「私たちの勝ちよ。ざまーみなさい」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ