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第5話 Bランク昇級試験

「待ってたぜ、カイン。今回の報酬はオーガ10匹の討伐とその素材だな。討伐が合計で金貨1枚、素材が全部で金貨5枚。合わせて金貨6枚だ、受け取ってくれ」


「そんなに」


「やりましたわね、カイン。これであなたもミスリルの剣が買えますわね」


「このペースで毎日狩り続ければ、思ってたよりも早く家を買えそうだな。早速武器屋に行こうか、エリーゼ」


「魔物討伐クエストは山のようにあるから、また頼むぜ」


冒険者ギルドを出た俺たちは、昨日買い物をした武器屋で俺用のミスリルの剣を購入した。鉄の剣は買い取ってくれるとのことだったが、昨日金貨1枚値引いてもらったお返しに無料で引き渡した。


「さあ、今日もガンガン狩りますわよ!」


俺たちは毎日北の森に行き、魔物を狩り続けて10日経った。


「カイン、あんたら2人ともBランク昇級試験の受験資格を得たぜ。早速受けてみねえか?」


冒険者ギルドでいつも通り報酬を受け取っていると、グランが話しかけてきた。


「試験って何をやるんですか?」


「ギルドマスターである俺と戦ってもらう。俺は昔はAランクの冒険者だったんだ。ちなみにクラスは剣Aだ。俺と良い勝負が出来たらBランクにしてやるぜ」


「はい!私が先に受けたいですわ。いいですわよね、カイン」


エリーゼは元気よく手を上げて俺に問いかける。


「構わないよ。毎日たくさん魔物を狩ってきたんだ。上達した剣の腕前を見せてくれ」


「わかりましたわカイン。私の剣技を見せて差し上げますわ」


俺たちはギルド奥の訓練場に入った。そこでは何人かの冒険者らしき人たちが訓練をしていた。


「おまえら、ちょっと場所を貸してくれ。今からBランク昇級試験をやるからな」


「かわいい子だなー」

「グランさん、女の子相手だからって手を抜いたら駄目ですよ!」

「グランさん強いんだよなー、大丈夫かなあの子」


観客と化した冒険者たちが好き勝手言っている。グランとエリーゼは刃がついていない訓練用の剣を手にした。


「それじゃあ嬢ちゃん、試験を始めるぜ。いつでもかかってきな」


「行きますわよ!」


エリーゼがグランに向かって突進し、袈裟斬りをする。グランは右へ軽くステップをしてかわす。


「うらっ!」


グランがエリーゼの横っ腹に向けて斬りつける。それを見切っていたエリーゼは剣ではじく。ガキィン!と大きな音が鳴り響いた。


「はあっ!」


エリーゼは素早さを活かして連続で切り付ける。グランはそれをバックステップでかわす。


「なかなかやるな、嬢ちゃん!本気を出させてもらうぜ!」


グランの反撃。痛恨の一撃がエリーゼを襲う。エリーゼは剣ではじこうとするが、その重い一撃に耐えられず剣を落としてしまった。


「俺の勝ちだな嬢ちゃん。俺に本気を出させたんだ。Bランクに合格だ」


グランが剣の先端をエリーゼの喉元に当て勝利宣言をする。


「ぐ・や・じ・い・ですわー!」


エリーゼが悔しそうに泣いている。


「やっぱりグランさん強いなー」

「本気出してるグランさん久々に見た」

「泣いてる姿もかわいいなー」


観客がグランの強さを称賛している。


「エリーゼ、Bランクに合格できたんだ。良かったじゃないか」


俺は泣きじゃくるエリーゼを慰める。


「カイン!仇を取ってくださいまし!」


「わかったよ、エリーゼ。期待に応えよう」


「次はカインの番だな。あんたのステータスが本物なら俺じゃあ勝てそうもないし、最初から本気を出させてもらうぞ」


「魔法は使っていいんですか?」


「もちろんだ、俺は剣しか使えねえから魔法使い相手は苦手なんだがな」


「一瞬で終わらせますよ。グランさん、かかってきてください」


「言ったな。本気で行くぞ!」


ものすごいダッシュで突進してくるグランが斬りつけてくる。


「もらった!」


しかしグランの剣は空振りした。斬ったのは俺の残像だ。


「なにっ!」


「勝負あり」


俺はグランの後ろに立ち、剣の先端をグランの後頭部に軽く当てた。


「なんだ、今の?」

「グランさんが負けたの初めて見た」

「全然見えなかった…」


観客たちは呆然としている。


「負けたのか、俺は。今のは何だ?全然見えなかったぞ」


「瞬間移動の魔法を使いました。俺は空間魔法が使えるんでね。初見殺しとして有効な戦い方です」


「そうかい、ど派手に遠距離から火や風の魔法を使ってくると思ったんだがよ、剣と魔法の組み合わせとしては上出来だな」


「これで俺もBランクに合格ですよね?」


「ああ、もちろんだ。Aランクに合格させてやりたいが規定なんでな、Bランクとさせてもらう。Aランクの試験は受験資格を得てからまた受けてくれ」


「カイン、すごいですわ!」


エリーゼが俺に抱きついてきて頬にキスをしてくる。


「そうか、カインは空間魔法が使えたんだったな。瞬間移動ができるってことは転移の魔法も使えるんじゃねえのか?」


「ええ、使えますよ」


「その割には毎日森まで歩いて狩りに行ってたよな。転移の魔法で行けば楽だろう」


「悪目立ちしたくないのでね。俺は平穏な暮らしをしたいんですよ」


「そうかい、あまりに強すぎるのがばれると帝国に勧誘されるしな。気ままな冒険者を続けたいならその方が良いかもな」


「勧誘ですか?」


「ああ、最近の帝国はきな臭くてな。王国と停戦状態だが戦争を再開するんじゃねえかって噂もある。強い奴をかき集めてるんだ。それに加えて理由は分らねえが、魔物の数が最近増えてきてな、物騒な世の中になってきている」


「そうなんですか。目立たないように魔法は使わないようにした方が良さそうですね」


「Aランクに昇級しちまえば嫌でも目立つがな。時間の問題だろう。カインもそのうち勧誘が来ると思うぜ。断るのは自由だがよ」


「そうですか、勧誘が来てから考えるようにします。今はとにかくクエストをこなして金を溜めて家を買いたいんですよ」


「ほう、家を買いたいのか。家って言っても小さいのから貴族並みの大きい屋敷まであるからな。それはどうするんだ?」


「まだそこまで考えて無かったですね。買うのはAランクに上がってからにしようかな」


「カイン、私はあなたと一緒なら宿暮らしでも小さな家でも構いませんわ。あなたの好きなようになさってくださいまし」


エリーゼは俺に抱きつきながら甘くささやく。


「ともかく、これで2人ともBランク冒険者だ。前も言った通りランクのひとつ上下のクエストを受けられるから、これからはAランクのクエストも受けられるようになるぞ。早速見ていかねえか」


「そうですね、わかりました」


俺たちはグランの後に続いてカウンターまで戻ってきた。Aランクのクエストはドラコンの討伐など強そうな魔物の名前がずらりと並んでいた。その中でひとつ変わったクエストを発見した。


「回復魔法Aの使い手募集か。依頼人は帝国になってますね」


俺はそのクエストについてグランに尋ねた。


「ああ、そいつは丁度今日入ってきたクエストだ。俺も詳しく話知らねえが、帝国の誰かが重い病気なんだそうだ。帝国の宮廷魔術師には回復魔法Aの使い手がいないみたいだから募集してるんだろう」


「カインは回復魔法もすごいんですのよ!訓練で重症になった騎士をあっという間に回復させたこともあったんですのよ」


「回復魔法は病気にも効くからな。グランさん、このクエストを受けてみようと思います」


「そうかい、それなら帝国に紹介状を書いてやろう。これで帝国城内に入れるはずだ。今日はもう遅いから、明日の朝一に行くと良い」


「わかりました、ありがとうございます」


グランに紹介状を貰った俺たちは宿屋に戻って休んだ。まだ俺は知らなかった。このクエストを受けることによって新たな女難が降りかかってくることを。

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