第4話 空間魔法
俺たちはグランに教えてもらった武器屋に来ていた。店内には剣や槍、斧など所狭しと並べられている。
「ちょっと、あんた」
俺は店内で剣を見ていたところ、店主らしき男に声をかけられた。店主は背が低くがっちりとした体形で、いわゆるドワーフと言う亜人だ。
「なんですか?」
「あんた相当腕が立つな。たたずまいだけで分かる。その割に腰に下げてるのは鉄の剣か。もっといい剣を装備しないのか?」
「見るだけで分かるなんてすごいですね。確かに俺は剣には自信があります。色々と事情があって今から冒険者デビューするところです。俺も彼女もCランクですけど。彼女はまだ武器を持っていないので適当な剣を買いに来たんですが、現時点ではあまり金を持っていなくて」
「金はどれだけある?」
「金貨5枚程度ですね」
「そうか、ミスリル製の剣を勧めたかったが金が足らないな。一人分なら足りるんだが」
「それなら彼女にミスリルの剣を売ってください。俺は魔法も使えるんで剣が物足りなくても大丈夫です」
「ほう、剣だけじゃなく魔法もか。でもあんたにこそミスリルの剣を装備してもらいたかったんだがな。ほらよ嬢ちゃん」
店主はミスリルの剣をエリーゼに渡した。
「結構軽いのですね。手にしっくりと馴染みますわ」
エリーゼは嬉しそうに剣を触っていた。
「そいつは金貨5枚だが、今回は4枚に値下げしてやろう」
「いいんですか、そんなに」
「本当は兄ちゃん、あんたに良い剣を装備してもらいたいんだよ。クエストをこなして稼いだら、またうちの店で買ってくれよ」
「ありがとうございます。また来ます」
エリーゼの武器を購入し、俺たちは武器屋を出て行った。
「いい買い物が出来ましたわね。さっそくクエストをこなしますわよ!」
冒険者ギルドではグランにお勧めされたクエストがあったので受けていた。Cランクのクエストで、内容はオーガの盗伐だ。1匹討伐するごとに銀貨10枚、その他死体を持ち帰れば素材として買い取ってくれるそうだ。
「オーガは帝国の正門を抜けて北にある森に多数出没しているようだ。日が暮れないうちに戻ってきたいから、早速行こうか」
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「はあっ!」
エリーゼの一閃でオーガを切り捨てる。俺たちはオーガの群れと対峙していた。その数10匹。エリーゼが前に出て、俺が後方で魔法で援護する形だ。エリーゼを後ろから攻撃しようとするオーガには俺が土魔法で足元の地面を崩し、体勢が崩れたところをエリーゼがとどめを刺すという流れであっという間に全滅させた。
「ちょろいもんですわね。ミスリルの剣は切れ味抜群でしたわ!」
初めての実践で興奮しているエリーゼ。それでも魔物を倒し切るだけの技量があるのだからさすがだ。彼女の姿を見れば普段は守られていた王女様だなんて誰も思わないだろう。
「もうすぐ日が暮れるし、今日はここまでにしておこう。あとはオーガの死体を持って帰るだけだな」
オーガの巨躯は1匹でも持ち帰るのは大変だ。なので普通の冒険者はその場で解体し、一番金になる皮や牙を持ち帰るらしい。
「カイン!あれを久々にみたいですわ。やってくださいまし!」
「ああ、わかってるよ」
あれとは何か?俺はオーガの死体に触る。するとオーガの死体は一瞬のうちに消えてしまった。それを10回繰り返して全てのオーガを消し去った。
「いつ見てもカインの空間魔法はすごいですわね。手品を見ているかのようですわ」
空間魔法を極めた俺は、ほとんどの物質を異空間に運ぶことができる能力がある。異空間に運ばれた物質は経年劣化しない。そのため、異空間にしまっておけば作り立ての料理がいつでも味わえたりする。ただし、生きている者は唯一しまえない。
「日が暮れる前に戻ろう、エリーゼ」
「はいですわ、カイン」
俺たちは帝国の正門まで戻ると、ギルドカードを見せて堂々と中に入る。そして冒険者ギルドに戻ってきた。
「よう、カイン。もうクエストを達成したのか?」
カウンターにいたグランが俺たちを出迎えてくれた。
「ええ、オーガを10匹倒してきました。死体も持ち帰りましたよ。」
「なに、10匹も!そのわりには死体がどこにもないようだが。」
「今から出します。隣の買取カウンターに出せばいいんですよね」
「そういやあんたは空間魔法Aだったな。異空間に物をしまえるんだったよな確か。空間魔法Aの使い手なんてそうそういないから忘れてたぜ。カウンターは狭いから、奥の解体場までついてきてくれ」
俺たちはグランの後に続いてギルド奥の解体場まで来た。
「さあ、出してくれ」
グランに促され、俺は10匹のオーガの死体を異空間から出した。
「こりゃすげえ。1日でこれだけ狩れるならBランク昇段試験受験資格もあっという間だな。ともかく今日中に解体しておくから、金は明日受け取りに来てくれよな」
俺たちはグランに見送られて冒険者ギルドを出た。すっかり日は暮れている。
「宿屋に戻ろうか、エリーゼ。部屋をもう一つ追加で借りないとな」
「別々だなんて遠慮はいらないですわ。二人部屋を借りたらいいんですわ」
「いや、さすがにそれは…」
「若い娘が一人でいたら悪い狼に襲われかねないですわ。安全のためにも同じ部屋に泊まるべきなのですわ」
「はあ、わかったよ」
「うふふ、大好きですわ、カイン!」
今まで泊まっていた宿屋は狭い個室しかなく風呂も無かったため、ワンランク上の宿屋に泊まることにした。風呂付きで2人部屋で1泊銀貨3枚と高めだが、今日稼いだ分だけでも相当な金額になるため、宿代はけちらないことにした。
「はあ、色々疲れたな…」
俺は風呂場で体を洗いながらため息をついた。さすがにずっとエリーゼと一緒にいるのは精神的な負担が大きい。
「カイン!背中を流してあげますわ!」
突然風呂場に全裸のエリーゼが現れた。スレンダーできれいな体だった。ばっちり見てしまった。
「エ、エリーゼ!さすがにこれはまずいだろ!」
「私たちの仲ですもの遠慮はいりませんわ。さあ背中を流して差し上げますわ」
俺は両手で前を隠していたため、抵抗できずに背中を洗われてしまった。
さあ、綺麗になりましたわよ。次は前の方も洗って差し上げますわ。
「こっちはもう洗ったから!もういいよ!」
俺は湯船に逃げ込んだ。
「そうですの。それじゃあ私も失礼して体を洗いますわね」
湯船に入った俺は、体を洗っているエリーゼに背を向ける。この状況をどう脱しよう?
「カイン、私の背中を洗ってほしいですわ」
「わかった…」
どうやらこの状況からは逃げられないようだ。諦めてエリーゼの背後に立つ。綺麗な背中とお尻を前に俺はなんとか平常心を保って洗い流した。俺たちは隣り合って湯船に入る。
「今こうしてカインと一緒にいられるのですから、冒険者も悪くありませんわね」
エリーゼは俺の肩にもたれかかる。
「カインはこれからどうしていきたいんですの?」
「とにかくクエストをこなしてAランクを目指す。それから金を溜めて家を買いたいな。ここを拠点とする以上、ずっと宿屋泊まりをするわけにもいかないし」
俺はエリーゼの肌の感触にドキドキしながら答えた。
「私たちの愛の巣を作るんですのね!頑張りますわ!」
俺たちは風呂を出て、自室に戻ってきた。エリーゼは綺麗で長い金髪を布で拭いている。
「もう寝ようか、おやすみエリーゼ」
俺はベッドに潜った。そして当然とばかりに俺のベッドに潜り込んでくるエリーゼ。
「いやいやいや、エリーゼはそっちのベッドで寝てくれ!」
「もう、カインは意気地なしですのね。大事にしてくれるのは嫌いじゃありませんけど」
エリーゼは諦めてもう一つのベッドに潜った。疲れていた俺は早々に眠りについたのであった。
「ああ、よく寝た」
翌朝俺は目を覚ますと、ベッドの中の異変に気付いた。何か柔らかいものがある。揉んでみると気持ちいい感触がした。毛布を剥ぎ取ってみると…。
「エリーゼ!」
エリーゼが半裸で俺の隣に寝ていた。
「うーん、もう朝ですの?」
「エリーゼ、なんで俺のベッドで寝てるんだよ…」
「カインと一緒に寝たかったからですわ。既成事実を作るのですわ」
「ああ、もう…。早く服を着てくれ」
エリーゼを着替えさせると俺たちは一階の食堂で朝食を取り、金を受け取るために冒険者ギルドへ向かった。




