第2話 冒険者ギルド
マルディール王国を追放されて三日目、俺は帝国に向かって歩き続けた。あと半日も歩けば帝国に着くだろう。しかしどうやって帝国内に入れば良いのだろうか。たしか帝国へ入るには身分証明カードが必要なはずだ。王国近衛騎士の身分証明カードは既に没収されているし、あったとしても王国兵士は入国を拒否されるだろう。どうしたもんかと悩みながら歩いていると、遠方から悲鳴が聞こえてきた。
「盗賊か?魔物か?」
俺は声の聞こえた方向へダッシュした。そこでは商人のものと思われる馬車を取り囲む盗賊たちと、それに応戦している護衛者たちが戦っていた。盗賊の数は約二十人、護衛者は四人、馬主と思われる中年の男が一人、そのうち護衛者の二人は既に怪我を負い倒れている。このままでは数に押されて皆殺しにされるのが明白だった。
「やめろ!盗賊どもめ!」
俺が叫びながら突撃すると、双方とも驚いた表情を見せている。俺は一番近くにいた盗賊を一瞬で切り捨てた。
「てめえ、何者だ!」
盗賊たちの多くが目標を護衛者から俺に変えて俺を取り囲む。戦っている護衛者の二人は盗賊四人を相手にしており動けない。
「やっちまえ!」
盗賊頭と思われる男が指示すると、盗賊たちが一斉に俺に襲いかかってきた。周りを囲まれているなら剣よりも魔法だ。
「風よ!」
俺を中心に竜巻の渦が発生し、俺に斬りかかろうとした盗賊たち全員が吹っ飛ばされた。その隙を見逃さず俺は剣で一人ずつ切り捨てていく。一対一に持ち込めば俺の敵ではない。十六名を切り捨てた。
「くそっ、なんだこいつは!」
盗賊頭が俺に斬りかかってくる。他の盗賊よりは強いようだが俺の剣の相手にはならなかった。両腿を切りつけて転倒させる。
「ぐああ!足が!」
「頭がやられた!逃げろ!」
護衛者と戦っていた盗賊四人が一斉に逃げ出す。俺は風の刃を盗賊たちのがら空きの背中に向けてぶつける。盗賊たちは全滅した。
「ロープはありませんか?こいつを縛りましょう」
「わかった!助かったよ」
俺の指示に従い護衛者は盗賊頭を縛り付ける。盗賊頭の足からの流血がひどいので、このままでは死んでしまうだろう。生け捕りを目的にしたため、俺は回復魔法で止血をした。倒れている護衛者二人にも回復魔法をかけてやると、怪我が癒えた二人は立ち上がった。
「誰だか知らないがありがとう。あんた強いんだな。魔法まで使えるなんて」
護衛者の一人が俺にお礼を言ってくる。すると馬車の中に隠れていた中年の男がゆっくりと出てきた。
「助けていただいてありがとうございます。危うく殺されるところでした。私はトライア帝国で商人をしているジャックと申します。」
ジャックは俺に頭を下げた。
「俺はカイン、たまたま通りかかっただけですが、助けられてよかったです。こいつはどうしましょうか。とどめをさしますか?」
俺は縛られて転がされている盗賊頭に剣を向けた。
「盗賊は倒すか捕まえて帝国に差し出せば賞金が出ます。私たちは帝国に戻るところなのでこのまま連れていきましょう。カインさんはどちらに行く予定ですか?」
「詳しくは話せないが、王国から帝国に行くところだったんだ。帝国に入るための身分証明カードを持っていない。良かったら俺も連れて行ってもらえないだろうか」
「ふむ、カインさんには何やら事情があるご様子。助けていただいたのだから余計な詮索はいたしません。私は商人ギルドの身分証明カードを持っています。その護衛としてなら一緒に入ることができますよ」
「それは都合が良い。帝国までよろしく頼む」
俺たちは盗賊頭を生け捕りにして帝国へ向かった。数刻ほど歩くと広大な城壁が見えてきた。初めて見るがあれが帝国なのだろう。門の前には行列ができている。あそこで身分照会をしているようだ。
「ではカインさん、行きましょうか」
ジャックの馬車の後に続き門の前の行列に並ぶ。しばらく待つと俺たちの順番が来た。
「身分証明カードを見せてくれ」
「はい、こちらが商人ギルドのカードです。それと来る途中で盗賊団を全滅させて盗賊頭を生け捕りにしました。引き渡したいのですが」
「盗賊か、預かろう。それと盗賊を全滅させた場所を教えてくれ。兵に確認に行かせる。生け捕りにしたこいつの顔は見覚えがあるな、たしか賞金首だったはずだ。冒険者ギルドに連絡しておくから、明日賞金を受け取りに行ってくれ。全員入っていいぞ」
俺はジャックの後ろに続いて帝国内に入ることができた。これで第一の目標は達成だ。今後は帝国内を拠点として生計を立てなければならない。
「カインさん、よろしければ明日私と一緒に冒険者ギルドに行きましょう。賞金はもちろん全てあなたに差し上げます。それとそこで冒険者ギルドカードを作るといいですよ。身分証明カードとして使えます」
「そうか、色々すまないな。助かるよ」
「とんでもない。あなたは命の恩人です。これくらいじゃお礼にもなりませんよ。今日の宿代は私が払いますから、ゆっくり休んでください。私は自分の店に戻ります。明日の朝迎えに来ます」
そういうとジャックは護衛四人を引き連れて去っていった。俺は三日間歩き通しで疲れていたので宿屋で早めに就寝した。
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翌朝、俺はジャックと一緒に冒険者ギルドに来た。大きな三階建てで、一階は酒場を兼ねているようだ。ジャックはカウンターの係員に頼んでギルドマスターを呼びに行ってもらった。
「よう、ジャックさん。昨日の盗賊の件だな。賞金を用意してるよ」
「グランさん、賞金はこちらのカインさんに全て渡してください。彼が一人で全滅させたのです。それと冒険者ギルドの身分証明カードを作りたいそうです。よろしくお願いします」
「はじめまして、カインです」
「ああ、はじめまして。俺はスクエア帝国の冒険者ギルドマスターをしているグランだ。盗賊団を一人で全滅させたってのはすげえな。期待の新人ってことだな歓迎するよ。まずは賞金を渡そう」
そう言うとグランはカウンターの上に金を置いた。
「まず賞金首の盗賊頭、奴が金貨三枚、残りの盗賊二十人を倒した分は銀貨二十枚だ。受け取ってくれ」
「捕まえた盗賊頭はどうなるんですか?」
「盗賊はだいたい犯罪奴隷に落とされるな。盗賊頭は罪が多いから処刑されるかもしれんが。妙な事聞くんだな」
「俺は事情があって王国から来たばかりで帝国のことはよく知らないんです。色々教えてください」
「そうかい、まあ深くは聞かねえよ。冒険者は脛に傷を持つ奴は少なくないしな。冒険者としてのルールさえ守ってくれればいいさ」
ジャックは冒険者ギルドのルールを説明してくれた。冒険者ギルドはランクがあり、一番下がF、一番上がAだそうだ。新人はFからスタートし、クエストを規定値まで達するとランクが上がる仕組みのようだ。クエストはランクの上下一つまでしか受け付けられないとのこと。ランクBとAに上がるためにはクエストの他に昇級試験があるらしい。冒険者ギルドに所属するものはギルド権限で強制クエストを受ける義務があるとのこと。あとは冒険者同士の私闘は厳禁など。
「カイン、まずはこの水晶に手のひらを置いてくれ。こいつであんたのステータスがわかる」
グランはカウンターの横に置いてある水晶を指さした。王国ではこんな水晶なかったはずだ初めて見るものだ。俺は指示通りに手のひらを水晶に置くと、ステータスが表示された。
【名前】カイン
【年齢】18
【クラス】剣A 火魔法A 水魔法A 土魔法A 風魔法A 空間魔法A 回復魔法A
【称号】女難
「すごい!カインさん強いとは思ってましたがここまでとは!」
「何じゃこりゃ!Aクラスばかりじゃねえか!Aが一つでもあればAランク冒険者としてやっていけるぞ!」
ジャックとグランはとても驚いている。俺はそれよりも女難の称号が気になるのだが、二人ともクラスの高さに目を奪われて気付いてないのだろうか。
「カイン、あんたはギルドマスターの権限でCランクからスタートだ。クエストはBからDまで受けられるぞ。あんたならすぐに達成できるだろう。規定値まで達成できたらBランクへの昇級試験があるからそのつもりでな」
グランはCと書かれたカードを俺に渡した。これを見ればステータスやクエストの達成ポイントなどがわかるらしい。
「ああ、わかりました。ジャックさん、防具屋を紹介してくれませんか。さすがに剣だけで防具が無いと辛いので」
「わかりました、それでは早速行きましょうか。グランさん、それではまた」
「ああ、ジャックさんまたな。カイン、防具を身に着けたらすぐにここへ戻ってきてくれよ。クエストは山のようにあるからな」
俺はグランに見送られながらジャックとともに冒険者ギルドを発った。クエストの前に装備を一新せねば。




