16巻最後←本当の方
部屋に戻った東条はイソギンチャクのソファに腰掛け、甲殻類のような脚の生えたスマホを弄る。
昨日の夜、女子更衣室に忍び込もうとしていたところを捕獲されたらしい。このエロスマホが。
「日本に帰ったら、当分休みにしようぜ? 疲れたわ」
クラゲのベッドに寝っ転がるノエルも、触手の生えたスマホを弄りながら頷く。
「ん。マサ最近頑張りすぎ。マサらしくない」
「だよな〜。皆のために頑張るぞい! とか俺らしくないよな〜。俺冷笑系だから」
「マサ冷笑系なんだ」
「そうだぜ? 俺は頑張ってる人見て笑うような人間だから」
「嫌い」
「冗〜談ですやん? 時代は熱笑系なんだよね? 友情努力勝利!」
「んふふ」
ノエルは寝返りを打ち、アトランティスでの思い出をスクロールする。
「マサ、結婚してから働きすぎ」
「んーそうかー?」
「国からの依頼そんなに断らなくなったし、危険に首突っ込むこと多くなった。自分から」
「そんなこたぁないだろ」
「ある。マサ今凄い強い」
「どうも」
「強いから、守れる範囲も広くなってる。ノエル達が旅を始めた時とは、比べ物にならないくらい」
「だな。……」
東条がスマホから顔を上げると、ノエルと目が合った。
「ノエルも分かる。大切な物が増えると、今まで興味なかった害悪にも目がいくようになる。マサは今、紗命と灰音を日本ごと守ろうとしてる。二人に触れられそうな脅威を、世界から消そうとしてる」
「ったく、何だよ改まって?」
「頑張りすぎ。二人はそんなに弱くないし、日本もそんなに弱くない。もっと気抜いていい。マサらしくない」
再び寝っ転がるノエルに、東条は「クっ、ハハハっ」と思わず吹き出してしまう。
「お前の悪い癖だぞ? 言わぬが花を見破って引っこ抜いてきやがる」
「ノエルの特ギぇっ」
ノエルの腹にダイブした東条は、もがく彼女を無視して天井を見つめる。
「確かにな〜、少し神経質になってたかもな」
「おぼぃ」
「紗命と灰音にも昨日怒られちまったし。最近怪我しすぎだしな。俺が疲れるくらいだから、ちゃんとストレス溜まってたんだろうな」
「んもぃ」
「流石ノエル。全部お見通しだったんだな」
「んっ。ノエルはすごっひゃ⁉︎ うひゃ⁉︎ んヒャハハハ! やめっ、ダメっ、ヒハッ⁉︎ んひゃフヒアハハハハハッ⁉︎」
身をよじるノエルを漆黒で固定し、東条はのしかかったまま細い脇腹をくすぐりまくる。
「ングにゃァッ‼︎」
「おっと」
漆黒を破裂させ振り抜かれた足を掴み、足裏をくすぐる。
「ヒャーーッ!」
「そういやギリシャにも行くつもりだったけど、もうめんどくせぇな。どうせステラも楽しくやってんだろ」
「わはっひゃ、わはったからっ!」
「てかペルルまだ起きねぇのかよ、もう昼だぞ? 夜遅くまでゲームしてっから」
東条は涙目で震えているノエルを見つめ、軽く笑う。
「……ふっ、やっぱ姉妹なのな」
「わヒャーーーー‼︎」
〜16巻・完〜




