表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
第四章〜Marine snow〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1042/1071



 その後、一旦ルルイエの王城へと戻った五人。



 杖をついて歩くラファの手を引きながら、シャルルは口を開けたまま城内を見回していた。

 蛸化したペルルと、オルカの体躯に合わせて造られた城は、他の深きものどもの利便性など一切考慮されていない。故に荘厳で、神聖なのである。


「凄いですよラファさん。ほら、柱の中に魚が泳いでいます」


「……皮肉ですか? シャルルさん」


「おっと、失礼。少しテンションが上がってしまいまして」


「……そんなことはどうでもいいのですが」


「どうでもいいですか」


「……私達は、今どこに向かっているのでしょうか?」


「それが、僕も分からないのですよ。東条さんとノエルさんは、女王様達とどこかへ行ってしまいましたし、唯一話せるガブリエーレさんは気づいたら消えていましたし、」


「……どうしましょう」


「ね。どうしましょうね」


 シャルルは一定の間隔を空けてついてくる軍人達をチラ見し、軽く会釈する。


「……後ろにいる方々は、シャルルさんのお友達ですか?」


「お友達だと思いますか?」


「……はい」


「あはは、ラファさんは嘘を吐くのが上手いですね」


「……えへへ」


「今のが皮肉ですよ」


「……」


「僕達はガブリエーレさんの連れということで、一応の自由を許されている形だと思います。ただ、ラファさんが数百万規模で彼らの同胞を殺してしまったせいで、僕達の肩身が狭くなっているのでしょう」


「……ちょっと待ってください」


「何ですか?」


「……私のせいですか?」


「違うんですか?」


「……そもそもシャルルさんがガブリエーレさんにちょっかいを出さなければ、こんな所に連れてこられることはなかった。と私は思います」


「おぉ、ラファさんにしては筋の通った反論ですね」


「……ふふん。負けを認めますか?」


「面倒なので甘んじて認めましょう」


「……初めてシャルルさんに口論で勝てました」


「おめでとうございます」


「……ありがとうございます。何をくれるのですか?」


「心からの称賛を」


「……ぽいっ」


「残念です」





 ガブリエルは海藻だらけになりながら、牧場で深海豚を追いかけ回していた。


「ブギャァ⁉︎」


「ギャハハッ! 捕まえたぁ!」


 地上で言うバッファローのような大きさと凶暴性を持つ、大地と海洋を足して二で割ったようなフォルムのモンスター寄りの家畜。家畜?


「っそれで、この睡眠薬をこう!」


「ブッ、グフゥ……」


 ガブリエルが昏倒した深海豚を地面に置くと、牧場主が感心しながら近づいてくる。


「◆■■〜。●◎◆□■?」


「ギャハっ、経験はないよ! 俺っち長い間サバイバルしてたから、動物の扱いは慣れてるんだよね〜! これあっちに運べば良い?」


「★」


 豚を軽々と背負って歩き出したガブリエルを見て、牧場主は驚く。


「……☆▽▼※■?」


「え⁉︎ マジで⁉︎ 働きたい働きたい! おっちゃん深海料理の監修とかもしてるんだよね⁉︎ 教えて教えて教えて‼︎」


「∀w ○★◎◆□■、▼∴※〒▲■■」


「あ、監修は奥さんの方なんだ! じゃあ後で挨拶しないと」


「▽▼△◆◎●?」


「うっ……そうなんだよね〜。俺っちたぶん、ペルルっちに嫌われてるからな〜。居住許してくれるか分からないのよね〜っわぁ! 何このお肉⁉︎ こっちのは⁉︎」


 豚を地面に下ろしたガブリエルは、氷でできた冷凍庫の中に釣られている肉群に飛びつく。どれも毒々しい色をしているにも関わらず、香りは地上の物に負けないほど芳醇。

 見たことのない食材を前に、ガブリエルの興奮も最高潮に達する。


「■▲、▽▼※▲△■?」


「ん? あぁ、俺っち食べた生物の能力吸収できるんだよね。ペルルっちいっぱい食べてたから、言語能力も貰えたっぽい。……あ、ダメだった⁉︎ 不敬的な⁉︎」


「≡▼、◇●◎◇◆◆? ▲▽▼※◎■」


「ふぃ〜、おっちゃんが寛容で良かったよ! ……うん、桐っちが帰ってくるまで暇だし、それまで色々教えてちょ!」






 水色と白で統一され、可愛らしい調度品で埋められた一室。そんな王城の尖塔に造られた子供部屋に、子供二人と保護者が二人。


「え、ママ俺らが日本出た時いたの⁉︎ あのクリスマス⁉︎」


「うふふっ、もちろんよ〜。船で新大陸に渡る時、霧がかかっていたでしょう?」


「え、あ! 確かに⁉︎ マジかよ声かけてよ〜」


 小さなテーブルを挟んで、東条の正面に座るママことベヒモス。


「うふふっ、あの日の東条ちゃんとノエルちゃんは、それはもうあつあつだったもの〜。声をかける隙なんてなかったわよ〜」


「ちょっとやめてくださいって、普通に恥ずいっす」


 東条が照れ隠しにお菓子を口に放り入れ、ベヒモスがクスクスと笑いながらその姿を愛おしそうに見つめる。


「聞いてたか〜ノエル? 俺らのイチャイチャ見られてたらしいぞ」


「ん。気まず」


「お前にもそういう感情あるんだな」


 東条とベヒモスは、温かい眼差しで子供二人を眺める。


「じゃ、じゃあ、食べるわよ?」


「ん」


 ノエルが持ってきたポテチに、ペルルが手を伸ばす。一枚掴み、恐る恐る齧った瞬間、ペルルの目がカッと開いた。


「にゅぁ⁉︎ 美味しっ⁉︎ な、何これノエル⁉︎ 何これノエル⁉︎」


「ポテチ」


「肉⁉︎」


「芋」


「芋⁉︎ 芋がこんなに美味しいの⁉︎」


 目を見開いてバリボリとポテチを頬張るペルルに、ノエルが「ふふん」と胸を張る。そこへ、窓からオルカが鼻先を入れる。


「因みにお嬢、ポテチは儂らの国にもあるぞ」


「はぁ⁉︎ 何で言わないのよ⁉︎ 不敬罪よ‼︎」


「えぇ……」


 不憫なオルカ。引っ込んでいく鼻先を見送り、東条は人間の食べ物に落ちかけているペルルを見てニヤつく。


「……な、何よ!」


「いや? 美味しそうに食べるな〜と思って」


 悔しそうに、しかし食べる手を止められないペルルに、東条は勝ち誇った笑みを浮かべる。


「くっ……、やっぱりあんた嫌い!」


「嫌いは好きの裏返しって言うしな」


「キッショ! 死ね!」


「おまっ⁉︎ やめろ汚ねぇ⁉︎」


 ポテチカスまみれの手を突き出し追いかけてくるペルルから逃げ、東条は窓から飛び降りる。

「ふんっ」と鼻を鳴らし、ペルルは指を舐めながらノエルの隣に腰を下ろした。


「ペルル、これも食べて」


「これは?」


「チョコ」


「チョコ? ……っ甘い匂いがするわ!」


「ん。スイーツ」


「美味しい‼︎ 甘い‼︎」


「これも食べて。これも」


「……うふふっ」


 姉妹達の微笑ましい光景を眺めながら、幸せそうな表情を浮かべるベヒモス。

 一歩引いた位置に座っていた彼女に、ノエルが手を差し出す。


「ベヒモスもいる?」


「ママもこれ食べてみて!」


「あらあら、良いの?」


「勿論!」


「仕方なく」


 ペルルに手を引かれ、ベヒモスは嬉しそうに彼女達の間に腰を下ろす。


「あらあら〜」


 星を守る調停者の、緩み切った表情。嬉しそうなノエルと、楽しそうなペルルの表情。


 ……彼女達が笑い合っている光景を、東条とオルカは窓の外から満足げに眺める。


「良いエンディングだな」


「……うむ」


「何だお前、泣いてんのか?」


「歳をとると涙腺が緩んで敵わん」


 足元のオルカを笑い、東条は彼の頭の上であぐらをかく。


「しかし東条よ、お主よくその怪我で立っておられるな」


「バッカお前、痩せ我慢に決まってんだろ。んじゃ俺ちょっと気絶するから、飯の時間になったら起こしてくれ」


「お、おぉ」


 半身を包帯でグルグル巻きにされた東条が白目を剥き、頭から落下する。


 彼をキャッチしたオルカは、「飯は食うのじゃな」と呆れ笑い、医療棟へと泳いでいくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ひゅー私は痩せ我慢好きです 近年はあまり受けない傾向ですけど
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ