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悠久なる創造主〈クリエイター〉  作者: 頴娃伺結有
狂った銃弾
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狂った銃弾Ⅲ


「そんなことはどうでもいい。反抗的なその態度が逆に惹かれるのだ」

一ノ瀬が鼻息荒く息をする。身を乗り出してアイギスに近づいていく。顔立ちは整っている方で、イケメンの部類に入るだろう。そんな男に見詰められるとそんな趣味が無くても紅くなるのはしょうがない。


「激写………です。……こんな関係…でしたか」

突然に女性の物と思われる声が背中側から聞こえる。それは両手でカメラを構えてシャッターを切っている猪瀬だった。

「遅いから見に来たのに三人プレイとは中々ね」


マリアがその後ろから出てきておどろく。いつの間に猪瀬加奈と仲良くなったのか。

「あ……こっち見ないで下さい。……自然な感じの……写真が撮りたいん……です」

唖然と猪瀬とマリアをながめみると「じゃぁ、遠慮なく」なんて一ノ瀬がアイギスに一歩一歩、歩み寄り始める。


「ほら、信夜君も参加して!」

マリアに言われてもこれには参加したくないだろう。第一、自分にはそんな趣味は無いし、やられたくも無ければしたくもない。普通そうだろう?。


「そう……そこで、一ノ瀬友喜君……アイギス・ファルゲインさんの服を……脱がせて、」

異常な要望にも応える一ノ瀬は、言われる前からそうしようと決めていたかのような手つきで制服のボタンに手を掛ける。


「本気なのか?本当にオレで良いのか?」

それをまんざらでもない感じに受け止めるアイギスは、役者なのか、こいつもそんな人種だったのか。


そして、一ノ瀬の隣にも何処にも葉隠が居ない事に気づいた。

「おぃ、アイギス。外見ろよ、沢山出て来たぞ。多分一年の部活参加者だと思う」

その中に葉隠晋太郎のような猫背の青年が混じっている。

制服も普通科のもので、考え無くてもそれが葉隠晋太郎であると判る。

「あ、あいつは僕に何も云わずに何処かに行く癖を治してほしいな」

一ノ瀬も気付いたように呟く。飽きたのか、それとも面倒になったのか一ノ瀬の手は停まっている。


半裸の状態のアイギスは停まった手を払いながら開けたワイシャツを直し、ボタンを留める。

「あ……終…った。」

猪瀬の残念そうな顔はなんだろうか、幼さが見て取れるようにのほほんとしていた。


「本題だ。アイギス・ファルゲイン、君の力が必要だ。力を貸してくれ」

一ノ瀬は率直にそう云った。少し考えたアイギスは

「どんな事をする、それによるが…」

首を傾げるように右手を顎に付けて考えるポーズをとる。

「そうだなぁ。僕のクラウドに参加してくれ」


クラウドとはアーネス王国が定める国内の戦闘チームの名称だ。三人から組めて全部で十人までが一クラウドとして認められている。アーネス国軍事機関グリゴリに登録することで戦争に参加できる権利を得ることが出来るという制度だ。

「オレには戦闘能力はない。誘うならこいつのような馬鹿が良いんじゃないか?」


霧雨を指差してアイギスは云うが、一ノ瀬は首を横に振る。

「今のこいつじゃ戦力外だ。むしろこいつの最強な装備よりかお前が来てくれる方が僕としては嬉しい」


「ちょっとまて。何故俺がこいつこいつ云われて、更に戦力外とか……酷いにもほどがある」

「そうだよ、今は力になれないかもだけど、強かったんだよ」

マリアのその過去形の発言に残りのライフポイントがゼロになる感覚を覚える。


「そこに座れ、一ノ瀬友喜」

そういって自分の席の隣の椅子を引き出す。

「そこの女と、霧雨シンヤも座れ」

突然に云われて混乱するが、やはり先程のような真剣味を帯びた顔になっていたので皆は言葉に従う。


「突然なんだ?しかも猪瀬さんは関係ないだろ」

一ノ瀬は座りながらぐちぐちとそんな言葉を並べている。しかし、アイギスはそれを無視してマリア達が席に座るのを待つ。

「私は信夜君のよこー♪」


マリアはのりのりだなぁ、と思うのは自分だけだ。

「先の話はオレは乗ろうと思う。だから、霧雨シンヤ、百木マリア貴様らも一ノ瀬友喜のクラウドに入れ」

「何でクラウドを造るの?戦争なんて行きたくないの」

マリアは机をばんばん叩きながら「いやだー、いやだー」なんて反論を唱えるが、誰も聞かない。

「目的は一つだ。戦場で《斬虐刀》を破壊する」


「んー。信夜君帰ろう。わざわざ敵を仲間に入れるなんておかしいから。どうせ昨日みたいにやるんでしょ一ノ瀬友喜」

「マリア、ちょっと待って。全部聴こう」

頷いた一ノ瀬はそのまま続けた。


「僕と葉隠晋太郎の親は、《斬虐刀の夜神》を狙っていた戦艦の爆撃で死んだ。だから、原因を作った君を殺そうとした」

四人は黙って聞いている。

「でも、昨日入院していた時に話し合ったんだ。君は人を守ろうとした。百木マリアを。人は転機があれば変われると知った。それが、自分達の妄想でもそう信じている」


「だから?何が言いたいの」

マリアは人の話はちゃんと聞かないタイプなので苛立っているようだ。

「自分が変わった。戦場で敵を殺す、それがしたい」


近頃ちょくちょく第四アメリ合衆国と千人程度のつばぜり合いがあっている。<半機械化人間>も一人でもいれば紛争レベルになるくらいで。でも、まだそんな事はきいていない。

しかし、二年以内の戦争は決定していると云っても良いくらいで、確率は九十九%。


「根本は変わってないのね。……私は遠慮したいけど、信夜君に合わせるの~」

マリアと一ノ瀬しか話していない。その他は考えているのか。

考えると云っても、何も事情を知らない猪瀬だけだと思うが。

「俺は良い。やってやるよ」

「では、僕と葉隠、アイギス・ファルゲインと百木マリア、霧雨シンヤは決定だ。そして今日にでも提出してこよう。これでクラウドが完成した」


「待って……下さい、私……も入ります。」

猪瀬の判断はそうだった。これで六人、今日発足と云っても多い方だろう。

まぁ、基本十人揃って申請するそうだが。


「すると、オレが霧雨シンヤに問い掛けた物も話そうか」

「契約がなんたらのやつか」

――何かそんなのがあったなぁ。

「詳しく行こう。まず、オレは第四アメリ合衆国出身だ」

「亡命者か?第四アメリからは交通規制がかかっていて余程の人間しか移動出来ないはずだぞ」

一ノ瀬が慌てるが、それもそうだと思う。父が学者と云うだけだ。それがどんな効果があるのか知らないが、代償は払っているのか。


「そこはどうでもいい。第四アメリ合衆国はこちら程治安が良くない。紛争やデモが毎日といっていいほどに続いている。そのなかでオレは需要都市ローシエの科学班にいた。そこでの活躍ははしょらせて貰うが、爆撃された。<半機械化人間>の【黒鷲】(カラス)に」

「【黒鷲】。第四アメリの最終兵器か。【終焉】(インフィニティ)の次期作と聞いたが、いつだ?それは」


「一ヶ月前。オレは科学班の仲間に守られた。家族のような存在だった」

「それで、家族…か」

静まり返った教室がもっと淋しく感じる。

『復讐』『殺し』そんなモノでこのクラウドが動く。それは何か嫌だった。

「オレはこの世界を元に戻す。百年以上前の隠し事だらけの偽りの平和な世界に」


歴史書では目立った悪の居ない表面的に平和だった時代の事だ。少なくとも表だった第四アメリ合衆国は今より安全で世界平和を唄っていた。

詳しくは知らないが第三の勢力が現れてなんたら、だそうで。

明日からの授業ではっきりさせようか。


「……そう……ですか。いろいろあるんですね」

「あるだけ、だがな」

一ノ瀬は猪瀬に返答したのか、唯の独り言かそう呟いた。



◆四月九日十七時三十分


「奇遇だな。同じクラウドの四人が同じ部屋になるなんてな」

一ノ瀬の言葉に返答するのは猪瀬だ。

「男……女混合なんて………聞いてませんっ!!」

「良いのよ、別に。私は変わって欲しい位だけど」

マリアは隣の部屋である。部屋番号でいえば四人と称した一ノ瀬、猪瀬、霧雨、アイギスの部屋の223号。

マリアとその他女子二人と葉隠が隣の224号室である。


「僕が変わろうか?マリア君、条件があるが…どうだ?」

ニヤリと不気味な笑みを見せて笑った。そんな顔が似合うのが一ノ瀬と云う男の本性なようで。

「別にいい。信夜君は離れてても私のモノだから」


「君等のモノと物の使い分けはなんだい?言い方の雰囲気が全く違う」

そんな問いに霧雨は

「使い分けなんて無い。唯、モノは利用出来る道具、人間の事だ。物はただのゴミや利用価値の無い人間の総称か。そんな感じ」

答えに頷いて、本題に入ろうと一ノ瀬は話し始める。


「クラウドを組むことに当たり、霧雨は戦力外になることは目に見えたことだ。そこで、アイギスに魔法具を霧雨用に作ってもらう」

そういえば先程からアイギスはPCに向かい何かしているな、と思っていた。それが、自分の為だったのか。


「付加型の魔法を使わせる。筋肉はつけて貰うからな。刀一本も持てなかったそうじゃぁな」

「重いんだよ」

すると、どうやって腰に吊したのか、と云う話しだが今は置いておこうか。

「おい、アイギス・ファルゲイン。いつまでかかる。早くしないと授業が本格化すると何も出来無くなるぞ」

どんな長い時間がかかると思っているんだよ。プログラムを一から組もうとするのはそんなに時間が掛かることなのか?


それはともかく、一ノ瀬が問うとぶつぶつと聞こえてきた。

「物質、レアメタル、干渉、衝撃破。ゼロ→ダメ。ニ→ダメ。魔法反応速度→六十。完成までおよそ二日」


「そうか。判った」

ふうっと息を吐き出し、一ノ瀬は自分用に設置されたベッドに倒れ込む。立っていたから、ばふっと埃が舞うが気にしない。

そして上半身だけを起こしてマリアを指差した。


「君はなんなんだい?」

そういえば、マリアの情報も無かったな。ずっと過去の事なんて話したことも無いし、そんな事はどうでもいいことだ。

それを不思議に思うのは、感のいい奴か人間不信の奴か、そんな人など。


「私?自分でも判らない。思い出したくも無いから、終わっていい?」

シンヤだから判る。マリアは何か隠している。今まではそんなことは無かったのに。笑っているが、それは本心からではない。内心は全くそんな感情は無い。ハズだ。


「……少なくともこれからはクラウドの………仲間なんですから、隠し事はしないで下さい……、ね」

猪瀬が微笑んだ。しかし、そんなことを言いながら自分の事は何一つ話していない。

今日会ったばかりなのにこのくらい話せれば良い方だと思う。無理にでも話す事も無いが、会ったばかりの人間に自分の事なんて話す方が怪しいな。それが無いから、まぁ、普通の人である。

嫌いから始まった友達は絆が固いなんて聞いたことがあるから。特に、アイギスと一ノ瀬とは友情を育めそうにいる。


「・・・隠し事、ね。そうなの?信夜君?」

突然に感情の篭っていないような言葉で問われる。

「契約主を疑うなんてしない。どんな嘘や虚言を吐かれてもそれを信じて全うする」


「だよね」

残念そうに、しかし安心するように云った。

「……いつか話して貰おうか」

一ノ瀬はゆっくりとそう云う。時計に目を向ける。

「六時に食堂集合じゃなかったか?」


シンヤは思い出したように呟いた。今の時計の針は五十ニ分をさしていた。

皆(アイギス含む)は血相を変えて223の部屋を飛び出した。


テストがあっておりおくれました。

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