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小型と中型

 ある程度上手に餡を包めるようになったところで、雑談を兼ねた情報収集はおしまい。

時間的にも、お昼を求めてやってくるお客さんが増え始めたから、これ以上は迷惑になる。


 お昼のピークタイムが終わってから南ルートに詳しそうなお仲間さんのところに連れて行ってくれるというので、わたしは一旦、包み焼き屋さんの屋台から離れることにした。

 もちろん、お昼ごはん用におじさんの包み焼きをたくさん買った。にぃに(・・・)たちがたくさん食べるのは分かりきってるからね。葉っぱのお舟を一〇個分買っても、問題ないはず。

というか、どう考えても足りないので他にもいくつか買い足した。

夏が近いとはいえ、高原を渡る風が冷たいのでやたらと美味しい匂いのするあったかいスープとか、こんがり焼けたお魚さんとか――


 なにはともあれ、朝ごはんを食べたのと同じ場所に戻って、スープを啜り(すすり)つつにぃに(・・・)とロイさんのふたりを待つ。

いつもだったら全員揃うまで待ってから食べるんだけど、一応、公共の場だからね。食事もせずに屋台のテーブルを確保してると怒られちゃうので、わたしだけお先に食べ始めることにしたのです。

決して、スープから漂ってくる匂いに負けたわけじゃない。負けたわけじゃないんですよ。


 ――あ、ヤバイ。

買ってきたスープがもう無くなりそう!


 マズったなと思いつつスープの入ったツボを確認したタイミングでにぃに(・・・)の悲鳴じみた叫び声があたりに響く。


「あー! フェリシア、もう食べてるっ!?」


 一瞬、『ヤなタイミングで見つかったな』と思ったところで、ハッと気が付きお椀の中に残っていたスープを飲み干した。


「フェリシア、先に食べてるなんてひどいよ」


 文句を言いつつ、わたしの隣に腰掛けてきたにぃに(・・・)は涙目でわたしの顔を覗き込む。

最初の頃のとっつきにくさはなんだったんだと聞きたくなるくらいのベッタリさんだけれども、最近のにぃに(・・・)はコレが平常運転です。


「ヨダレの海で溺れそうになっとったのと、席を確保しやすいからじゃな」

「たしかに、食事もせずにここで待つのは肩身が狭いよなぁ」


 屋台エリアで食事をする人用のテーブルセットだもんね。

もうお昼で混み合う時間だから、食事もせずにデーンと座ってる人がいたら追い出されちゃいそう。


「それはそうかもしれないけど……なんか、すごくいい匂いがするんだけど」


 むくれるにぃに(・・・)からそっと視線を逸らす。


 そのいい匂いの元は、たった今、売り切れました。

多めに買ってきたつもりなんだけど、ついついおかわりしまくっていたせいで完売です。

自分で言うのもなんだけど、あの量のスープがどこに消えたのかが謎すぎる。すでに食べ過ぎなので、もう、他のご飯は入りません。うぇっぷ。


「店主が『にゃんこ殺し』だと言うてたが、まさかコレほどとは思わなんだ……。ロイと一緒に追加を買うてくるから、グラ坊はフェリシア嬢お手製の包み焼きでも食べながら待っておれ」

「ん。ピニャーシュ、お願い」


 買い出しに向かうピニャーシュさんたちの姿は、あっという間に人混みに紛れて見えなくなった。ふたりの姿が見えなくなるとすぐに、にぃに(・・・)は期待に満ちた目を向けてくる。


「フェリシア。昨日のアレ、作ったの?」

「うにゃ。でも、昨日のとは違う屋台だったみたい。中の肉餡がちょっと違うの」

「ん、こっちの店のも美味しい」


 大小に種類の包み焼きが入ったお舟を渡してやると、にぃに(・・・)は迷わず小さい方から食べ始めた。


「それに、フェリシアが包んだ方は小さくて可愛いね」

「店主さんが作ったのの半分以下のサイズだもんねぇ。手のサイズが違うんですよ、手のサイズが」


 なんせ包み焼き屋のおじさんの手は、わたしの倍以上はあるのだ。

同じように包んでも、サイズが小さくなるのは当然だよね。

 自分の手を見つめつつ口をとがらせていると、お耳の根本をコショコショされた。

くすぐったくて、お耳がパタタと動いてしまうからやめてほしい。


「コレはコレで食べやすくていいじゃない」

「でも、大きい方が『食べた~!』って感じがするんじゃない?」

「ん。大きい方はたしかに満足感が強いかも」

「ほら、やっぱり」

「一口サイズのは、大きいのとちょっと違う美味しさになってるからアリだと思うんだけどなぁ~」


 残念なことにわたし、どっちも一口じゃ食べれないからにぃに(・・・)の言う差は分からない。


 大人になったら分かるようになるのかな? と、自分の手を見て首を傾げる。


「……一回りくらいはおっきくなる、かな?」

「何が?」

「手とか――全体的に?」

「フェリシアはオカンと一緒で小型種っぽいからねぇ……。身長は頭ふたつ分伸びればいい方じゃないかな」


 小型種は身長が一〇〇センテから一四〇センテ台。

鼠人(そじん)の多くがこの分類で、猫人や犬人の一部もコレに該当する。オカンは猫人の小型種の中では平均的な一三〇センテ台だった。なので、オカンを基準に考えるなら、わたしもそのくらいの身長が上限ってことになる。


「軽く絶望」


 にぃに(・・・)はオトンに似たのか中型種で、すでに一六〇センテ台後半らしい。

同じ血筋なのに、この差はひどいと思います。


「むしろ、フェリシアがロイみたいに大きくなっても困るよ」

「個人的にはにぃに(・・・)の肩くらいまでは成長したい」

「フェリシアは小さい方が可愛いと思うけどなぁ……」

「お料理するのも不便なんですよ。ちっこいと」


 【お庭】の台所はわたし仕様になってるからいいものの、大概の場所は一五〇~17〇センテ台の中型種仕様になっている。小型種だと、何をするにも台が必要になってしまうのです。

これって、結構不便なんですよ。

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