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にぃにがとつぜん土下座した

 にぃに(・・・)とそこそこおしゃべりできるようになったかな? と思ってから、早いもので三日が経った。

昼間はピニャーシュさんとともにフォレチェルの背中に揺られてわりと急ぎで進んだおかげもあって、気が早い雪に降られる前に隣領の境を超えたのが昨日の話。

普通に人族領域のお隣さんに向かった場合、検問に引っかかる危険があったっぽいので大きく迂回したからね。一日余分に時間がかかったのだ。


 実は、わたしが持ち出してきた銀麦の在庫がヤバいことになってしまったので、ピニャーシュさんひとりで途中で見つけた農村に行ってもらったんだよ。

ロイさんがとにかくよく食べるからね。仕方がないっちゃ―仕方ない。

そのおかげで、検問の情報をゲットできたんだから怪我の功名というやつなんじゃないかな?

なにはともあれ、大きく検問所のある場所を避けて魔獣領域に入ったおかげでわたしの街デビューがまた遠くなった。


 それはそれとして。


「もう魔獣領域に入ったんだから、僕も外に出て良いんじゃない?」


 と、にぃに(・・・)が言い出すのは、まあ予想どおりだよね。

んでもって、過保護なピニャーシュさんとロイさんがいい顔しないのもまた然り。


にぃに(・・・)、あと一日だけ我慢しよ?」


 あと一日移動に専念すれば、元の領地から結構な距離を離れられる。

その分、魔獣領域に逃げ込む可能性を考えて潜伏してるかもしれない人と出くわす危険が低くなるはずなのだ。安全マージンは多めにほしい所存です。


「ええ~? フェリシアの【お庭】でランニングするの、もう飽きたよ」


 打ち解けてきたことによって、色々と隠さなくなってきたにぃに(・・・)が泣きそうなショボン顔で不満ごとを垂れ流す。夕方にチョビっと採取作業と称して外の空気を吸っているとは言え、結構ストレスが溜まっているっぽい。仕方がないなと思いつつ、右から左に聞き流す。

事前に話し合ってたとおり、こちらの希望は伝えたからね。あとはピニャーシュさんが良さげな落とし所を見つけてくれるはず。


――それにしても、あのとっつきづらさはどこにいったんだろうね?


 三日前まであんなにしゃべらなかったのに。

ふたりで採取作業をしながら話したあと、突然にぃに(・・・)はおしゃべりさんに変身してしまった。

きっとアレだ。

にぃに(・・・)は、小さいさんがかかる病【人見知り】に罹患してたんだ。だって、表情だってコロコロ変わるようになったし。

タブンそう。

というか、そういうことにしておきたい。

だって、なんか深堀りすると面倒くさそうなんだもの。



 結局、明日の午前はわたしとピニャーシュさんのふたりで移動に専念。

その上で問題がなさそうだったら、にぃに(・・・)とロイさんも【お庭】を出て徒歩で移動するという方向で話が決まりかけている。


「ねぇねぇ。そしたら午後は、わたしお留守番していたい」

「え、なんで?」

「というか、むしろピニャーシュさんもお留守番させてもらっていいと思う」


 だってね、ここ四日間ほど【お庭】にこもりっきりなにぃに(・・・)たちと違って、わたしとピニャーシュさんはほとんどお外で移動してばかり。フォレチェルに乗ってるだけとはいってもかなーり疲れるんだよ。

わたしのことを背負って騎乗しているピニャーシュさんは、きっとわたしよりもずっと疲れているはずだ。


「午後は俺と一緒に狩りをするってのもいいんじゃないか。坊っちゃん」

「たしかに。ピニャーシュは?」

「では、午後はのんびりさせてもらうとしようぞ」


 というわけで、午前はわたしとピニャーシュさんが移動距離を稼ぎ、午後からにぃに(・・・)とロイさんが食料調達に励む(狩りに出る)方向で予定が決まった。


 国境を超えたとはいえ、今、移動しているのは国境にほど近い魔獣領域。

まだまだ安全とは言い難い場所なのだ。

あと一日二日でいいからガマンしてもらえれば気兼ねなく外に出てもらえたはずなんだけど……


――まあ、仕方ないか。


 食料の在庫は、冬を超すにはまだまだ足りない。

ここでタンパク源をたくさん調達してきてもらえるなら、それはそれで良いことだ。それに、たくさん狩ったら後始末が必要なのは当然のこと。

ぜひともたくさん獲物を狩って明後日は解体作業を頑張ってもらえば、その間に距離を稼ぐこともできるはず。


――うん、問題ないねっ。


 むしろ、明日の午後は思いっきり羽根を伸ばしてもらおう。

お外で鬱憤を晴らせて、にぃに(・・・)も嬉しい。

食料が増えて、わたしも嬉しい。

WIN-WINってヤツだ。


「でも、フェリシアはヒマじゃない?」

「わたし? やることならたくさんあるよ」


 【お庭】にある木のおうちは、お掃除いらずの優れモノ。

だからお掃除は必要ない。

だけど、下処理もしないままの野草がすでに山になっているのだ。

移動速度を優先していたし、朝昼晩の食事を用意できるのはわたしだけだからね。翌日の朝ご飯の下ごしらえを終えたら、もうくったくた。寝床に潜り込むので精一杯なんだもの。

お洗濯物も溜まっているけど洗えていない。


「せっかく増えた従魔も、ほとんどほったらかしだからね。この機会に、たっぷり愛情注ぎますっ」


 やりたいことを指折り数えてニヨニヨしてたら、「あ、はい。ワガママ言って、ごめんなさい……」と、なぜか突然にぃに(・・・)に謝られた。


「うにゃ?」

「ピニャーシュとフェリシアが問題ないと判断できるところまで、外に出たいなんてワガママはもう言わない。あと、急かしたりもしないしお手伝いもする。だからムリしないで、フェリシア」

「にゃにゃにゃ??」


 明日の午後はたまった用事を片付けようと思ってたのに、なんか、にぃに(・・・)を狩りに行かせる作戦が頓挫した模様。


――おかしいな? 何が悪かったんだろう??

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