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第10話 懐古

「ミライ…水、水を私にかけてくれぇぇ…」

「良いんですか?びしょ濡れになっちゃいますよ。」

「大丈夫!どーんとかけちゃって!!」

「では、"(しずく)"…」

…ザッパーン!

「ひやぁぁぁっ!さ、流石の勢いじゃっ…」


「あのー、大丈夫?」

「あっ、どうも。ワタシはミライで、こっちの子供は…」

「子供じゃない!フォルテじゃっ!」

「…です。」

「はじめまして、僕はルース。ここのバイトをしに来たんだ。」

ルース。青髪に緑色の眼か。顔だけ見ると若い青年のようだが、体は意外としっかりしておるな。

…正直、この人一人だけでもやって行けそうじゃな。


「ルースさん、ワタシ達と一緒にバイトしませんか?」

「ああ!一緒にやろう。」

─────────────────────

「ご苦労さん!ルースと言ったか?新人にしては流石の働きだな!」

ひ、一人だけで全部やってしまったーこの人。


「ルースさん、今日はありがとうございました。」

「大したことないよ。いい感じに体動かせたし。」

「これで動かなくてすむのじゃ…」

「フォルテさん?」

「えっ、いいいやなんでもないぞ?!」

「なぁ二人とも、今日の夜一緒にご飯行かない?」

「おお、いいですね!行きましょう!」

─────────────────────

「ノヴォリス帝国と言えば、名物の"レグラヴマー"が美味しいですよね。」

「そうそう!あれホントに上手くてさ、週一で食べてるんだよ。」

レグ…なんとかはこの国の名物なのか。

ベリアル王国の名物も気になるのう。


~【ノヴォリス帝国の食堂】~


「かなり人がいますね。」

「ここはかなり広いからね。あとここの二階は銭湯があるんだ。」

「戦闘ってなんじゃ?戦うのか?」

「でっかい風呂場の事だよ。」

「ほほう。そうだったのか。」


名物の…なんだっけ?

「こちら当店自慢の"レグラヴマー"です〜」

そうそう。見た感じは二枚のパンにスライスされた肉、それと黄色のドロっとしたよく分からないものが挟み込まれておるな。


…はむっ。


「…なんっじゃコレはっ!!すごく美味しい!」

「そうだろうそうだろう!フォルテにもコレの凄さが分かってもらえたか?」

肉が凄く柔らかくて、味付けもキツすぎなくて良いのう。

「うぉっ?!なんじゃ伸びるぞコレ!」

「フォルテさん、それは"チーズ"と言うものです。火で炙ったりするとよく伸びるんですよね〜」

「…ほわぁ〜。」

「フォルテさんの顔まで伸びちゃいましたね。」

─────────────────────

「私もうお腹いっぱいじゃ〜。」

「…」

「フォルテ、どうしたのじゃ。調子悪いの?」

「いえ、ちょっと昔を思い出しましてね。」

「食堂でのフォルテさんを見ていたら、小さい頃のワタシが浮かんできたんです。」

「ほう。フォルテよ、宿屋に行ったら聞かせてくれないかの?」

「ええ、もちろん!」


「…あの〜、僕のこと忘れてない?」

「わっ!ルースさん、忘れてないですよっ!そういえば、ルースさんはこれからどうするんですか?」

「とりあえず今日のところは一旦家に帰るよ。二人とも、また明日のバイトで会おう!」

「うむ!また明日のバイト…って明日もやるの〜?!」


~【ノヴォリス帝国の宿屋】~


ドサッ!

「ふかふかじゃ〜!」

「ここのベット、体が飲み込まれるくらいに柔らかいですね〜。そう、これは"ネコナマズ"の背中と同じ感触ですな…」

「"ネコナマズ"…ナマズ?!そ、そんな生物がおるのか。」


「…さてさて、ワタシの昔話をしましょうか。」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ワタシには、旅人の父と商人の母がいました。

ワタシの出身は、地図でいうと南東の小さな国なのです。

幼い頃はよく父から、他の国での体験談を語ってくれましたし、母からは珍しい品物を見せてくれました。


何年か経ち、ワタシは故郷の国を早々に出ました。魔法を学ぶために学校に行くためでした。

たまに故郷へ帰って、両親と沢山お話をしてました。

魔法学校には色んな出身の生徒たちがいました。そこで4年間基礎から学んでいくんです。

魔法の上達は順調でした。しかしながら、両親には言えなかった悩みがありました。

ワタシの体に刻まれた"刻印"についてです。

学校の教授によると、ワタシの刻印は「穢らわしい血の象徴」だったそうです。

その事は他人には口外しないと言っていたはずの教授が、いつの間にか多くの生徒に話していました。ワタシと仲が良かった友達も、その話を聞いたようで、ワタシに「穢らわしい。」と言ったきりもう顔を見せませんでした。


ワタシは故郷に帰っても、両親と話をしなくなりました。裏切られた気持ち、穢らわしいと避けられた悲しさは、ワタシをどん底に貶めました。

そんなワタシを心配して、父親はこう言ってくれました。

「ミライ、お前がどんなに悩んで、落ち込んで、悲しくても、それを抑え込むんじゃなくて、吐き出してみてくれないか?父さんは、お前の純粋な笑顔が大好きなんだから。」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ポロポロッ…


「お父さん…お母さんっ…ワタシもっとお話したかった…」


「ミライよ、私では両親の代わりにはなれないが、話はいくらでも聞くのじゃ!そして、ミライはミライじゃ。本当のミライは優しくて頼もしいのじゃ。

私はそんなミライが大好きだよ。」

「…うっ、フォルテ、さん…!ぐすっ…うわぁぁぁぁああああん!!!」

抱きつかれるのはリリーのとき以来かのう。

よしよし。

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