表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/10

第1話 降臨

遥か昔、一人の女神が"世界"を作った。

それは誰もが知っているであろう"剣と魔法の世界"なのだ。

一つの大陸を基礎とし、六つの国がそれぞれ特有の文化を持ち共存していた。

中には、価値観の違いから争いが生まれたり、国の中で独立運動が起きたり、まあ色々あった。

─そんな世界を、女神はたった一人で見守っていたのだった。

「"私はフォルトナ!この世界を作りし女神じゃ!"…うーむ、何か違うな。

"我が名はフォルトナ。この世界を創造せし女神である!"…やっぱり最初のがいいな。」

彼女は女神フォルトナ。天界にたった一人で住んでいる。天界と言っても、深い闇のように暗く、恐ろしいほど静かなのだ。

ちなみに彼女は数千年を生きているが、その姿は美しさが保たれている。これは"長寿の証"によるものらしい。

「せめて話し相手くらい欲しかったのう…

そんな事より、私はこんな退屈な日々を一生過ごすというのかっ…!」

彼女は世界を作ってから数千年間、このおぞましい天界で地上の様子を見守り続けていた。

ただ見守るだけで、地上とは何かしらの干渉がほとんどなかった。

「ここに居てもただ眠るだけ。気がついたら"眠りの女神"になっておるかもしれんな。ううむ…」


─この時、彼女は思った。いっそ自分が作った世界に行ってしまえばいい、と。

「いや待てよ…私が作った世界なんだし、見守るか否かも自由だよね!

よし、降りよう。」

フォルトナは決断するとすぐ行動に移すタイプであった。

「地上はどんな景色が広がっているかのう?

とにかく楽しみじゃな!」


─地上に降りた矢先、問題が多発した。

「…うむ、ここはどこじゃ?」

フォルトナは地理を一つも覚えていなかった。

むしろ「はじめて」だった。

「なんだか視点が低いようじゃが…って、

私の"長寿の証"どこー!?」

そう、"長寿の証"は俗に言う「エルフ耳」だった。

フォルトナは、どういう訳か重力のせいで幼女のような姿になり、おまけにエルフ耳が無くなり、ごく普通の幼い人間のようになってしまったのだ。


「そこの嬢ちゃん、こんなとこで何してんだ?」

行商人の男が話しかけてきた。

「む、私を誰だと思っているのじゃ?

私はフォルトナ!この世界を作った女神様じゃ!」

「…あの女神フォルトナ様なのか?まさかね。

この辺はごろつきが多いから、連れてかれないように気をつけなよー。」

「(…あれー?私女神なんですけどー。幼女のように扱われてるんですけどぉー!)」


フォルトナが転移してきた場所は国境近くの野営地だった。

そこで、近くの町や国についてを聞いて回った。

「ここはベリアル王国近くの騎士団が管理している野営地、か。最近ごろつきが増えてきたらしくて、何だか忙しいようじゃな。

天界に居た時とは全く違うなあ。」

「それにさっきの商人の男は、私が女神であることを理解しておらんかったな…

仕方ないが、人間としてやっていこうかの。」


騎士団の人間らしき人が来た。

「そこの嬢ちゃん、ちょっといいか?」

「おっと、私の事は"フォルテ"と呼ぶのじゃ!

(あらかじめ偽名を考えておいて良かったのじゃ。)」

「では、フォルテ、こんなところになぜいる?家はどこだ?家族はいるのか?」

「えっと、それはー…

(まずいっ…めんどくさくなってきたのう。)」

「…ともかく、一旦俺についてきてくれ。安全なところに送ってやる。」


フォルトナは、ベリアル王国の宿屋に連れていってもらった。

「ほほう!中々に豪華な宿屋じゃのう。」

「ここはベリアル国王お墨付きだそうだ。

俺も度々ここに泊まりに来ている。」

その後フォルトナは、その男と食堂に行き色々話をしてもらった。

男は騎士団の副団長をしているそうだ。最近は国境の警備に忙しく、実家に帰る機会が少ないらしい。

「そういえば、フォルテはこの後どうするんだ?あと、これをやる。」

「ん?"500レル"?これは食べ物かの?」

「違う!それはお金だ。それぐらいあればある程度の装備品は買えるぞ。」

─この大陸での共通通貨は「レル」。

1レルは日本円で150円分である。


フォルトナは食料や装備品、アクセサリー等を買って回った。

「ありがとうなのじゃ!」

「くれぐれもごろつき共には捕まるなよ。」


「初めての買い物とは中々に面白いものじゃな!あの騎士団副長は優しかったし、降りてきてよかったー!

孤独のままあんな空間に居続けたらトチ狂ってしまうわ!」


フォルトナは今夜、初めてのふかふかベッドで熟睡した。

それはもう、すごく熟睡した。

「─もう13時じゃと…?

なんてことじゃぁ!貴重な半日を無駄にしてしまったーっ!」


遅めの朝食を食べたら、ベリアル王国内の図書館に立ち寄った。

「ま・ほ・う!それはこの世界でいっちばん大切な存在じゃな!

人間が作りあげてきた魔法はどのように進化しているかの?」


─この世界での魔法は様々である。

水や火といった属性魔法で生活を支えたり、

特殊魔法でバフやデバフを付与したり、

他にも多種多様な魔法が形作られている。


「私がここに降りてきたのは"転移魔法"によるものじゃな。いつでも天界に帰ることはできるが、戻ることはないのじゃ!」

色々見て回っている中、フォルトナが目に止まった本があった。

「"時間操作魔法"?」

「ん?その本が気になるの?小さいのにセンスあるね。

私はエリー。ベリアル王国直属の魔道士だよ。」

「(なんじゃこの者はっ、また小さい呼ばわりか!しかも魅力的な雰囲気に溢れておる…!妙に悔しいわ!)

そうじゃ。時間を操るのは面白そうじゃからな!」

「…良かった。」

「うむ?何がじゃ?」

「いや、なんでも無いよ。その魔法が使えるように頑張ってね。

(あの子は純粋だった。悪に染まらないといいのだけれど…)」


─こうして、世界を作った女神は、自分の退屈な使命を放り出して、幼女として地上に降りてきたのだった。

それは同時に、彼女の自由な旅の始まりでもあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ